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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第七章 海だ!島だ!雲外蒼天。
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第二話 謎の女将


「着きましたけど……」


「完全に高級旅館ですね……」


「湯気が立ってる所が……まさか温泉か?」


 指定された島に着いたは良いが、その島には宝探しには全く関係無い様な光景が広がっていた。ここが拠点になるのだろうけど、ここにいるプレイヤー全員は賄えないだろうけど、どうするんだか。

 船着場の整備してあったし、拠点になるのは間違い無いだろうが、一部のプレイヤーは他の島へ向かったみたいだ。流石に意味が無いと思う。


「それにしても、ここからどうすれば良いんでしょうか?」


「進むならあの門だけど、閉まってるしね。まさか壊すのは正解じゃ無いだろうし」


「いや確実に駄目だろ……」


「従業員の人とかいるはずですよね」


「中には結構いるみたいだけどねぇ」


「そうなのか」


 中に人がいるなら、営業するはずだけどな。旅館へ続く道は門で塞がれているので、そも先に進めない。開く気配も無いし、数百人いるプレイヤーは待ちぼうけを食らっている。他に道は無いし、他に行こうにも説明が全く無いので動けない。告知は場所と時間しか書いてなかったからな。

 それから5分ぐらい経った頃、門がゆっくりと開き始めた。中から出てきたのは灰色の長髪を纏めた、和服姿の女性だった。ここにいるプレイヤーは次はどう動くのかと静まり返っている。


「探索者の皆様、当旅館にお越し頂き有難う御座います。この旅館の女将を務めます、アシハと申します……まあ殆どの方は宝探しの方が主目的でしょうが」


「女将だってさ」


「綺麗な方ですね」


「何者なんだか」


 女将が出てくるのは良いとして、宝探しにまで言及するとは。というか宝探しで名前固定されてるのな、まさかそのまんまとは。そして女将は続けてこう言った。


「宝探しについては、まずはパーティ毎にお部屋に案内させて頂きます。鍵と案内状をお渡ししますので、そちらにお向かいください。皆様全員分の部屋はご用意しております。宝探しの為のヒントは、部屋の中に置かれている事でしょう。宝は複数あるそうですので、どの探索者様も手に入れる事自体は可能との事です」


「複数あるのか」


「しかも、全パーティ分とは」


「プレイヤー同士の潰し合い対策ですかね?」


「けど、何故伝聞系なんでしょうか」


「そうそう、私どもはこの場所を提供して貰った身に過ぎませんので、宝探しには何もしらされておりません。なので、関する事を聞かれても何も分かりませんので悪しからず……ではご案内させて頂きます」


 女将がそう言い手を鳴らすと、ショウの頭上に髪と鍵が落ちてきた。他のプレイヤーの所にも落ちてきているので、これはパーティリーダーにか。あれ、今組んでるパーティで自動で登録されるのか?野良で組んでる所は面倒だな。

 受け取ったパーティは、次から次へと門に傾れ込んだ。予想通りだが、詰まるのは目に見えてるので、最終的には1つの長い列になった。群がるより整頓した方が、結局スムースになるんだよなあ。

 俺達はいた位置が良かったので、中盤より少し後ろぐらいで済んだ。まあ門を通るだけなので列の進みは早い。数分もすれば門の所まで辿り着いた。門では女将が一々プレイヤーに向かって頭を下げていた。丁寧だな。

 何者なのかは知らないけど、旅館という体は守るのか。色々と謎は多いけどな。俺達が門を通ろうとし、女将も礼をするのかと思ったら俺達を確認した途端狐につままれた様な顔をした。


「あ、あの?」


「あっ、いえ失礼しました。ようこそいらっしゃいました……」


「はあ……」


 呆けたのに気づいたのか、慌てて頭を下げる。一体どうしたんだか、お陰で目立ってしまった。こちらも想定外というもので、驚いてしまった。後ろにいるプレイヤーも訝しんでいるし、目立ったな。その数は少ないのでまだ大丈夫だろうけど……面倒な事が起きないと良いんだが。


「何だったんだ……?」


「モモさん達でしょうか?」


「いや、目線はコウ……というより僕達全員な気がするけど」


「覚えが無いねぇ」


「私は人と会う事があったとは思えませんし」


「うーん、理由が分からないな」


 心当たりは山程あるが、どれかは分からない。それにたまたまかもしれないし、他のプレイヤーもそうなったら可能性もある。まあ深く考えるだけ無駄かな。とりあえず今は宝探しの事を考えよう。その内分かるかもしれないしな。


「それで部屋の方はどうなんだ?」


「あー、結構歩くみたいだね。この地図から察するに、ここやたら広いみたいだし」


「……島の大きさに見合わない程広くないですか、その地図」


「確かにそうですね。はみ出しそうな感じですけど……?」


「ああ、これ魔法で拡張してるね。上手い事かけてあるよ。これだけ広くするにはそれなりの技量も必要だろうに」


 魔法なのか。外から見ても中々の大きさだった建物に、それに魔法をかけるのもここまで広くするのも凄そうだ。こういうのはプレイヤーでも使えるのかとショウに聞いてみたら、小規模のものでもプレイヤーは使えないみたいだ。まあ今後か、そもNPC専用か。どうやって維持しているんだろうな?


「モモは出来るのか?」


「うーん、可能だけど維持が面倒。そもそも性に合わない」


「あなたは派手なのが好きですからね」


「……否定する理由が無いねぇ」


「やろうと思えば出来るんですね……」


 する事自体は何でもなさそうに出来ると言った。流石はモモと言うべきか……魔法に関しては回復魔法以外不可能は無いんじゃないだろうか。それにしても、本当に広いせいで自分達の部屋まで結構かかりそうだ。






「……」


「どういう事なんだろうね?」


「他のプレイヤーから視線を向けられるのは面倒ですね」


「一体何故なんでしょうか……?」


 客という体のプレイヤーが雪崩れ込んだ事により、従業員らしき人が慌ただしく動いている。たまにすれ違うのだが、俺達に視線を向けた途端一瞬硬直するんだ、女将の様に。しかも、俺達と同じく移動しているプレイヤーもいるから目につくんだ。

 流石にすれ違う従業員全員が同じ事になると、偶然で片付けられない。着実に何かしらのフラグが立っている気がする。宝探しの最中に事件は起きないでほしいなあ。

 その後は何とか部屋へと辿り着いた。入ると中は、この人数でもゆったりくつろげそうな、畳の敷かれた部屋だった。


「凄い広いですね」


「部屋も広げてるんだろうな……」


「全部やっているなら凄い規模だね……」


「そういえばアポロさんとクルト君とアゲハちゃんは違うパーティなのに1つに纏められたね?」


「そうですね……という事はクランの人達はそれで1つ……?」


「いやそれはいくら何でも差が。それだったら部屋はどうなるんだ」


「大広間とか?」


「想像すると何かシュールだな」


「とりあえず、ヒントを確認しましょうか!」


 そうそう、ヒントが置いてあるのだから早く確認して動かないと不利になる可能性もある。部屋の真ん中にあるテーブルの上には、茶菓子と1枚の紙が置いてあった。それを手に取り裏返すと、そこに書いてあったのは「東北東、赤い木の実」だった。何か思ってたのと違う。


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