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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第一章 少年は舞台へ、歯車は揃いゆく
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第十七話 王都へ


「だ、大丈夫ですか!?」


「ギ、ギリギリ生きてる……」


 激突の直前でスキル『朧流し』を発動することができた。【貫牙剣(アウラ)】とシナジーしたのか、かなり吹っ飛ばされたが割とダメージを抑えられたおかげでギリギリ生きている。駆け寄って来たコトネさんが回復魔法をかけてくれたおかげでHPが6割ぐらいまで回復する。いや情けない所を見せてしまった、おのれクワガタ、なます切りにしてやる……素材が駄目になるか。行動パターンはなんとなく理解した。レッツリベンジ!あ、コトネさんサポートお願いします。


「ギチチチチチチ!!!」


 鳴き声を上げながらこちらへと突っ込んでくるクワガタを避けすれ違いざまに『貫牙剣』の効果を受けた刀で足を断ち切る。たかが6本の内の1本だがされど足1本、クワガタはバランスを崩し、クワガタの意図しない形で大木へと激突する。チャンスとばかりに俺はクワガタに走り寄り、残った右足2本を斬って行く。よし、これでまともに動けまい。あちらもそれを悟ったようで暴れ回るが先程までと違い、いかんせん動きに精細がない。この状態だと無理をする必要もないので暴れ疲れて動きが鈍ったタイミングで節を狙い攻撃していく。数分も経てばHPが0になったのかエフェクトとなって素材を落として散っていった。意外と簡単に倒せた、というよりはエクストラスキルが強力すぎるのか。


「た、倒せましたね!」


「いや、コトネさんの回復が無かったら死んでたからね、助かりました、ありがとう」


「こ、ここ、こちらこそ!い、今のでレベルも上がりましたし!」


 確かに伊達にボスより強いとなっているクワガタである。こいつ1匹だけでレベルが1上がった。素材も役に立ちそうなものが落ちたし2人で分けても結構うまそうな結果となった。まあもう少しレベルが上がるまで挑戦はしたくないが。もうちょっと安全マージンを確保したい。一応コトネさんにまた回復してもらいそのままフィールドボスの元へと向かう。フィールドボスはフォレストオウル、飛び回りながら羽を飛ばし攻撃してくる梟である。ショウが「遠距離攻撃無くても大丈夫だよ〜」と言っていたから多分大丈夫だろう。大丈夫じゃなかったら文句を言えばいいし。






 ……特に問題もなく倒すことが出来ました。実際羽を飛ばしてくるのは面倒だったが単調だったのですぐ慣れ、コトネさんを守りながらでも刀で撃ち落とすのは簡単だった。中々降りて来ないのはいらついたが【貫牙剣(アウラ)】を発動させた刀を投げつけたら上手いこと脳天に刺さり倒すことができた。刀から手を離したところでシステム的には装備していることになっているからちゃんとスキルが発動するのを利用できた……なんかフィールドボスってどれもちゃんとボスらしい強さのはずなのに今まで戦った3体どれも大した思い出ないんだよな……最初の狼はハムスターのおやつだし、次の亀はエクストラスキルの実験体になったし、今倒した梟は直前にそれより強いクワガタ倒したからいまいち印象が薄い。ま、ゲームを楽しむのにフィールドボスの思い出は必須じゃないからいっか。

 さらば梟、多分君の素材はゲーム内通貨に変わることだろう。コトネさんとフィーアルに到着、その後ドライタルに移動し、クルトに素材を渡して今日は終わりとした。一応クワガタの素材も見せてみたが任せてくれるのは嬉しいがそれならもう少しレベルを上げてからにしたいと言われたのでしばらく箪笥の肥やし状態となった。






「で、どうだったかな、素材集めは」


 ニヤニヤとした面白いものを見るような顔で電話をかけているのは荒北鋼輝の親友である飯田翔斗だ。今日の鋼輝とコトネ……坂下琴音との素材集めを画策したのは何を隠そう、大した計画でもないがこの翔斗である。


『デデ、デートだなんてそんな、クルト君に頼まれた素材を集めてただけですし、コウさんにはレベル上げを手伝ってもらってくださっただけですしございます!』


「いや口調変になってるよ?百合を通して事情は知ってるんだから一々否定しなくても……そもそもいくらゲームの中とは言えリアルの知り合いで2人きりで行動してるなら傍から見たらデートでいいんじゃない?」


 幼馴染である百合に琴音に鋼輝との接点を作れと頼まれ中々良いアイディアが思いつかなかった翔斗だが「Arkadia Spirit」という初心者も興味が湧くようなゲーム、それを丁度鋼輝がやっと始めることを思い出しそれを隠れ蓑に接点を作ろうと思い付いた。だがいかんせん琴音の仲を進展させたいという気力が鋼輝にそれが表向きの理由通りゲームへのものと勘違いしているため一定以上仲良くなる気配がない。


「はあ、あいつ鈍感なわけじゃないはずなんだけど1度納得すると多少不自然でもそのまま固定されちゃうからなあ……百合にも進展せっつかれてるけど、このまま地道にやるしかないね」


『そうですよね……このゲームも面白いですし、頑張ってみます』


「そうだね……まあ、とりあえずは鋼輝に砕けた話し方にしてもらえるようになることからかな、1番速いのは告白だけど」


『うう、なかなか覚悟が決まらないというか……』


「まあ暴走するのが1番危険だからね、地道に地道に」


『はい……』


 話もひと段落つき、ショウは通話を切った。幼馴染に進捗をせっつかれているが進展がないのだから答えようもない。ため息をつき色々と考えを巡らすが色恋沙汰に関して経験豊富では全くないので諦めてゲームの予定を考える。そろそろ王都へ行ってもレベル的に大丈夫な頃合いだろうと判断し、寝床についた。






 本日は快晴なり。そういやこのゲームでまだ雨が降ったの見たことないなあ。雪山フィールドは高確率で雪が降っているらしいが、もう少し先のフィールドなのでまだ縁がない。大体ゲームの天候はランダムだったりするがこのゲームはランダムはランダムでも空模様によって予測できるそうだ。どっかの動画に変わる空模様を撮影していたのをあげたのがあったっけ。いつものことながらリアルだったなあ。

 今日はドライタル側のフィールドボスを倒して王都へ行こう!ということなのでクルト達も誘いボス戦となる。都合良く予定が合って良かった。ショウによると王都までは、生産職は特にチュートリアル色が強めなので早めに王都に行くに越したことはないようで。クランに所属している大体のプレイヤーは王都を中心に活動しているそうなので辿り着くまでにゲームシステムに慣れてねということなのだろう。ボス戦だがなぜドライタル側なのかというと王都へと続く荒野フィールド、そのボスはヴェノムタイガーというモンスターでその名の通り毒を使う虎である。牙に毒があり、掠っただけでも毒状態になりスリップダメージと倦怠感が伴う。流石にその場合スリップダメージも少なく、倦怠感もほとんど無いようなものだが蓄積するので攻撃を軽視すると痛い目に遭うそうだ。

 つまりショウによると状態異常の可能性がある戦闘もしておこうね!らしい。ちなみにフィーアル側は湿地帯で、ボスはでかいカエル。大した攻撃能力があるわけじゃないがとにかく地形が悪いので動きづらい中どう倒すかという主旨みたいだ……長々と説明してしまったが荒地フィールドなう。前にも倒した蜘蛛やら蛇に爬虫類っぽい羽付けただけのモンスターやらを倒しながら進んでいく。


「アレか?」


「うん、アレだね」


 前方に現実のものよりほんの少し青寄りになった体色をもつ虎が見えてくる。それより牙の自己主張が凄い。虎っていうかサーベルタイガーじゃね?まあなんでも良いけどさ。アインシアのボス狼と同じぐらいの大きさなのでそれより速い想定でいいだろう。


「あ、コウ、あの牙毒付与できる武具になるよ。刀は無理だけど確か短刀にならできるんじゃないかな?」


「そうですね、あの大きさなら問題なくできると思いますよ!」


 ほほう、それは良いことを聞いた。小型武器はあって損はないし毒は一番使いやすい状態異常だからな。牙などわかりやすい素材は戦闘中に綺麗に切断などをするとほぼ確定でドロップする。逆に攻撃が当たって粉々に砕いてしまうとドロップ確率がとても下がるので戦い方も重要になってくる。俺には『貫牙剣』があるから簡単だけどね!ボス虎の動きも想定内の速さで狙い通りに牙を切断、自分の武器である牙を切り取られ狼狽えたボス虎の首を刎ね戦闘終了。今更だけどこのエクストラスキル大丈夫なのかなバランスとか。まあ超高威力の斬撃飛ばすのとかあるし、気にしない気にしない。あと下手なリアルさのあるAI積んでいるのも考えものだな、昔のゲームは、怯みはそういう行動としてプログラムされているもので攻撃するチャンスであっても隙ではない。今の虎は売りのリアルさのせいで生物くさい、明らかな隙があった。現実だったらこんな感じなんだろうか……そんなことをする度胸はないので意味のないイフか。


「いやほんとそのエクストラスキル反則じゃない?」


「仕様だ、仕様。運営がアリと言っているから反則じゃないだろ」


 牙も無事に落ち全員で王都へと向かう。そろそろ装備とか更新したいし、町並みも凄いらしいので観光とかも楽しんでみよう。



本来ならフィールドボス戦はもっと時間がかかります。

エクストラスキルのせい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 五十嵐鋼って誰? あらすじにて、主人公の名前は「荒北鋼輝」となっています。 また、第一話でも、「鋼輝からコウ」とキャラメイクしています。
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