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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第二十話 黄金の山


「良っし!」


「その大きさなら当てられま……あっ!」


『ぬぅあァ!!』


 アポロさんは傷口に攻撃を当てれば普通にダメージが入るのではないかという、合理的といえば合理的だが、割と外道感漂う攻撃をしようとした。しかし、怒髪衝天といった雰囲気の大男が棍棒をやたらめったらに振り回しそれを阻止した。毒も飛び散るので、下手に近づけない。破片とかならまだしも、毒だと量を浴びるとどうなるか分からないからしょうがない。


『フゥ、フゥ……人間が、少し手を抜いてやれば調子に乗りおって……盗っ人共め……!』


「……最初から本気を出していれば良いのでは?」


「いや身も蓋もない事を……」


「私なら全力を持って撃滅致しますよ?」


「物騒だな、オイ……全力を出さずにやられてくれるなら良いんだけどな……」


 クローナは大分物騒な事を言い始めた。それは置いておいて、大男の文句はテンプレートなよくあるものだが、確かに割と間抜けな様に聞こえるな。これは、AIが変っていうより、ただの第2形態のフラグだろうな……毒を使う事といい、竜になるのか?

 その予感はまあ当たりの様で、最初の時と同じく大男は体をゴキゴキと鳴らし、変形し始めた。


「あっ、第2形態」


「一応……えいっ」


「……無敵時間か」


 隙は山程あるのでアポロさんが攻撃したが、全く効いていない。変身シーンは邪魔できないか。エクストラスキルの時間が勿体無いけど、待つしかない。人型が崩れてきているので、モンスターになるのは間違いないだろうけども。


「……これは」


「竜ってか、トカゲ……まあ竜っちゃ竜か」


「元ネタはワームという表記なので形自体は何でも良いかと?」


「そうなんだ」


 大男が変身した姿は、ファンタジーでよく見る竜というよりかは、トカゲに近いものだった。分類としては地竜とかそんな感じなのだろうな、まあ地下にいるならそもそも飛ぶ必要とか無いよな。大きさは10メートルほど、そこそこデカい。形態変化するボスは大体ステータスも強化されるので、更に硬くなってるのか?


『ハハハ、お前達に奪われるぐらいなら、こうしてやるわぁ!』


「テンション変わりすぎだろ、ってか、うわっ!?ゲホッ!」


 変身した大男……もうファフニールで良いか、似たようなもんだし。そのファフニールは変身すると同時に毒の霧をこの空間全体に吐き出した。確定状態異常かよ、しかもステータスをよく見ると毒とは別にダメージを受けている。さっきの飛び散った毒からして、酸系の要素もあるのか?


「やっべ」


「みなさん!」


「コトネさん、回復お願いします」


「はい!」


 前衛のメンバーは全員コトネさんの回復魔法で治してもらった。後方のモモ達は魔法で何とかしたみたいなので、大丈夫だろう。


「とりあえずは何とかなったけど……」


「でも割とやばい事になってる物があるね……」


「本当ですね、あれは……」


 何とファフニールの後ろにある、宝の山の1部が黒ずみ始めている。状況からして毒による劣化とかだろう。


「僕達に奪われるぐらいならって言ってたね……」


「性格悪ぅ」


 いやまあ、あちらからしたら俺達はただの盗っ人なので、しょうがないといえばしょうがないが……性格悪いのは変わらないか。というか、劣化自体はゆっくりだが、進んでいる様だ。時間制限付きか、最悪倒した所で何の収入も無くなる可能性がある。


「急いで倒さないとな」


「コウさんお願いします……私も時を見て使いますので」


「了解」


「じゃあ引きつけますか」


「そうだね」


 【貫牙剣(アウラ)】はまだまだ使える。ファフニールは大量の毒をこちらに吐きつけてきた。


「汚い!」


「ですが、範囲が広い……!」


 まあ何とかやけられはしたのだが。避けた勢いのまま空中を走り、刀でファフニールへと斬りつける。斬った感じ、硬くはなったのかもしれないが、その分筋肉の締まりはそこまでも無くなったか?これなら刺す攻撃も使えるな。好都合だ。


『くそっ、ちょこまかと……グッ!』


 とりあえず動き回りながら傷を増やしていく。傷をつければそこにアポロさんが攻撃を当てるからダメージは稼げる。ファフニールの方は俺を捉えようと動き回っているが、ショウのヘイト操作やらクローナの攻撃で全く上手くいっていない。それに加えて、的が大きくなった事によりモモも魔法で妨害しやすくなった。俺に気を取られているのもあって、モモの方にヘイトが移ることも無い。結果的にハメ技みたいになった。というか、全然毒を吐かなくなったな、物理攻撃ばっかりだ。傷口に毒が入ると不味いタイプか?


「コウさん!」


「了解!」


 傷を増やすのもそろそろ良いだろう。ファフニールから距離を取る。


『離れたな、渾身の毒を……グゥゥゥ!!?』


 アポロさんの『黒炎』が、竜の傷口を抉る。俺がつけた傷口に的確に攻撃を当てている。ファフニールも、このままでは不味いと判断したのか、体をアポロさんの方へ向け、1歩を踏み出そうとしたが、崩れ落ちた。アポロさんはそれでも攻撃の手を緩めず数秒後、ファフニールがエフェクトとなって散っていくと攻撃が止んだ。随分とまあ、最後のボスにしては呆気なかった最後だな……やっぱり火力だ火力。火力は全てを解決するね。


「アポロさん、ナイス」


「いえ、傷が無ければあそこまで効かなかったでしょうから……すぐに仕留められて良かったです」


「2人ともお疲れ様」


「お疲れ様です」


「ああ、そっちも」


 とりあえず仲間で労い合う。その後は、最重要である山の様な宝の方へと目を向ける。ファフニールのドロップはちゃんと回収しておいた。クルトによると分かりやすく毒系の装備に使えるとの事だが、毒系はな、万が一にぐらいしか使わないしな。

 宝の腐食の方は止まっているみたいで、腐食した部分は約3割。


「いやでも、多くね?」


「相当だよね……?」


「他の所はどうなっているのか気になりますね」


「うーん、僕達が終わったんだから他にもいるだろうけど……ちょっと聞いてみるよ」


「あ、よろしく」


 イベントを終え、まあまあな強敵を倒したにしても、微妙に不安になる量だ。一応調べてみたが、金メッキとか地面が盛り上がっていて実際の量は大した事無いとか、そんな事も無く、普通に宝の山だった。流石に全プレイヤーでは無いにしても、1割のプレイヤーにこの量が与えられていたとしたら色々と可笑しい様な。それに加えて、なあなあで進めていた俺達が1番多いというのも納得がいかない。そもNPCに頼っている部分もあるからフェアでは無い。

 ショウの確認を待っている間は暇なので、各々好きな様に宝を確認している。見るだけならタダだ。宝の山の内容はイメージ通りで、黄金の冠などがあった。実際に手に取ってみると、中々に面白い。


「あー、みんな」


「何だって?」


「他の人が見つけたのは大分バラつきがあるみたい。中にはこれよりも多い所があったってさ、確認出来たのは3つぐらいだけど」


「マジかー……」


「そ、それなら全部持ってって良いって事ですよね?」


「そうなるね、後称号確認してみると良いよ」


 ショウにそう言われ確認してみると、[未踏かの宝No.5]というのが追加されていた。5というならクリア5番目……それ無いか。という事は宝の規模が5番目?うわマジか……というかこれより多いのが4つあるって事か?経済崩壊しないよな?


「でも、全員詰めても入りきらないよな?」


「そうなんだけど、まあ船に詰めればギリギリ?」


「成る程……でも運搬が大変そうですね」


「それは魔法でやれば良いさ。固めて滑らせばまだ楽だろう?」


「氷系はあなたの十八番ですからね」


 氷で固める程度なら劣化もそこまでしないだろう。量的に大規模な魔法になりそうだが、モモなら安心だ。

 とりあえず、これで夏イベの主軸は終わりかな。運搬の時も他のプレイヤーに会う事は無かった。この島は別枠なんだろう。いやあ、最後にとんだ収入だった。


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