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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第二十四話 奇縁は何処にでも


「では、宝の配分を決めたいと思います」


「どうなりますかね……?」


「さっさと決められると良いんだが」


 更に翌日、全員がそれなりに長い時間集まる事が出来ると判明したので、今回のイベントで手に入れた大量のお宝について話し合う事になった。量が量なので金銭に換える事は当分無いだろうが、大体の金額は出してもらっている。やたら派手な物や大きい物に関しても個別に金額を出してもらったので、配分する時に困ることは無いだろう。そういう訳で、分ける時に手間取る事は無い……しかし問題は配分だ。


「基本は等分だろ?」


「そうだね、その方向ではあるけど……」


「あの、流石に量が量なので……」


「私達が貰うのはね……」


「ああ、それはもう面倒だから無しで」


「ええ……」


 予想通りクルトとアゲハが遠慮し始めたが、その意見は無視。過程は全て参加していたし、何より宝の量が多すぎるので等分にした所で問題が全く無い。というか多すぎて持っていたくない。屋敷の地下室が黄金色に染まっているのは何とかしたいものだ。ギリギリ入って良かったよなあ。あの地下室何に使う物なのか全く分からんけど。


「別に無しでも良いんだけどねぇ」


「貰っている身で何ですが、金銭には困っていませんし……」


「いやまあ、あって損は無いだろうし、何か好きな事でもすれば良いだろ」


 この2人に関しては、結構活躍してくれたし、等分は最低でも貰ってくれないと困る。それにお金を渡していると言っても大概は食品と多少の嗜好品代分ぐらいなので、自由という程お金が無い。もっと渡せば良いんじゃ無いかって?いや渡し過ぎると何かあった時にこっちが困るし。こういう時にまとめて収入があればしばらく困らない。モモはちょくちょく本を買っていたりするし、クローナも釣りを続けそうな感じだった。必須では無いが、余裕があると色々と楽だろう。


「お金には困っていないのですが……」


「それを言うなら全員困っていないよね」


「そうですね……設備を買っても、その後の収入で何とかなってしまって使い切る気配がありませんし」


「余裕があるから、面倒事になっているなあ」


 大人数で大金に相当するものを手に入れると本当に面倒臭い。そも分けた所でどう保管するのかと言う問題も残るし。このまま等分で決めてしまうか?


「またややこしい話をしておるのう」


「…….シャーロットはいつも通りだな」


「何をぅ!?一連の騒動で公務が増えたのじゃぞ。霧が晴れたとも思ったら、突如島が出現するし、その島に旅館があるわ、宝の山を手に入れる探索者はおるわ、大変なんじゃぞー!」


「そういえばそうか」


 島がアップデートされた件に関しては、NPC側も突然現れた扱いなんだな。旅館に関しては今後も継続する様で、お題が無くなるだけでこの先も残るからあそこを利用するプレイヤーは多いだろう。NPCも利用する事もあるだろうし。旅館側との交渉は順調らしいが、処理しなければならない事は当然増えるか。大変なんだなあ、ちょくちょくこの屋敷に侵入している奴の事とは思えない。というか、俺達が旅館の方に泊まっていた時にも入っていたのはどういう事なんだろうか。そういえばここの防犯システムどうなっているんだ。壊れてはいないはずだが、何か心配になってくる。


「それにしても、配分を決めないとね」


「どうしましょうか……」


「一応時間は取りましたし、ゆっくり話しましょうか」


「決められると良いんだけどな……」






 シャーロットもいるので、イベントであった話をしながら配分について話していった。最終的には本末転倒というか、半分程を共同資金とするという日和った感じの結果となった。残りの半分は等分した。流石にそのぐらいだと大金で済むので精神的に楽だ。まあ全員直ぐに全て換金はしたりしないだろうし、使い切るという事も散財し過ぎなければ大丈夫だろう。

 当然冗談だろうけど、途中でシャーロットが猫撫で声で擦り寄って来たので突っぱねておいた。仮にも王女様が何やってんだか。相当我儘を言わなければ大抵の事は叶うと思うのだが。


「自由に出来る金があるのと無いのは違うじゃろ?」


「それはそれ、王族が変な手段で手に入れるなよ……」


「まあの……あ、そうだ、ナタリー」


「はい。これをどうぞ」


 メイドさんが渡してきたのは1通の手紙だった。何だこれはと思ったが、とりあえず全員が見える様に手紙を開く。


「旅館の女将とやらからじゃの。繋がりがあると知ると、渡して欲しいと言ってきたのじゃ」


「王族を中継するって中々だな」


「まあ別に良いんじゃがの。それにお主が昨日来たらしいが、その時は交渉中だったしの」


「ああ、あの時か」


 知らないけどニアミスしていたのか。まあそれは置いておいて、宛先は俺、コトネさん、ショウ、モモだった。あっちは名前を知らないから、見た目の特徴が書いてあるだけだったが。そして内容は、聞きたい事があるので旅館まで来て欲しいとの事だった。


「何でこの面子?」


「さあ……?けどまあ、行くしかないよね」


「そうですよね」


「変な事にはならないと思うがの。妾も少し話したが、普通に友好的じゃったし。公的にあそこに居られれば良いという感じじゃった」


「そうか……じゃあ早速行くか?」


「そうだね、配分も決めたし」


「後で聞かせてくれの」


「内容次第だけどなー」


 今日の終わらせなければならない事は終わった。時間もあるので、早速旅館へと向かう。宛先に含まれていないクルト達はもちろんお留守番というか、自分の事をする為屋敷に残った。まあアポロさんは狩りに向かったけど。クローナは完全にお留守番だな。


「どんな内容なんでしょうか?」


「まあ聞いてみない事には……」


「モモは心当たりは?」


「思い出せる範囲には無いねぇ」


「そうか」


 旅館へと赴くと、受付のカウンターには女将がいた。丁度良いというよりは、待ち構えていた感じだな。

 更に不自然な点は、今はそこまで多くないだろうが、それでも10数人はうろついているはずのプレイヤーが1人も見当たらない事だ。誰にも見られなくて運が良いというよりは確実に故意だろうな。配慮が行き届いているとも言えるか?


「お待ちしておりました、こちらへどうぞ」


「え?あ、うわっ」


 女将が手で指し示した先は壁しか無いはずだが、一瞬の後に道が出来ていた。ドユコト?


「へえ」


「び、びっくりですね」


 驚きはしたが、道が出来たのでとりあえずついていく。通っている道は、プレイヤーはもちろん従業員も見かけなかった。通路を曲がると縁側になり、庭園が見える……本当に外かな、ここ?そして通された部屋は、畳敷きの客間だった。


「どうぞ、おかけ下さい」


「ああ、どうも」


 座布団が用意されていたのでそこに座る。女将は俺達にお茶を出した後座り、手を一振りした。


「ん!?ぐっ……げほっげほっ」


「ど、どうしたモモ!?」


「あ、いや大丈夫……あー、なるほど思い出した思い出した。アレの関係者か」


「やはりやはり!ご存じでしたか!いやあ、こんな偶然があるものかと、我々一同喜びで打ち震えておりまして!こうして確認出来るのをお待ちしておりました!」


 いきなり女将のテンションがぶち上がった。さて、話が全く見えないのだが。


「どういう事だ?」


「ほら、雪山で女狐に出会っただろう?」


「あ!あの時の」


「あー、あったね」


 雪山……思い出した。あれから1度も会ってないからすっかり忘れていた。なるほど、あの人の関係者……という事はここの人は全員人では無く狐?マジか。

 話を聞くと、雪山の女性はここの人達の長姉とも言える人で、ずっと探していたらしい。長姉と言えるだけあってその技量も上、隠れているため見つけられず今に至るそうだ。


「是非場所をお聞きしたく……」


「それはまあ……」


「大丈夫だと思うよ?まあ義理は無い訳だけど」


 モモが大丈夫というなら大丈夫か。流石にここで他意は無いか。正確な場所は分からないので、ざっくりした感じになったが、大層喜んでいた。帰りには、引き出物の様な物が大量に渡された。中身は主に食品、あとは希少な植物系の素材だった。イベントだとしても、こういう事はあるんだな。あ、夏休みもうすぐ終わりだな、早っ。


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