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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第二十八話 もろもろ解決


「どうする?他の所に行く?」


「流石に行かねぇよ……」


 一応HPとSPに余裕があるとはいえ、少し疲れた。2体残っているとしても、どちらも戦闘は終盤だろうし、流れも出来ているだろうから邪魔になるだけだ。それならここで休んで、次の事に対応出来る様にしておいた方が良い。

 そして数十分後、残った2体の龍も倒された事が確認された。更にはゲームアナウンスにより龍のものと思われる素材が各プレイヤーに配られた。


「結構色々あるな……」


「……んん?コウ、ちょっとリスト見せて」


「え?ああ……」


 ショウが気になる点を発見したのか、俺が貰った物を確認したいと言ってきた。断る理由は無いので、自分が見るのを止めショウにウィンドウを見せる。少しした後、何かに納得したのか頷いた後、1つの玉を取り出した。


「何だそれ」


「真珠だってさ。自分で言うのも何だけど、多分活躍したプレイヤーにじゃない?」


「ああ、俺の方にもあったわそれ」


 ショウとツネさん……まあ活躍したと言っても差し支えは無いな。それならアポロさんやアリサさんも貰っているだろう。俺は……まあ1プレイヤーでしかなかったから、しょうがないか。


「それ何に使うんだ?」


「さあ?今の所換金するぐらいしか思いつかないけど。何かに使うのかなあ?」


「後で詳しく鑑定してもらうか」


 まあ金にしかならなかったとしても、相当な金額になるだろう。そうして休みながら報酬を確認していく。少し経つと、いきなり地面、いや貝か揺れ始めた。


「えっ!?」


「どうした?」


 揺れ始めてから少し経った後、ショウが何やら連絡を受け取った様だ。少し離れた所にもいるアリサも同じ様に驚いている。そして少し話をした後、アリサさんが周りのプレイヤーに向かって大声で話し始めた。


「皆さん!この貝沈み始めているそうです!結構早いみたいなので急いで退避して下さい!」


「ええ……」


 沈み始めているのか、それはやばい。急いで身支度を済ませる。


「とりあえずクルト達と合流……どこにいるんだ」


「僕連絡取るよ。アポロさん達連れてきて!」


「了解」


「あっ、じゃあ2人とも気をつけてな」


「あ、お疲れ様です」


「お疲れ様です」


 ツネさんと分かれ、アポロさんとコトネさんの方へと行く。2人もこちらに向かってきていたのですぐに合流出来た。クルト達の場所を聞いているショウを先頭に、最初に来た方向へと走っていく。連絡を取っていたから、これまたすぐに合流出来た。


「良かったです。すぐに合流できて」


「ああ、とりあえず船に乗ろうか」


 預けておいた船を出してもらい、急いで乗り込む。そして一目散に貝から距離を取る。


「……ふう、何とかなったね」


「こうしてみると意外と余裕あったな」


「まあ安全な事に越した事は無いですし……あ、ほら見て下さい」


 コトネさんにそう言われ、貝の方を見ると完全に沈んでいった。結局死んだのか死んでいないのか良く分からなかったな。龍との関連もはっきりしなかったし。


「けど、死んだから沈んだ様には見えませんね」


「じゃあ生きているのか……結局何が目的だったんだ?」


「さ、さあ……イプシロンさん達が何をやっていたのかは知らないし」


 まあそれは追々聞いていくとしよう。既に貝が沈み、海は平静を取り戻している。しかし、今度こそ霧の原因は排除出来た訳だ。心なしか、霧も薄く……あれ?


「本当に晴れてきてるな……?」


「そうだね……あ、でもこれ以上は薄くならないか。後は時間経過かな?」


「もう群島には行けるのでしょうか?」


「それはまだじゃ……」


 貝が沈んでいったあとは、一気に倍ぐらいの距離を見渡せるぐらいには霧が薄くなった。残りは時間経過で消えていくのだろう……流石に3度目はなあ、2度ある事は3度あると言うけど、まあ大丈夫か。あれだけの規模のレイド戦があったのだから、3度目があったとしたらどれだけになるんだか。そもそも今回は次に繋がる物が無いしな。それに群島の宝探しの件が残っている。

 後はここで海の上で漂っていても意味が無い無いので帰る事にした。貝が沈んでいく様子には興味が無いプレイヤーはさっさと帰っている。中には、泳いでいるプレイヤーもいるが……船無いの?






 さて、翌日。昨日はまだプレイする時間はあったが、特にやる事も無かったのでログインする事は無かった。朝に翔斗から来た連絡によると、群島の方……仮に夏イベ第2部と名付けるとしたら、そちらは明日の10時に始まるそうだ。公式サイトを確認してみたら確かにそう書いてあった。一夜経ち、霧も完全に晴れた様で、夏にふさわしい海の景色が広がっているとか何とか。ようやくアゲハが喜びそうだな。いつ泳ぐかは知らないが、まあ機会はいくらでもあるか。


「そういや、バックストーリーとか分かっているのか?」


『うん、聞けた聞けた。まあ鑑定結果とか色々繋ぎ合わせたものらしいから、考察に近いものらしいけど……』


 その考察とは、見つけたでかい真珠はあの貝の物だったらしい。しかし、俺達が地上で見つけた様に、なくしてしまった物なんだとか。なのでそれを取り返す為に霧を出し、船とスケルトンの幻影を作り出して探していたのだったとか。最初から大規模じゃ無かったのは、そのぐらいで大丈夫だと思ったのか、それとも仕様かな?日誌に関しては、もちろんフィクション……フィクションの世界の中でフィクションというのもアレだが、あの貝が真珠を求める思念が具現化した結果と言える物と考えているらしい。全てが幻影だったのなら、スケルトンのドロップが何も無かったのは頷けるな。魔法じゃ無かったからモモが気づかなかったのもしょうがないし。

 そして、真珠には一種の共鳴作用があったのか、5つ揃った事によりそれが発揮されて貝が気づいた。そうして、あの船団によるレイド戦が始まったと言う訳だ。


「じゃああのまま真珠出して放っておけば何とかなったのか?」


「まあ、それ以上進んでこなかった可能性はあるけど……どちらにせよ勢いで村の建物が酷い事になったんじゃない?」


「あー、そうなるか……」


「あの時の判断としては迎撃以外に無かっただろうし、まあイベントの流れとしては順当でしょ」


「結局は、NPC側にほとんど被害が無かったから良いのか」


「そうそう」


 そもレイド戦としては上々の結果だったはず。流れ矢が当たったりしたそうだが、それはどうにかなる範囲だし、最も被害を受けたあの壁は、生産職系プレイヤー有志による物で、費用は個人負担だそうだ。まあ作った本人達的には、良いデータが取れたとか何とか言ってるらしいが……まあ本人達がそう言っているなら別に良いよな。

 後は詳しく検証していないので、不確かみたいだが、2回目のレイド戦の時は貝がどんどん村に近づいていた様で、知らぬ間に村滅亡フラグが立っていたとか。怖いなー、倒せたから良いものの、時間がかかりすぎていたらどうなっていたか。龍に関しては、ある意味貝の1部と言って差し支え無いらしい。まあ貝自身というか、端末の様な感じで、スケルトンよりは貝本体に近いと言うのが1番近いとか。戦っている時に鑑定しまくっていた猛者がいたそうだ。

 塔以外の建物モドキに関しては、全部貝の老廃物らしい。まあ貝殻の粕みたいな物なので、老廃物と聞くと想像するアレよりかはまだ精神衛生的に優しい。老廃物でどうやってあんな町みたいなのが出来上がるだかと思ってしまうが、そこはファンタジーで片付けるのが1番早い。突っ込んだ所で大した価値は無い。

 そして、イプシロンさん達が5つの真珠を塔の天辺にある台座に戻した事で、龍が弱体化、そしてその龍が倒された事により、貝は大人しく元の居場所に戻っていった……という事だ。

 まあ事の顛末としてはそんな感じらしい。次は宝探しか。経緯も方式もまだ分からないが、せいぜい楽しもう。


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