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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第十八話 原典準拠?


 30分後、斬られた腕は無事にくっつき、装備もほとんど元通りになった。


「こんな場所でも何とかなるもんだな……」


「綺麗に斬られていたからね。それでも、応急処置みたいなものだし、少し耐久値と性能は下がってるから気をつけてね」


「差が少しになってる時点で十分にありがたいわ」


「後でちゃんと直すからまた出してね」


「分かったよ」


 クローナの時もそうだが、普通は縫い目が出来るはずなんだけどな、そんな物は目を凝らしても見つけられない。普通ならゲーム的処理と片付ける所だが、この場合はちゃんと設定があるからこそのこの状態だ。まあ何にせよファンタジージャンルの事だからあんまり差は無いけど。


「HPとかは?」


「ああ、ポーションも追加で飲んだし、休んだからSPもそれなりには……最大値じゃ無いけどな」


「まあ戦闘に支障が無ければ良いか。時間もかかったしね」


「すみません……」


「いやいや、それを言うなら時間がかかるレベルの大怪我をした俺の方が。それにアポロさんならこんな事にはならなかっただろうし」


「いえ、多少は傷は受けたかと……それにしても、再戦は出来るのでしょうか?」


「さ、さあ?」


 それでも多少なのね。鎧武者と対戦したそうなのは、基本ソロなせいだろう。今回は事故で俺が対戦する事になったので、ゆっくり話し合う時間があったならアポロさんが相手をしていただろうな。再戦出来るかに関しては……どうなんだろうな。今までクリアしたお題には全く興味が無かったし。


「そこら辺知らないのか?」


「いやまあ、2度訪れる意味が無いからね……ドロップ自体もそこまで利点がある訳じゃないし、そもそもプレイヤーが詰まっているから」


「……とりあえず、一通り片付いてからまた来てみます」


「それで良いんじゃないですか?」


 魔法禁止なので『黒炎』は使えないだろうが……普通に勝ちそうだな。力負けはするだろうけど、対抗出来そうだ。俺の場合はなあ、やっぱりまだ難易度に対して自力が足りない。やっぱり4次職か。


「じゃあ次行きますか」


「そうだ……あ、次のお題」


「あっ、忘れてた」


 ドロップ品の兜を放置していたままだった。心なしか、何処となく哀愁を帯びている気が……うん、気のせい。さっさと確認しないと。

 兜を拾ったショウに、お題の紙を渡す。


「えっと、次は、「東、邪竜」?」


「邪竜、宝……ファフニール?」


「ああ、有名な奴」


 ファフニールといえば、大量の金塊を洞窟の中に隠しているとか何とかで有名な邪竜だ。倒したのは……ジークフリートだっけ?まあ宝探しのボスには最適だろうけど。


「次で11……あ、1回失敗があったから10か」


「聞いた所だと、他の所も10で終わりみたいだったから、僕達の所もそうだと思うけど」


「じゃあ、ボス戦って事で良いですね」


 そして、最後と思われる島へ。これで終わりか、早い所は1日、俺達は切り上げたから2日かかったが……まあイベント期間が長いからって、ダラダラとはやっていけないよな。状況的に確実にボス戦だろうが、クルトとアゲハは端にいればいいし、イベント系はあまり積極的に参戦してこないモモとクローナが守ってくれるだろう。

 着いた島は、針葉樹系の木が生えている森だった。


「うーん、流石に視界がバグる」


「このミスマッチはどうにかならないのかな……?」


 森の1部を切り取って海に浮かべた様になっているから、環境が異質すぎる。よく海側の木とか枯れないよな。これまでの工程で慣れたかと思っていたが、そうでは無かった様だ。


「この島も、全くモンスターがいませんね……」


「プレイヤーも見かけないな」


「探索者がどうなのかは知らないけど、魔物に関しては、下にいる気配のせいだねぇ。縄張りに入る馬鹿はそうそういないだろうさ」


「ああ、邪竜?」


「多分そうだろうね」


 流石に魔法の範囲外、という事なら普通に第六感的な、気配とかそういう感じかな。まあ無駄な戦闘が無いので良しとしよう。


「そういえば、ファフニールだと仮定して、弱点とかあったっけ?」


「毒を使う様な話はありましたけど、弱点は……そも伝説で登場する竜って大概最強の存在ですし」


「そうか……まあ毒を使うかもしれないと分かっただけマシか」


 そもそも似ているだけで、その邪竜がファフニールモチーフだと決定した訳では無いし、そうであったとしても忠実にしてくる理由は無い。可能性の1つとしてだ。


「毒……それなら何とかなるかも?」


「回復魔法以外にも状態異常を治す魔法がありますからね」


 それなら、対策要員が増えるからありがたい。もし広範囲なら、コトネさん1人じゃ手が足りないだろうし。というか、回復魔法以外にも、解除する魔法があるんだな、知らなかった。魔法関係は属性で分かれているけど、それぞれ汎用性がある上に数も多いから把握出来ていない。まあ対策が出来たから別に良いか。

 島の中央部へと進むと、巨大な洞窟の入り口が見えた。


「ファフニールは洞窟の奥で黄金を隠し持つと聞きますからね……」


「そのまんまだなあ、まあ分かりやすくて良いけど」


「じゃあ……あ、準備大丈夫?」


 今更だが、ショウが確認してくる。もちろん不備があるメンバーはいなかったので、そのまま洞窟へと入る。中は鍾乳洞の様になっていて道も広く、奥深くまで続いている様だった。


「広いから進みやすいですけど……何か不気味ですね」


「光源がモモの魔法しか無いから暗いな……クローナは大丈夫か?」


「ええ、この程度なら何とか」


 モンスターも出ないので、最奥に辿り着くまではただの洞窟なのだろうが、何処となく不気味さが首を撫でる。思わず身構えてしまうので、精神をすり減らしそうな感じだ。大分深そうなので、このままだとへばりそうだ。これも含めてのボス戦なら、結構難易度が高そうだ。


「うーん、肌寒いね?」


「洞窟だから……で理由になるか?」


「後は、奥に棲む奴の気配が乗っているのもあるだろうねぇ。中々の存在じゃないか?」


「モモがそう言うのか……」


 このメンバーなら何とかなるか?一応2パーティ分だし。

 そして、15分ぐらい歩いた結果、何やら光っている空間が見えて来た。


「着いたかな?」


「ここもあからさまだな」


「何が光っているんでしょうか……?」


「じゃあ僕達そろそろ離れてますね」


 いきなり戦闘が始まるかもしれないし、クルトとアゲハは距離を取った。そのまま光っている空間へと進んでいく。その空間は野球でも出来そうな程広かった。まあ流通と戦闘になるならこのぐらいは必要か。

 そして、この空間を照らしていた光の正体は、奥にある山の様な黄金だった。


「……倒したらあれ全部貰えるのか?」


「いやいや、それは流石に……いやでもあり得るのかな?」


「ど、どうなんでしょうか」


 普通なら演出だろうで済むが、このゲームはそんな事はしない。あんなあからさまに置かれているからには消えて無くなるなんて事も無いだろう。価値が分からなくても億ぐらいには余裕でなりそうだが……経済崩壊しそうだな。他のプレイヤーの場合どうなってんだ?同じでは無いにせよ、俺達が運良く最も多くの所に……なんて事はあるまい。

 黄金に気を取られて最初は気づかなかったが、よく見ると黄金の手前には小柄のずんぐりむっくりな体型の男性が俺達に背を向けて立っていた。


「竜は何処だ……あれ誰だ?」


「何となくドワーフっぽいけど、人間以外はいなかったはずだよね?」


「とりあえず、気配の出所はアレだよ」


「え?」


 どう考えても竜では無く人だが……モモが言うならそうなのだろう。黄金の逆光で分かりづらいが、そう言われると人というより人型の何かっぽい様な……黄金の逆光って何だ。そういえば光源も何も関係なく光り輝いている。モモの魔法を抜きにしても煌々と輝く黄金……まあそれはそれで価値はあるか。


『……盗っ人か、忌々しい……』


 前にいる人らしき男は、俺達に気づいたのかこちらへと振り向く。相変わらず見た目の詳細は分かりづらいが、確かにドワーフっぽい。

 しかしやはり人外だったのか、ゴキゴキという音を鳴らしながら3メートルぐらいの大きさになっていった。いつ取り出したのか、棍棒な物を持っていた。


『さて、すり潰してくれる……!』


 さあて、戦闘開始だ。


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