第二話 作戦会議
「じゃあツェーンナットの町へ行くために、フィールドボスを倒す作戦を立てようか」
「ついに最後ですね」
「というか、必要かこれ?」
「うん、必要必要」
昨日、倒していないフィールドボスがまだ残っていた事を思い出し、提案した所こうなった。今までは何となくで倒せていたが、それをショウは却下したので今に至る。
メンバーは、俺とコトネさん、ショウ、後はモモとクローナだ。2人はまあサポートなんだろうけど、バフはかけてくれるし、3人で行くよりは余程楽になる。ショウもクリアはしているみたいだが、まあ盾役ぐらいならいても大丈夫な筈だ。これでパーティのバランスは問題無いだろう。アポロさんに助っ人を頼むのは、流石に狡い感じがする。意見は聞けるだけ良い方だ。
そういえばクルト達はもうツェーンナットに行った事があるらしいな。生産職はもう制限が無いからなー……まあそれはしょうがない。クリアさえすれば、俺も行ける様になるんだし。
「そんなに強敵なんでしょうか?」
「うん、例えコウがエクストラスキルを持ってても真面目にやらないと駄目な感じだよ」
「そんなにか……」
ショウにそこまで言わせるとは。フィールドボスとしては最後のボスだけど、それは流石にインフレ……そうでも無いのかな。まあよく聞けば、ちゃんと相手の情報を頭に入れて置けば倒せるみたいなニュアンスだし、やる事に越した事はないか。
「僕が行った時は前情報が何にも無くてね、見事に返り討ちにあって、しかも3回ぐらいやり直す羽目になったから。レベルは確かに低かったけど……いや、『盾王』になった今でもあんまり戦いたくないね。ぶっちゃけ言うと、僕も行けるようになったの最近だし」
「そうだったのか」
「確かに、アレは苦戦しました……」
「……何回挑戦したんですか?」
「1回ですけど、割と瀕死でしたよ?」
「わあ凄い……」
それでも1回でクリアしたのか……流石アポロさんと言うべきか、それともそのアポロさんでも苦労するレベルの相手と言うべきか。
「ああ、あの竜の住処か。探索者は余計な制限がかかっているから大変だねぇ」
「見た事あるのか?」
「遠目にね、周りの地形を気にしなければどうにかなるだろうけど……」
「どうにか出来るのか……」
「私も神器さえあれば……」
「まあ、それはな」
モモはクローナを探している時に近くを通ったらしい。NPCは基本自由に動けるからな……いやプレイヤーが制限されてるだけか。うーん、メタ。とりあえずシステムの壁は置いておいて、モモがどうにか出来ると言うのなら……いや地形破壊レベルの事をしないと無理そうなんだっけか。それに実際に戦うとしたら補助に専念するんだろうし。
クローナの神器に関しては、無い袖は振れないので諦めてもらいたい。確かにナーフされたとしてモモと同レベルの事は出来そうだけども。というか、その場合俺いらない様な。おんぶに抱っこはプレイスタイルとしてはあんまり健全では無い。
「じゃあ改めてボスについて話していこうか」
「ざっくりサイトは見たけどな」
「あれ、微妙に情報足りないよ?」
「へえ」
それはありがたい。聞く必要が増えた。
とりあえずフィールドボスは竜だ。この前のトカゲもどき見たい感じでは無く、よくある感じの4足のスタンダードな竜らしい。鱗は赤黒く、20メートルぐらいの巨体だそうだ。夏イベ前半で2、300メートルぐらいの龍を見ているから小さく思えてくるな……いや20メートルも十分でかい。
攻撃手段としては、これまた無難な感じに爪や牙、熱線に近い炎のブレスを吐くそうだ。翼もあるので空に上がって遠距離攻撃をしてくる事もあり、その間を凌ぐのも必要になってくる。
「飛ぶんですか……」
「まあ一定以上のダメージを与えればすぐに降りてくるし、しなくても数分経てばまた降りてくるけど……割と地獄だよね、火球が山の様に降ってくるし」
「確かに地獄だな……熱線は飛んでる時は使わないのか?」
「うん、その時は火球だけだね」
天候:火球とか洒落にならないな。飛ぶ時は分かりやすいモーションがあるみたいだが、どんなに攻撃しても中断は出来ないらしい。とりあえず要遠距離攻撃手段との事らしいが……俺たちの場合はな。
「まあ【空走場】だよな?」
「うん、そうだね、いや本当便利だね……」
「ありがたやって事で……後はモモの魔法とか?」
「……基本はマスターがやるんだろう?」
「まあそうだな」
「じゃあそういう事で」
予想通り補助に回るか。それはまあしょうがない。
「それで、1番厄介というか注意なのが攻撃力の高さなんだよね。今の僕でも直撃するとそこそこやばいって言えば分かる?」
「そりゃあな……全部?」
「全部」
「全部かあ……基本は避けるつもりだから良いけど、更に気をつけないと」
「私は掠るだけで死んでしまいそうですね……」
「気をつけてね。攻撃手段については、派生はあるけど基本こんな感じかな」
「じゃあ、こっちの手札……というか、どう攻撃するかだな」
基本はこっちを考えるのだろうけど、先達のお陰で相手の情報はほぼ全て分かっているからな。ショウ達も手探りで倒したんだろうし……頭が下がるわ。有り難く恩恵に授かっておこう。
「コウのエクストラスキルは思い切り使っていこう」
「フィールドボス戦だから人の目にもつかないだろうし、強敵相手には使っていかないとな」
「後は『反剋』ですけど……」
「実際に使ってみないと分からないからな……」
「私も習得してからは対峙してないので、分からないですね」
「使いたい時に使えない時が多いから、使えない前提で考えないとな」
検証している時に、フィールドボスと再戦した事があったが、大体使えなかった。最初のフィールドボスにも使えなかったんだから、使えない前提で考えるべきだな。ああ、そういえば1人でやっておけば良かったな……大体誰かと一緒だったし。条件知らなかったからしょうがないけど。
その後も手段について話していったが、NPCが補助に回る以上、基本攻撃するのは俺なので【貫牙剣】も絡めて立ち回りを確認するぐらいだった。クローナも攻撃するけど、ヘイト引きの役割が強いだろうし。まあそれはそれで立ち回りを確定できたのだから何とかなった。経験者2人の意見もあったからな。
「まあ、臨機応変にねとしか言えないけど」
「動きが固まると死ぬからなあ……」
「頑張って下さいね、1回しか戦えないという訳では無いですし」
「それもそうですね、程良く気楽にいきましょう」
俺達が死んだ所で、モモとクローナは余裕で逃げられるだろうから、そこら辺の心配も無い。フィールドボスは恒常だし。
ポーション良し、備品良し。使う隙があるかは分からないが、用意しといて損は無い。
屋敷を出て全員で目的の場所へと向かう。アポロさんは参加しないが、ソロで狩りに行くそうなので途中まで一緒だった。
山を登って行き見えてきたのは両側を崖に囲まれた参道だった。もちろんそこには、前情報通り赤黒い体の、巨大な竜。あちらも向かってくるこちらに気づいた様だ……さあて、戦闘開始だ。




