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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第十四話 不触の蝶


「じゃあ、使わせてもらうね」


「あ、はい」


 イプシロンさんは球体を紙に近づけると、持っていた紙が光った。次のお題が出たのだろう……そういえば俺達の物はどうなっているのだろうか。気になったので取り出してみると、書いてあったお題にバツがつき、少し小さくなった後上に寄って、空いた下側に別のお題が現れた。


「失敗するとこうなるんですね……」


「あんまり知りたくなかった情報だけどね……」


「えー、この度は誠に申し訳なく……」


「い、いえコウさんのせいじゃないですし……」


「いや負けたのはマスターだろうに……」


「オーウ……」


「え、えっと次のお題は何でしょうか!?」



「あー、「北北東、蝶、檻」……檻?」


「捕まえるって事かな?捕獲とは書いてないんだね」


「まあ、行ってみれば分かるでしょう」


 次のお題は確認出来たので、とりあえず外に出る。帰りは、この空間の壁がスライドして新たな道が出現したのでそこを通った。怪しげだったが、ここで罠という事も無いだろうとの事だった。現に特に何も無くものの7、8分ぐらいで地上へと出る事が出来たからな。結構落ちたはずなので、すぐに戻れたのは良かった。


「はー、外だ」


「じゃあ、僕達はこっちだから……また機会があればね」


「また……次は勝ちたいなあ」


「ははは、じゃあ僕も対策を練っとかないとね」


 イプシロンさんの次のお題は逆方向みたいなのでここで分かれた。


「じゃあ行こうか」


「ああ」


「北北東ですね」


 船に乗り、次の島へと向かう。地図を確認するのも慣れたものだ。次の島は馬の時の同じく一面草原の島だった。


「遠目だけど、今度はあんまり人が多くないな」


「そうだね」


 難易度が低いから人が捌けやすいのか、それとも難易度が高く割り当てられるプレイヤーが少ないのか……前者が良いな。まあ試してみれば分かるだろうと中心部に近づいていく。

 そこには籠の様な形の枝振りの低木が生えており、その上では無数の半透明の蝶が飛んでいた。木の籠は丁度蝶1匹が入るぐらいの大きさで、あちこちに生えている。蝶は分かりづらいが、少し発光もしているみたいだ。夜に見てみたいものだな。周りいるプレイヤーはピョンピョンと飛び回り蝶を捕まえようとしている。中には剣などを振り回したり、魔法を蝶に向かって放っている者もいた。


「檻ってこの事か……」


「この中に蝶を捕まえて入れるんでしょうね」


「数は……1匹で良いんでしょうか?」


「まあ指定が無いからそうじゃないか?」


「とりあえず試してみましょう、周りを見る限り一筋縄ではいかなさそうですし……」


 アポロさんの言う通り、全員で試してみたが全く捕まらない。蝶は逃げる訳でもなく平然と近くを飛んでいるのに、手がすり抜けるのだ。ひらりと躱されているのではなく、本当にすり抜けていた。慎重にやって確認したから間違いない。


「いや、手応えが何も無いね」


「どうやったら捕まえられるんだ……?」


 周りのプレイヤーの半数ぐらいは半ば諦めているような感じもする。跳び回っているもう半分は俺達と同じく来たばかりなのかな。こちらはクルトやアゲハはともかくアポロまで跳んでいる。こうしてみると猫っぽい様な……目つきが狩人だな。どうしようかな。手応えが全く無いのがきつい。


「まあ物理じゃ駄目って事だよな」


「そうだね……魔法か」


「あー、じゃあ……」


「はいはい、試したけど、拘束系は駄目で、攻撃系も純粋な魔力も駄目だったよ」


「え、マジで?」


「大規模なのは試してないけど……まあそれは無いだろうねぇ」


「そうだよなあ、いやまあ試さない限り可能性はあるだろうけど……」


「そも大抵の探索者は発動出来ないだろうしねぇ。成長の仕方を決められるらしいとはいえ、限界はあるだろうし」


 ステ振りの事かな。とにかく、モモがやって駄目なら魔法は駄目という事になるんだが。物理と魔法両方駄目ならどうすれば良いんだか。


「……まあ思いつく限り試してみようか」


「それしか無いからなあ」


 その後も色々試してみたが、まあ何の進展も無い。人数が少ないのと距離が空いているのを良い事に、【空走場(アハルテケ)】で作った足場で蝶を囲んでみたが、案の定すり抜けた。まあそうだよな。事象自体は風系統の魔法で再現出来なくもないらしいが、難易度は高く、そんな事ででしか達成出来ないとは考えづらい。パーティの構成によっては詰むしな。

 まあ助っ人自体は可能だそうだが、それは正規の方法では無いだろうし。平均的なパーティに不可能な事は設定してないはずだし。

 という訳で万策尽きた感じがする。攻撃しても駄目、アポロさんが『黒炎』を使ったせいで瀕死になっていたりする。まあ死んで無いなら良し、『反剋』も対象外だった。コトネさんがアポロさんに回復魔法をかけている……あ。


「回復系って試したっけ?」


「ああ、そういえば。全部試すって言っていたのに忘れてたね……確か飛ばすタイプのがあったはず……?」


 そういう事で、アポロさんの回復を中断してもらう。モモが試したものが軒並み駄目だったから魔法は駄目だと思っていた。モモは回復系だけ使えないのは時々忘れそうになる。

 そしてコトネさんに試してもらったところ、蝶はそれを避ける様にひらりと動いた。


「……避けたよな?」


「避けたね……」


「も、もう1度やってみます!」


 2回目は、避けられなかったのか軌道上にいた内の1匹に当たった。一瞬動きが止まり、すぐまた動き出して離れていった。当たりだな。うわー、そういう展開かあ。


「けどここからどうするんだ?」


「当たりはしたけど捕まえないといけないからね……」


「ど、どうしましょうか」


「まあ近くに来た蝶に魔法を使って囲むとかぐらいじゃない?」


「そうですね、やってみます」


 そういう事になり、試してもらっている。だが、蝶というのは捕まえにくい。ただの蝶なら触れているであろう距離であっても、魔法を使おうとした途端、ひらりと飛ぶ方向を変え飛び去ってしまう。しかも魔法を飛ばした時とは違い、他の個体も離れてしまうので、やり直すのに時間がかかる。


「何よりの問題は俺達が全く役に立たないという事だな」


「集めようとしても干渉出来ないからね……見守るしかないよ」


 しかし捕まえようと苦心しているコトネさんを見ているだけというのは中々に気まずい。何とも言えない雰囲気の中約10分、コトネさんが捕まえる事に成功した。


「や、やりました!」


「早く籠の中に……!」


「は、はい!」


 コトネさんが蝶を急いで木の籠の中に入れる。蝶はその籠からは出られない様で、コトネさんが魔法を解除しても逃げることは無かった。


「お疲れさま」


「はあ、何とかなって良かったです」


「いや本当に……1人に任せるのはね」


「……あなたが使えれば良かったんですがね」


「出来ない事をやれと言われてもねぇ」


 とにかく、コトネさんの尽力によって、お題は達成出来た訳だ。次のお題を確認しよう。


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