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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第十一話 2人組


「とりあえず調べてみます」


「こっちもやっておくよ」


「頼んだ」


 恐らく1番奥であろう場所にたどり着いたのだが、そこは特に何も無い空間だった。100人ぐらいは余裕で入れそうな広さがあるが、空っぽだ。ヒイロさんとモモが色々調べてくれているが、どうなるやら。

 ここに来るまでの道は全て探索したから見落としがあったりはしないはず。そもそも特に意味の無い分かれ道ぐらいしか無かったからなあ。

 不自然な点といえば、年月が経っている感じはするが、やたら小綺麗な感じがする事か。現実的にどうなるのかは知らないけど、普通は砂埃とか、苔的なのが生えたりするもんじゃなかろうか。

 まあ調べるのは2人に任せるしかないので、俺を含め待機している。適材適所だからね、しょうがない。する事が無い時間があると罪悪感が生じるのは何故なのか。


「……何か歪だねぇ?」


「どうした?」


「いや、下が何か継ぎ接ぎだらけみたいでね」


「はあ」


「しかもそんな感じのが範囲外まで続いているみたいだね」


「どういう事なんだか……」


「……多分移動するみたいですね。床の傷のつき方が全部バラバラでした」


「そうなんだ。じゃあ何かあるのは確定かな」


 ヒイロさんも何かあると分かった様だが、結局何が起こるのかは分からないらしい。罠なら俺達全員がこの空間に入っている時点で作動しているだろう。床が深い規模で移動するとして、どうなるのか。下に落ちるとか?


「もうちょっと探してみます」


「宜しくね」


「こっちはもう無いね。魔力が関わっている物は無いし、細かいのはヒイロとやらの方が向いてるだろうから」


「そうか、ありがとう」


 物理的な仕掛け、特に細かいというか小さい物はヒイロさんの方が向いているのか。広いから時間がかかるのは当然なので待っていると、何やら見つけた様で、イプシロンさんを呼んでいた。


「どうした?」


「ここですね」


 呼んだのはイプシロンさんだが、どうぞとの事なので一緒に周りに群がる。


「それで?」


「とりあえずここをずらすとスイッチの様な物が……押すとどうなるかは分かりませんでした」


「まあ……罠という線も無くも無いけど……」


「これ1つだけ?」


「そうですね」


 この広い場所で1つだけ、しかも間違って押されない様に床のタイルの隙間、そこをずらして指が1本入るかどうかの穴の奥にあった物だ。罠というよりはただの仕掛けという事だろう。

 問題なのは何が起こるか分からない事だ。先が分からないんじゃ未知すぎて尻込みする。


「うーん……ショウ君と、アポロさんどう思う?」


「試してみるしか無いかと」


「私もそう思います」


 イプシロン側の何人かが驚いている。そういえばアポロさん小声だったっけ。最近は慣れたせいなのか、少し声量が大きくなっていたから普通に聞き取れていたんだな。

 モモとクローナは1歩下がって俺達の様子を見ている。ここはNPC然としているのか。古参である2人の意見もあり、ここは押す方向で進む様だ。まあそれ以外に方法は無いから当然だろうけど。


「……じゃあ、押しますね」


「うん、宜しく」


 ヒイロさんがそのボタンを押した。その数秒後、床がズンと鈍い音を立てて揺れ、その瞬間全員の下にある床が消えた。


「うわつ!?」


「きゃっ!」


 想定はしていたが、本当にくるとは。それぞれ1人分では無くそれなりに広く穴が空いたせいで端に手をかける事も出来なかった。【空走場】……いや俺だけ助かっても意味が無い。それにバラバラになったからどこにいくかも分からない。

 大人しく下へと落ちていったが、途中で軌道が曲がった様な感じがした。確実に何処か特定の場所に落とされている気がするな。そのまま30秒程落ちた後、横に放り出された。そのまま何処かの部屋に出た様で、溶岩とか針でいっぱいの部屋に出されなくて良かった。


「うわっ」


「ぐえっ」


 部屋を確認しようと頭を上げたら、同じ様に飛んできた誰かとぶつかり下敷きにされた。誰かと思ったらイプシロンさんか。


「ご、ごめん……!」


「い、いや大丈夫です……これは不可抗力だろうし……」


 流石に落とされてきたのだから、事故だ事故。幸いダメージは無かったのだから、気にしすぎない様にしよう。


「それで、ここは何処なんだろうね?」


「まあ大体下に落ちてきたはずですけど……ああ、連絡とってみるか」


「そうだね、使えるかな……」


 他の人が落ちてくる気配は無いので、結局ここには俺とイプシロンさんの2人だけだった。モモとクローナは無理だが、他はプレイヤーなので連絡は取れるはずだ。早速それぞれウィンドウを開いて試してみるが……出来なかった。


「あれ?」


「コウ君の方も出来ない感じ?」


「はい……バグはまあ、無いか。制限かかったか」


「順当といえば順当だよね。あ、外部メールも開けないや」


「え?それ大丈夫なんです?」


「うん、規約に書いてあったし。ログアウトは出来るから抜け道が無い訳じゃないけど……まあそこまでして連絡を取る必要も無いしね」


「仕様かあ」


 規約に書いてあったのなら仕方が無い。外部メールが確認出来るゲームは未だ少ない方だからそういうものだと思えば普通か。正当に攻略していくしかないか。連絡が取れないのは合流させない為かな?じゃあ、しばらくは2人で行動だな。


「うん、確認、そういう事……じゃあ」


「……どうしました?」


「いや一応他のプレイヤーにかけられるか確認をね。出来たからやっぱり仕様だね」


「あー、そうですか。どうもです」


「いやいや。待たせておいて何だけど、進もうか」


「いや待ったと言える程時間かかってないですけどね」


 とりあえず2人で道なりに進んで行く。道中はモンスターはいたが、罠は1つも無かったので、特に心配も無く進む事が出来た。特に強かったりもせず、アタッカー2人ならどうという事は無かった。そして道も入り組んでいたりもせず、ほぼ1本道に近かったので迷う事も無い。

 結局他のプレイヤーと会う事も無く、1番奥であろう空間に辿り着いた。殆どは下に落ちた時にいた部屋と同じだったが、1つ違いがあった。奥の方に台座の様な物があり、その上にはいかにもな感じの手の平大の球体が鎮座していた。


「アレだね」


「アレですね……でも1つか」


「うーん、この場合はどうするんだろうね。とりあえず……中に入ろうか」


「それしかないよな」


 部屋の中へと入ると、勢いよく鉄格子が落ち、閉じ込められてしまった。しかも部屋の中の一部の床がせり上がり、舞台の様な物まで出現した。


「何だ……?」


「これは……あ、看板」


 床のタイル1枚分がスライドして看板が出てきた。古ぼけた遺跡の割にギミックはハイテクだな。よくよく考えたら雰囲気あってねぇな。

 看板にはこのギミックに関する事が書いてあった。まとめると、2人で決闘行い、勝者が奥にある球体を獲得出来るらしい。決闘方法は戦闘で、舞台の上で行う。相手をデスペナにする必要は無い様だ。お互いに決着を認められればだが。まあ下手にごねられたら首でも刎ねれば良いのか。ただその戦闘で起こったダメージやら耐久値の減少、アイテムの消費まで元通りになるらしい。なのでデスペナになってもすぐここにリスポンするそうで、揉め事が起こる可能性も無きにしも非ずか。イプシロン相手ならそんな事は無いよな。それにしても、全部元通りとは至れり尽くせりだな。


「道中がぬるかったのは、このギミックがメインだからかな」


「そうだろうなあ、まあクルトとかにならなくて良かった」


「それは流石に無いと思うけど……僕達になったのは、偶然っぽいね」


「そして、組み合わせの変更も出来ないと」


 あの鉄格子は破壊不可だろうなあ。【貫牙剣】で試してみたいが、イプシロン相手にそれ無しはキツいのでぐっと堪える。


「まあやるしか無いね。手加減はしないけど」


「それはそうでしょうね……勝たないとな……」


 さて、格上相手に勝てるのかな。負けるとしても、さっさと済ませてしまえば醜態を晒す心配は無い。あー、駄目だ、負ける前提の思考になってる。イプシロンさん相手ならエクストラスキルも出し惜しみ無しで使えるのは幸いか。


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