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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第二十七話 端役、『盾王』


 龍が向いていない側のアタッカーの集団が攻撃をする。タンクはアタッカーに向いたヘイトを誘導し、なるべく攻撃の方向を分かりやすくする。その後ろにいるアタッカーは、一旦逃げ、攻撃が止むと再集合。大概はポーションで済むが、重傷だったりするプレイヤーは、少し離れたヒーラーが集まる場所へと移動する。

 まあこんな感じで戦闘を進めている。というか、基本的にこれがベターだと思う。今更変なギミックは無いだろうし、これを繰り返していけば十分に倒せるはず。実際普通にダメージを受けているから大丈夫なはずだ。アタッカーが4つに分かれているのと龍のサイズが大きいおかげで、全員に攻撃するチャンスがあるのも良い。

 ほぼ安全圏にいるコトネさんはもちろん、ショウもアポロさんも生きているし、俺も死んでいない。この状況で死ぬのは間抜けに近い。【貫牙剣(アウラ)】も【空走場(アハルテケ)】も『反剋』も使っていない。使えば目立つし、折角攻撃のルーティンが定まってきた所に水を差す事になる。人の目が多いので、顔を覚えられると面倒だ。『反剋』に至っては、対象外だった。こんな時に使いたい魔法なのだが、まさかの対象外とは。相手が強大すぎて威力がとんでもない事になるから対象外にしたのか、それともちゃんと法則性があるのか。データがまだ少ないから察しようが無い。まあ使えないものは仕方がない。

 『反剋』といえば、アポロさんも同じ魔法を持っているが使っていない。まあこれでアポロさんだけ使えたらおかしいか。それにしても、アポロさんは単独行動を許されている。遠距離攻撃手段があるのは魔法職と一緒だが、DPSが凄い事になっているからヘイトの稼ぎ方が異常で、1人で1つの集団扱いにしても問題が無くなっている。攻撃も十分に避けられているから、タンクが補助する必要も無い。

 何かもう1人だけ違うゲームをしているみたくなっている。まあ機能している以上、気にしているとこっちが被害を受けかねないので、龍の方に集中する。最初の時みたいに、アポロさんの攻撃に気を取られて逃げ遅れてダメージを受けるプレイヤーがちらほらいた。

 【ディケイブースト】を始めとした使いやすいスキルを使って、龍にダメージを与えていく。こういう時は、戦士系統が1番目立つ。『侍』は、巨大モンスター相手だと、大分地味になる。まあ盗賊系の方が可哀想になっているが。元々威力の高い攻撃ができる訳でもないので、ちまちまとした攻撃にしかならない。

 いつの間にか、5カ所の内2か所が討伐されているらしい。ここは時間が経ち大分弱っているみたいだが、それでも死ぬ気配はまだ無い。


「来るぞー!」


「またこっちか」


 俺がいる集団に、2回続けて攻撃が来た。連続攻撃は見るのは初めてではないが、こちらに来るのは初めてだな。それにしても、攻撃の頻度が上がった様な。弱ってきたから攻撃パターンが変わったか?まあ攻撃手段が増えた訳ではないので、モーションを良く見ていれば問題無い2回目は……叩きつけか。


「うわっ」


 勢いよく、体を下に叩きつける。思っていたよりも距離を離れていなかったせいで振動がこちらへと来た。毎度思うが、頭とか揺れないのかな。まあ自分の攻撃で混乱するレイドモンスターは間抜け臭い。

 それにしても、下の貝はやたら丈夫だな。これだけ攻撃を喰らっているのに傷1つ無い。しかし、攻撃のチャンスだ。体全体が近いからほとんどのプレイヤーが攻撃に回る。叩きつけの攻撃は、龍が元の体勢に戻るまで10数秒の隙が出来るから避けた後は攻撃し放題だ。もちろん俺も参加するが、龍の頭の方へと黒い斬撃が飛んできた。これは……アポロさんだな。ついに『黒炎』を使ったのか。この10数秒で決めにかかる気か?

 与えるダメージは跳ね上がったが、危険を察知したのか龍がいつもより早く起き上がった。アポロさんの場合、起き上がっても攻撃は届くだろうが、ヘイトが完全にそちらに向いているのでやばい。ブレスを吐こうとしているのか、何かを口の中に溜めるエフェクトが出ている。


「ブレスか……?」


 今までに無かったモーションだから……特大タイプか?今はアポロさんが動けないから、万事休すかと思ったが、アポロさんの前にヘイト担当のタンクが並び始めた。そして並び終わると同時に、龍から特大のブレスが炸裂した。当然立ち止まっているタンクとその後ろのアポロさんは巻き込まれたが、数秒後には何人か欠けているものの、ほとんどのタンクとアポロさんは無事だった。人数がいたとはいえ、あれを防ぎきったのか。ショウを始め、4次職が数人いたみたいだし、スキルでどうにか出来るものなのか。

 そして、またアポロさんの攻撃が再開した。向こうでは、アリサさんを始めとした魔法職が何やら準備をしている。水龍も、一瞬空いた間に攻撃しようとしたが、それはアポロさんの次の攻撃の溜めだった。特大の黒炎の斬撃が飛び、アリサさん達からの方からも特大の炎球が龍へと直撃した。


「ギェアァ……!!」


 相当なダメージを受けた様で、龍がふらつく。しかし、まだ死にはしない様だ。我先にと、ほとんどのアタッカーが龍へと群がり、攻撃を仕掛ける。そして約30秒後龍は力無く倒れ、死亡した事が確認された。周りのプレイヤーは勝鬨を上げた。

 俺達の所は3番目だが、まあ討伐出来ただけ良いだろう。龍の死体は消える事なく残るみたいで、まだ何か起こるのだろう。とりあえず終わったので、ショウの方へと行く。『黒炎』を使ったせいで瀕死のアポロさんの所には、知り合いという事でコトネさんが向かっている。まあコトネさんなら十分に何とかなるはずだ。


「おーい、ショウ」


「あ、コウ。お疲れ様、そっちにいたんだね」


「お疲れなのはそっちの方だろ……ええと?」


「ああ、ツネだ。よろしく。『盾王』だ」


「コウです。ジョブは『侍』」


 ショウと話していたプレイヤーと挨拶をする。失礼な感じ、パッとしない装備をつけているが、先程はショウとほぼ同じ位置に並んでいたから相当なプレイヤーではあるのだろう。


「ツネさんは最初に『盾王』になったプレイヤーなんだよ」


「へえ、そうなのか」


「いやいや、たまたまその時に丁度よく時間を取れただけでな。イプシロンのおかげもあるし」


「って事は……」


「ああ、ポールスターの所属だよ」


 そう言って後ろを向くと背中にはポールスターのマークが入っていた。それなら色々と納得だ。1つ疑問が残るけど。


「じゃあ、何でここに?」


「そりゃ俺より良いタンクがついてるからな。俺はアリサの方につくようになってるから。就いたのが最初ってだけで、特に大した事ないからな、あっはっは」


「まああの人の方が器用だよね」


「ええ……」


 ショウまでそう言うのか。2人して笑っているという事は、本当に大した事では無いみたいだな。またわざわざ話題にする事じゃないから頭の隅に入れておこう。


「ああ、あれ?【シールダー・カルミネイト】、『盾王』のスキルでね、許容上限はあるけど1度だけ攻撃を防ぐんだよ」


「集団でやっても、いくらか犠牲が出たからな」


「そうなのか」


 【シールダー・カルミネイト】か。確か騎士団長が使っていたのが【セイバー・カルミネイト】で、共通点があるな。じゃあ『刀王』も……いや、どう訳するんだか。それに今までのスキル名と違いすぎるしな。まあ全部が全部が全部という事でも無いだろう。

 残りの2か所はまだか。休憩しておこう。


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