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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第十六話 崖の上の花


「……さて、次のお題はっと」


 虎からドロップした素材を紙に近づけ、浮かび上がって来たお題は「南、崖、花」だった。相も変わらず分かりにくいというか、シンプルな内容だ。まあこれに関してはどういうものかはすぐ分かるのだが。


「崖ね……南だとまあ、アレだね」


「アレでしょうね……」


 全員が南の方向を向く。このジャングルの中からでも見える程に聳え立つ山みたいな物があった。南にある島はアレぐらいだろう。少し高くなっている島はいくつか見かけたが、あれだけ極端な物は他に無い。ついにというか、あそこに行く事になったのか。


「じゃあ行こうか」


「近いから良いな」


 そんな感じで次の島へ。この島はちらほらとプレイヤーを見かけた。1人が崖を登っていたり、全員で協力しながら登っているパーティもいた。まあ登る以外に方法は無いのだろうな。見れば相応の凹凸があるからプレイヤーのステータスさえあれば初心者でも登るには問題無さそうだ。突き出ている部分に腰掛けて休憩しているプレイヤーもいる。実際登って目的の物を手に入れれば良いだけで、時間がかかるだけのお題だな。


「さて、どうしましょうか?」


「まあコウでしょ」


「コウさんでしょうね」


「そうだよなあ……」


 【空走場(アハルテケ)】があるからな。登るとすれば俺以外に適任がいないだろう。しかし使うと目立つよな……こっそり使えば何とかなるか?


「どうせなら最初は風で吹き飛ばそうか?」


「いや、失敗すると赤い染みにならないか……?」


「まあ人を飛ばした事は無いからねぇ。探索者だから死んでも死なないだろう?」


「……まあ地道に行こう。安定な方法で」


「慣れない事はするもんじゃないね」


 そういう訳で、俺1人が登る事になった。大人数で登る必要は無いし、適材適所という事で。


「じゃあ行ってくる」


「頑張ってね、確実な感じでね」


「時間がかかるのはしょうがないですからね」


 仲間からの声援(?)を受け、いざ崖なのか山なのか分からない場所へと向かう。最初は傾斜が緩いのでサクサク歩ける。【空走場(アハルテケ)】はまだ使わない。直接空中を上がっていくのは目立ちすぎる。仮にそうすれば効果時間内に上へと辿り着けるだろうが、流石にな。上の方は大分本格的に登る事になりそうだから、踏み外した時などの補助用として使っていこう。足場が確実になるのは大きなアドバンテージになるはずだ。

 そう考え登っていくが、中々に疲れる。先の足場は分かりやすくなっていても、登り方を間違えると先にそういった物が無いという事もある。現にそうなったのか一旦下に下がっているプレイヤーもちらほらいた。ゲームなので肉体的疲労感はほとんど無いが、ちゃんと考えないと面倒な事になるから精神的に疲れる。


「【空走(アハル)……うわあ」


 後は、低確率で足場が崩れる事もある。何せ今真っ逆さまに落ちていったプレイヤーがいるからね。少し足場が厳しくなってきたから【空走場(アハルテケ)】で策をしようとした時だった。足場が崩れたのか、単に踏み外したのかは知らないが、何とも悲惨な光景だな。結構上の方にいたはずなので、頂上目前だったのだろう、それを合わせると大分悲惨だ。それにしても、この高さを落ちるのは大分トラウマになる様な……俺も気をつけよう。


「【空走場(アハルテケ)】っと」


 気を取り直して、エクストラスキルを使用する。そのまま登っていくが、不自然になりすぎない様に、足場らしい所を登っていく。普通なら体重をかけて大丈夫か分からないかもしれないが、足場を作っているから安心して上へと登れる。まあ戦闘時と違って数秒は足場を維持しないといけないから、MPの消費も激しいのだが。それを差し引いても安全に、かつ速く登れるのは大きいけど。楽で良いわあ。


「ふう、着いた……おお」


 そして約10分後、【空走場(アハルテケ)】の効果は切れたが、頂上へと辿り着いた。その頂上には、青い花が一面に咲いており中々の光景だった。しかも仄かに発光している様な……?これは夜に来た方が絵が映えるのかな。夜の方が登る難易度高そうだけど。一応スクショを撮っておこう。記念にね。

 早速近くの1輪を採取し、紙へと近づける。次のお題が表示されたので、これで完了だな。


「あれ、これ……まあ少しぐらいは採っても良いよな」


 何気無しに採取した花を鑑定してみると、ポーションなどの薬品系に使えそうな効能があると書いてあった。もしかしてコトネさんの役に立つだろうか。頂上は広く、花も一面に咲いているので10個ぐらいは採取しても問題無いだろうな。どうせリポップはするだろうし。

 帰りはまあ、来た道を戻るとして、高さによっては落ちても何とかなるだろう。というか、普通に何も無かった。


「ただいま〜」


「おかえり、まあバレてはいないんじゃない?」


「それなら良かった……あ、そうだ、コトネさんこれどうぞ」


「え、え?こ、これは?」


「ああいや、薬品に使えるとか何とかで」


「あっ、そうですか……ありがとうございます」


「上にあった花?」


「そうそう結構量あったから」


 いきなり渡したら、そりゃ戸惑うか。先に説明してから渡せば良かったな。特に何か起こった訳でも無いが、上での事を簡単に説明する。


「じゃあ次……何だった?」


「えっと「東、武者」だってさ」


「武者……?」


「テイストが変わりましたね?」


「人相手でしょうか……?」


「まあそういうモンスターだとは思うけど」


 さて、次の島。どんどん行こう……これ、何個まであるんだろうな。この調子ならもう2つぐらいはいけるはずだけど。まあ難易度にもよるし、確実にやっていかないとな。

 次の島は、広葉樹が密集している森だった。中心部には薄らとだが、霧がかかっている様に見える。怪しげだな。


「何か起こるのか?」


「霧自体は特に何も感じないけど……前例があるからねぇ」


「雰囲気作りでしか無いのでは……?」


 確かに前例はあるが、そこまで大規模な事は起こらないだろうな、流石に。一応警戒しておくに越した事は無いけど、まさか2番煎じみたいな事にはならないだろう。

 島の中心には、1体の鎧武者が正座をしていた。世界観がとっ散らかってる気が。直ぐに挑めそうだし、そこは無視しよう。刀を抜いて近づいていく。しかし、途中で先頭にいた俺と、他のメンバーを分ける様に結界が張られた。


「あれ?」


「何だこれ……」


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