第二十三話 終了、さて次
それから数時間が経ち、無事な幽霊船の数は大分少なくなった。俺達は結局3隻程沈めたのだが、アポロさんは5隻沈めたとかなんとか。どんな速度で攻略してたらそんな事になるんだろうなあ……ソロなのに相変わらず凄いわ。
上陸するスケルトンの数もどんどん減ってきている様で、暇なプレイヤーも増えているみたいだ。争いは起きていないらしいので、平和(?)にレイド戦が進んでいる。どのパーティにヘイトが来ているか分かりやすいようになっているから、事故も起きにくいだろうしな。
「結構ボロボロだな」
「まあ数が多かったからね」
「でも壁があって良かったですね。無かったら、村は大惨事だったでしょうし」
「生産職が作った甲斐はあったって事か」
このレイド戦の為に大工系統の生産職が中心となって作り上げた村を守る簡易的な防壁はボロボロとなっていた。スケルトンの1撃は大した事は無かったが、それが積み重なればああもなるだろう。後で知ったのだが、俺達が幽霊船に乗り込んだ後に、弓や槍などを使ったりするタイプのスケルトンが出てきたらしい。幽霊船の中では素手か、剣を使うスケルトンしか出現しなかったので、ちょっと見てみたかった。今はもういないみたいだし。
あとは、桟橋も酷い事になっていた。見た所支柱とかは無事そうなので修復はしやすいのだろうか?そこらは詳しくないので、ゼロからやり直さなかったりしないといけないのかは分からない。まあ人的被害はゼロらしいので、万々歳と言った所か。村の建物には流れ矢が刺さっていたりするが、それは誤差だろうし、生産職が勝手に直しているのを見かけた。
「あれ勝手にやって大丈夫なのか?」
「さ、さあ……悪い事では無いはずだけど」
「持ち主の許可とか大丈夫なんでしょうか……?」
まあバレなきゃ……これ犯罪者の思考だな。勝手にやって怒られるとしても、それは俺達じゃないので放っておこう。
今残りの幽霊船には、どこもプレイヤーが攻略しているみたいなので、俺達の出番はもう無い。そういえば3隻、数百体分のスケルトンの経験値は中々に美味かった。そろそろ4次職の事を考えても良いレベルになってきたな。その内条件を調べておかないと。装備はまだ持つから良いか。というか暇だな。
「何かするか?」
「静観で良いでしょ。結構倒したんだから、取り合う必要も無いし」
「まあそうだよなあ……」
とりあえず今は、ほぼ安全な辺りで壁に寄りかかりスケルトンの討伐風景を眺めている。もうレイド開始日の翌日となってしまったが、この調子なら少し睡眠時間が削れる程度で済むだろう。そもまだ夏休みだし。1日ぐらいなら特に健康に影響は無い。
「あ、3人ともお疲れ様です」
「アポロさんもお疲れ様です」
担当分が終わったのか、アポロさんも帰ってきた。という事は、結局6隻沈めた事になるのか?俺たちの倍……トップは凄いなあ。アポロさんも暇な様で、俺達と一緒に見物に回る事となった。
「あ、1隻沈んだ」
「あと3隻か」
「終わりが近づいてきましたね」
雑談をしている間に、1隻また1隻と沈んでいく。そして20分ほど経つと、最後の1隻が沈んだ。その時には地上に来るスケルトンはもういなくなっていたので、その光景はここにいる全てのプレイヤーが見ていた。あちこちで歓喜と終わったという安堵の声が聞こえる。
「終わったね」
「意外と早く終わるもんだな」
これでレイド戦は終わりか。霧はまだ晴れないが……まあそこは時間経過とかだろう。
「いつ霧が晴れるかな?」
「さあ、早けりゃ数時間後だろ……とりあえず今は解散するか?」
「そうですね、キリもいいですし」
「今の所他にする事もないですしね」
という訳で、屋敷へと戻る。何か起きたとしたら連絡が来るだろうし。その場合、動くのは他のプレイヤーに遅れるだろうが、それはしょうがない。もう眠いし、時間帯からして運営もそう連続して事を起こしたりはしないはず……多分。そう願いたい。
「じゃあお疲れ様」
「お疲れ様です」
「お疲れ」
とりあえずログアウトして、布団に入る。さて、霧が晴れるのを待とう。
翌日、起きたのは昼では無いが、朝とは言いづらい時間だった。朝食を摂り端末をいじると、翔斗から連絡が来ていた。あいつはあの時間に寝たのに、どれだけ早く起きてるんだか。
とりあえずその内容を見てみると、霧はまだ晴れていないとの事だった。それ以外には何も書いていなかったので、詳しく聞く為に電話をかける。
『あ、起きた?』
「起きた起きた……で、どういう事だ?」
『ああ、それなんだけど、未だに霧は晴れないみたいでね。それで、集めた真珠があったでしょ?』
「タイムラグとかじゃ無かったんだな……真珠か、鑑定結果に変化があったとか?」
『そうそう。レイドが終わってから少し経ったタイミングでまたカウントダウンが始まったみたい』
「……またレイドか?」
まさかのレイド2日目、同じ事を繰り返すのかと思ったが、そうでも無いらしい。カウントダウン以外にも鑑定結果が変化し、霧の発生源である巨大な何かが浮上してくるとか何とか、そんな内容になったらしい。量の次は巨大ボスのレイド戦か。
翔斗も又聞きみたいだから、それ以上の詳しい内容は知らないみたいだが、この状況はまだ終わらない様だ。長い休みが取りやすい時期だから、イベントの規模も大きいなあ。本題の綺麗な海と宝探しはいつ出来るのだろうか?情報も聞いたので、身の回りの支度を済ませログイン。
今ログインしているのは、ショウとアポロさんだけみたいで、モモやクローナも自分の部屋にいる様だ。起きているのかは分からないけど、昨日は遅くまで動いていたし、わざわざ訪ねる必要も無い。もし寝ていたとしたら迷惑だからな。談話室に入るとショウがだらけていた。
「あ、来たきた」
「……アポロさんは?」
「イベントモンスター狩りに行ったよ。凄いよね」
「お前といい、いつ寝てんだ……」
調子を崩したりはしないのだろうか。まあしない様にはしているだろうし、ショウに関しては調子が悪い所を見た事が無い。心配するだけ無駄か。やりすぎで体調を崩すのはゲーム好きとしてはアウトだ。
「それで、村はまだ霧の中か」
「まだ行ってないけどそうみたいだよ。今度こそ解決するといいんだけどね」
「まあそうしてほしいよな。カウントダウンの時間は?」
「今日の正午だってさ」
「意外と早いな……」
てっきりまた1日おくのかと思っていたが、そうでも無い様だ。うーん、もう1度寝るには微妙な時間だし、何かするには色々と足りないな。このまま待つか。
「コトネさん達に連絡は?」
「一応全員にしといたよ。クルト君とアゲハちゃんはまあ、そのうち来るだろうけど、コトネさんはね……」
「過ぎたらしょうがないか……遅かったしな」
とりあえず時間までぐだぐだしよう。持ち物は整ってるから大丈夫だ。次は何が起こるやら。




