第一話 迫る面倒事
「そろそろ4次職の条件に取り掛かろうと思うんだけど」
「へえ、今レベルいくつだっけ?」
「88」
「まあ良い塩梅じゃない?こなしていく間に90にはなるだろうし」
「4次職ですか、私もそろそろ考えないといけませんね……」
「僕達はもう少しかかりそうです」
「厄介なのが多くて……」
夏休みが明け、久しぶりの学業の調子も取り戻してきたので、ようやく4次職に乗り出す事にした。今まで騒動やらイベントやらで調べる意欲すら無かったからな。夏休み明けの学校はきっついし。長期休暇はありがたいが、明けた時が地獄。
相談してみてはいるが、まあ別にほぼ1人でやる事だし、一応先達の意見を聞いておこうと思い、この場である。珍しくアポロさんもいるし、4次職2人、そして現段階で条件をこなしているクルトとアゲハの意見も参考になるだろう。生産職はレベルは上がりやすいけど条件がややこしいらしく難航してるらしいが。コトネさんはレベルがまだ80前半の様だ。とりあえず自分のステータスでも確認するか。
Name:コウ
Level:88
Main job:侍
Sub job:蛮将
HP(体力):10000
MP(魔力):1170
SP(技力):1750(1925)
STR(筋力):1520(2265)
VIT(耐久力):780(+2640)
AGI(敏捷):2220(2908)
DEX(器用):1810(1973)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】【居合】【刺突】【ディケイブースト】【レストリジェクト】
【ウーンドリターン】【フラジャイルクイック】
汎用:【鑑定Lv.8】【採集Lv.8】【魔力操作Lv.1】【魔力感知】【罠感知】
Exスキル
【貫牙剣】【空走場】
魔法
『反剋』
武器:黒刀【銕鴉】
所持金:54003313G
称号:[Exモンスター討伐者][熟練探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア][迷宮踏破者][天使(堕)所有者][日誌回収3/5][宝真珠入手5/5][夏イベントシナリオクリア][未踏の宝No.5]
改めて大分ステータスも高くなったな。サービス開始から1年が経ち、プレイヤーの平均も高くなっているだろうから、これで一端のプレイヤーぐらいにはなっただろう。レベル自体は3次職までは大体楽に上がるからな。
所持金が少し増えている件については、この前手に入れた宝を少し換金した為である。全て換金するのは流石に不味いのでどんなものかと少し試した結果だ。金銭的価値のある物品として残しておくのはそれはそれで有効手段がある筈。配分された物をよくよく確認してみると、中々に見た目が秀逸な物もあり残そうかと思っている物もある。
まあ普通にプレイしていれば金は手に入るので、使い切る事はまず無いだろうけど。そもそもどんな買い物したら使い切れるんだか。町でも買うのか?いや流石にそれには足りないか。
「それで、条件は調べてあるんでしょ?」
「それをせずに相談なんてしないわな……まあお陰でモチベが酷いけど」
「あはは、そうなるよね」
さて次に4次職の条件だ。
・ツェーンナット前以外のフィールドボスをソロで1回以上討伐
・近接戦闘系4次職のNPCもしくはプレイヤーと1対1の戦闘を行い、力を証明する。
・各フィールドのレアモンスターを50体以上討伐
・レベル90以上に相当するモンスターを1000体以上討伐
・10系統以上のモンスターを各500体以上討伐
いやもう面倒臭い。数が酷い。何かアバウトなものもあるし。累計なのはまだ良いが、それでも焼け石に水レベルだ。まあそんなに倒してないからしょうがないけど……どうにもな。種類別討伐に関しては大体満たしているからそこは良い。というか倒していけば大体満たせるし。中には足りない種類もあるけど、レベルが低い所であればすぐ満たせる。
前半の方はどうしたものだか。割と時間かかりそうだなあ。若干萎えてくる。さて、先達2人に色々聞こう。
「モチベどうした?」
「僕はまあ、地道にやって何とかしたよね。コツコツやるのは嫌いじゃないし。それに、直接攻撃するタイプじゃないから条件も結構違うし」
「ああ、そういやそうか……アポロさんは?」
「私は、確認した時にはほとんど満たしていたので……決闘の場を用意するのが大変でしたけど」
「ソウデスカ……」
ほぼ自然に達成出来ていたみたいで、全く参考にならない。まあどんな内容にせよ、俺の場合はショウの様に地道にやっていくしかないか。
「まあコウの場合は伝手もあるんだし、時間の問題だよね」
「そうだな……頑張るか」
「私も頑張らないとですね」
聞いた所で頑張るぐらいの選択肢しかないよな。そもそも個人で達成するものだから、協力して達成できるのなら楽がし放題なのであり得ないか。
4次職のプレイヤーが少ないのは面倒で妥協しているせいか……?いや面倒だけど、そこまで難しい訳じゃ……単に時間の問題かな。
とりあえずそんな感じで、ジョブの話はそれまでとした。
「そういえば、旅館の人達は会えたんでしょうか?」
「さあ、音沙汰無いからなあ……」
「まあ今も忙しいみたいだし」
「結構な人数いたし、全員で押しかけるのか……?」
「そ、それはちょっと光景が……」
雪山に住んでいた、確か名前は……シロネさんだったっけか。そう簡単には人が近づけない様になっているとか、思い出すと色々あったな。まあ同じ系統の魔法とか何かだろうし、その辺は何とかなるのだろうな。そういや厳密に言えば人じゃないんだっけ?まあ面倒だからいいか。
旅館はシャーロットの話の通り、あのまま残るみたいだ。その辺も含めて夏イベ後に変わった点といえば、ファフニール(仮)がいた洞窟は空のまま、一部のお題の島は少し手が加えられていたそうだ。終盤には全てのお題のクリア方法が判明していた様で、ミニゲームみたいな扱いになっていたらしい。それで暇を潰すプレイヤーも多く、無くなったお題の物に関しては不満が出たそうだが、そこはしょうがないとしか言いようがないか。
あと旅館は金を取り始めた。いや言い方が悪かった。イベント期間中は無料だったが、今後もそのままだと他の宿との兼ね合いが面倒だ。王国との話し合いとの末に定期便も出るようになったから、その手間を惜しめるプレイヤーは無料の旅館の方に行ってしまう。そんなゲームにしては世知辛い理由で料金を取り始めた。まあその価格は平均ぐらいだからまだマシと言うべきか。もちろん残ったプレイヤーも多く今後も機能し続ける事だろう。
「まあ増えているプレイヤー対策だろうね」
「既存の宿の数だと、手一杯になっている町もあると聞きますからね」
「成る程なあ。あそこの部屋の数は以上だし、船に乗る必要を考慮しなければ……結構良いのか?」
「まあ豊富な素材、レベル別の島……まあ使えるよね」
「意外と何とかなっている……?」
運営にはそんな考えが……考えすぎかな。まあイベント後変化はそんなものだった。さてこっちはこっちでやる事を……あ、まだ一つあった。




