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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第十三話 格上戦闘ジンクス


「まさか一目散に鞘を狙ってくるとわね……大体みんなそこまでしてこないんだけど」


「ははは……当たり?」


「当たり当たり、本当に当たり。結構困ってるよ……割と伝説通りだから予測されやすいからね」


 纏うオーラが弱々しくなっているから弱体化したのは間違いない。詳細は結局分からないが、これでリジェネだけでも消えてくれれば大分マシになる。


「まあ、それで勝てなくなった訳じゃ無いんだけど……鞘を取り返せば元に戻るし」


「そこまで楽観的じゃないですよ……!」


 改めて刀を構える。鞘は刀の鞘の横にさしておけば一先ず大丈夫。固定出来ないから要注意だが。どちらにせよ、力負けはしているので、この状況の内に決着をつけないとな。


「【ディケイブースト】」


「くっ……ふっ!」


「チッ……バフも下がってます?」


「……さあ、どうだろう、ねっ!」


「おっと」


 スキル込みで攻撃したとはいえ、先程よりも押し込められた気がする。鞘を奪った効果は思っていたよりもあったみたいだ。しかし、下がったと言っても、まだ……1.5倍ぐらいはある気がする。それでも相当だな……やってらんねぇや。このまま攻め続けていれば避けるにも限界はあるはずなんだけど。


「やべっ」


「このまま耐え切りたいんだけどね……!」


「そうはいかない……としたい!」


 思っていたよりも体勢が悪く、下に押し込まれてしまった。刀を両手で支えるが、このままでは押し潰される。ええっと……こうしてみよう。


「とりゃ!」


「後ろに下がっても、って、え!?」


 横向きの大きめの足場を作り、思い切り蹴る事で後ろに下がる。無理矢理だったのでそこまで距離は取れなかった。イプシロンさんはすぐさま追い詰めようとしてくるが、まだ残っていた足場に引っかかった。大量にMPを注ぎ込んでおいて良かった。数秒経っても残っているし、透明なおかげもある。


「【刺突】!」


「ぐっ……!!」


 その隙を逃さず急所を狙うが、ここでもステータスの差が災いした。反応が速く、横に避けられ成果は左腕1本だった。

 こういう手は初回しか効かないのに……まさか避けられるとは。腕1本獲れただけマシだが……不満が残る。


「あ、危なかった……!いやびっくりしたよ。それ、直接空中歩行ができるんじゃなくて、1行程挟むんだね」


「いやあ、そのまま刺されていれば良かったんですけどね……」


「結構ヒヤヒヤしたよ。こんなのは久しぶりだ」


 足場を作らないといけない事を見抜かれたか。まあ情報はあったし、引っかかった事から推察するのは簡単か。他にスキルも使ってなかったからブラフもかけられないし。そういうものと分かっていれば、動く前提が全く違ってくるから、2度は通じない。

 【貫牙剣】の残り時間も大分少なくなってきた。そろそろ不味い……!


「っ!【朧流し】、【刺突】!」


「甘いよ!」


「っとぉ!」


 イプシロンさんの袈裟斬りを受け流し、反撃する。しかし、随分と雑な攻撃になってしまったせいで、難なく躱された。カウンターよろしく剣を返してきたが、ギリギリ目で追えたので、鼻先を掠めながらも体を逸らして避ける。そのまま刀を振るが、力負けが全く入っておらず、逆に押し返されてしまった。


「くっそ……」


「はあ危ない……そろそろ切れそうなんだけどな……」


「やっばいな」


 流石はトップクランのリーダーだなあ。にっちもさっちもいかない。【貫牙剣(アウラ)】は後40秒……どうすっかな。


「【フラジャイルクイック】……【ディケイブースト】、【抜刀】!」


「またか、通じないよっ」


 似た様な攻撃をイプシロンに仕掛け、そして案の定弾かれる。そのまま足場を作り上へ飛び上がって向こう側へと移動しようとするが、予測していたのか剣を振り上げ攻撃してきた。


「【朧流し】」


 その攻撃を受け流しながら、体を捻り着地。


「【刺突】」


 スキルの連続使用、SPがゴリゴリ減っていくが仕方ない。イプシロンさんは剣で受けたが、こちらの勢いに押され、後ろへ下がった。このまま押していければ……あれ、スキル込みだとしても何で押せたんだ?あ、オーラが。


「【セイバー・カルミネイト】!」


「ぐう………!」


 こちらが攻撃する直前に、オーラが消えていた。そして、代わりのスキルによる攻撃……エクストラスキルを使っている時にスキルを使えないのは確定なんだろうが、今知った所で意味がない。その一撃によって左半身が消し飛んだ。騎士団長の時といい、威力がやばいな。

 しかしまだ動ける。刀を逆手に持ち、イプシロンさん胴体目掛けて突き刺す。出来れば心臓の辺りをさしたかったが、そこまで体が動かなかった。


「うっ……【スラッシュ】!」


「ぐぇ」


 そのまま押し込もうとしたが、半身が欠けたのでまあ力が入らない。イプシロンさんの攻撃はスキル込みでも大分弱々しい一撃だったが、俺の首を刎ねるには十分だった。まあ首だけではどうにもならない。

 そのままデスペナを受ける事はなく、次の瞬間には体は元通りになっていた。ウィンドウを確認したが、HPや耐久値、スキルのクールタイムまで全て戦闘を行う前にリセットされていた。ここまで配慮されているのはありがたいけど……負けてんだよなあ。


「あー、負けた!」


「はあ、何とか勝てたよ……ヒヤヒヤした。あ、鞘返してくれる?」


「ああ、どうぞ」


「ありがとう」


 そういえば、最後まで腰に鞘を刺したままだったな。イプシロンさんは鞘に剣を収めた後、いつもの剣と取り替えていた。


「いや流石に強かった……」


「まあプレイ時間とか色々あるから負ける訳にはいかないよね。何より目的が目的だから」


「はあ、しょうがないか……負けたっていうのやだなあ」


「あはは、頑張ってね。あれは貰うよ?」


「どうぞー」


 見えない壁も消えていたので、イプシロンさんは部屋の奥にある球体を取りに行った。

まあ今度機会があればリベンジだな。とりあえずその時には4次職にはなっておきたい。

 何気無しに、鉄格子の方を見てみると、ショウとエコさんがこちらを見ていた……あ、開いた。


「やあ」


「……どの辺りから見てた?」


「コウの半身が消し飛ぶ辺りから」


「あー、結構後半……ならまだ良いけど、よりにもよってそこからか」


「まあ善戦した方でしょ。イプシロンさんのあの状態相手に腕1本取った上であの結果なら中々だよ」


「負けてるのにそう言われてもなあ」


「まあ3次職と4次職の差は大きいからね」


「兎にも角にもレベル上げか」


 ステータス2倍に、リジェネは反則だって。他のスキルが使えないのは誤差にもならない。


「そういえば、タンク2人で来たのか?」


「そうそう、モンスターが面倒で面倒で」


「タンクなら罠に引っかかった方が楽だろうからなあ……あ、コトネさんも来た」


 次に来たのは、コトネさんとアリサさんだった。その後は続々と集まり、心配だったクルトとアゲハはそれぞれモモとクローナと一緒だった。生産職とNPCがセットか。最後の2組だったから、落ちた配置も調整されていたのだろう。問題なのは、イプシロンさんのパーティメンバー2人が1組になっていた事だ。もしこの2人が最初に着いていたら問答無用で奪われていたという事だな。チャンスがあっただけマシか。後から来たメンバーに事情を話したら、少し残念そうな顔をされたが、まあしょうがないという事になった。あー、ありがたい。


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