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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第二十一話 レイド開始


 そしてレイド当日。クルトとアゲハを除いたメンバーで村に集まった。あと1時間でレイドが始まるので、もちろんプレイヤーの数は多い。多少余裕もあったから、何とかして都合をつけたプレイヤーも多いだろう。この霧の中、これだけの人が集まっているのは中々に面白いな。

 今までとの違いといえば、村と海の間に壁が築かれている事ぐらいか。高さは大体5メートルぐらいで、モンスターの侵入を阻む事なのは明白だ。レイドモンスターの目的が何かは知らないが、村に被害が出る事は確実に予想出来る。村人達は一応内陸側の村の端や他の場所へと避難しているとか。その為のクエストも発注されているそうだが……受けるのは余程の初心者か、レイドに興味はないプレイヤーだろう。受注条件もそこまで厳しく無い様だし。俺達はもちろんレイドの方だ。このゲームのレイドの雰囲気は知っておきたいし、何よりこちらの方が実利は確実に良いだろう。

 持ち物の準備に関しては、ポーションを少し補充したぐらいで、そこまで大した事はしなかった。


「それでどうする?」


「始まらないとレイドの詳細は分からないからね……まあ何かないか聞いてくるよ」


「よろしく」


 何か知ってるとすればイプシロンさん達の所だろうが……レイドの重要情報だったら、大体は流布されているだろうから期待しない方が良いか。隠し要素があっても、それはそこまで拘らない。

 ショウが向かった方向はプレイヤーの密度が高く、同じ事を考えるプレイヤーが多いという事だろう。


「前のレイドの時はイプシロンさん達が主導したんでしたっけ?」


「そうですね。もちろん強制した事はありませんでしたけど、従った方が経験値などの効率も良かったので文句は全く無かったですね」


「運営が適度に分けているのもあるか……」


 最初はどこに行ったら分からない初心者プレイヤーに教えていたら広まってそうなったらしい。まあ普通なら適正辺りの場所でモンスターを倒すだろうし、荒らし目的のプレイヤーは事故ですぐに死ぬらしい……事故で。


「あ、今回はアポロさんはどうします?」


「……私は別行動ですね。戦闘ならその方が楽なので」


「まあそうですよね」


 基本ソロなのだから、その方が効率良いか。まだレベル差があるので、難易度が高い方に行った方がお互いに良いだろうしな。

 こちらはモモ達NPCを含めて5人、1パーティ丁度なので適当な所に行けば良いな。本来の戦力なら最高難易度でも大丈夫だろうけど、モモとクローナは本領を出さないし出せないだろう。プレイヤーの目が多いのと、こういう時はサポートに回る事が多いからだ。そうこうしていると、ショウが戻ってきた。


「なんだって?」


「今の所は特に何も無いってさ」


「そりゃそうか」


「始まったら順次連絡するってさ」


「そんな感じだろうな」


 今分かるのはやはりそのぐらいだったか。余程で無ければ対処は出来るだろうし、追々移動すれば良いか。


「あと何分?」


「あと……20分ぐらいだな」


「まだ結構ありますね」


「早く来すぎたかな……」


「お茶でもしますか?」


「いやそこまでの時間は無いだろう……」


 そもそも海に近い所はプレイヤーでぎっしりだし、早く来た所で何かある訳でもないしな。雑談でもしてれば良いか。






 そして20分後、レイドの開始時間となった。時間になると同時に、霧の向こうから大型船のシルエットが見え始めた。見えるだけでもその数は10を超えていて、更に向こうにもいるだろうから、その数は大分多い。


「多くない?」


「うーん、規模から考えて……もしかすると100はあるかもね」


「100……!」


 想定以上だな。周りにいるプレイヤーも騒がしくなっている。よく目を凝らすと小舟に大量にスケルトンが乗り込んでこちらに向かってくるのが見える。そっちはそっちで来るのか。


「どうする?」


「まあ戦闘準備は当たり前として……船を使うかもしれないからその移動も考えておかないと」


「了解」


「分かりました」


 数には驚いたが、他のプレイヤーも剣を抜くなど準備をし始めた。最初は5隻だったのに、どこからこんなに来たのやら。それに、海関係は発展していないのだから、こんなに大型船があったものなのか?謎は多いが、レイド戦には関係が無いし、頭の隅に追いやっておこう。

 小舟に乗ったスケルトンが射程内に入ったのか、近場の魔法職のプレイヤーが攻撃し始めた。ざっと見ただけでも数百はいるので、魔法職だけでは殲滅できず、撃ち漏らした上陸するスケルトンも増えてきた。その範囲も広く、割と後ろにいるこちらにまで回ってきそうな感じだ。


「結構多いですね……」


「まあ暇よりは良いけど……」


 アポロさんは既に分かれている。1回り大きく、いかにも強そうな感じのスケルトンの方へと走っていった。プレイヤーの中には自分の船に乗ったり、大手クランは大型船で移動していたりする。この状況なら余程不器用で無ければ食いっぱぐれるプレイヤーはいないだろう。


「【抜刀】、よし次……」


「余裕がありますね」


「まあこの状況だとこんなものでしょ」


 今は、大体1パーティにつき常時2、3体程度のスケルトンが相手になる程度だ。適正レベルの所に移れば気楽に対処が可能なレベルだ。クローナはコトネさんに近づいてきたスケルトンを足止めするレベルで、モモは俺達に最低限のバフをかけるぐらいの魔法しか使っていない。

 それにしても、余裕があるのは良いが、このままで良いのだろうか?スケルトンの数が衰える気配は無いので、千日手な気がするが。


「あ、連絡が……え、なるほど」


 しばらく戦っていると、ショウにメール機能の方で何やら連絡が来たみたいだ。


「何だって?」


「えっと、とりあえず船に乗ろう。ここは僕達がいなくなっても大丈夫っぽいし」


「え、まあそうするか」


とりあえず寄ってきたスケルトンを倒しながら、戦線を離れる。1パーティがいなくなったところで余裕が無くなるほど問題は無いだろう。そもそもまともにスケルトンに攻撃してたの俺ぐらいだし。比較的安全な所に移った所でショウに事情を聞く。


「まずはあの船団なんだけど、中にいるボスを倒したら沈められるみたい」


「沈められるのか……あれ、モモの魔法なら」


「いや外側からは無理みたい」


「流石にそう上手くはいかないか」


 そう考えたプレイヤーはいるみたいで、モモの魔法ほど威力が無くても試してみたそうだ。しかし、結果は傷1つつかず、可能性は皆無との事だった。


「まあそのボスがコアみたいな役割って事か」


「そう考えるのが妥当だよね」


「この前と似た様な感じですね」


「あー、けど船の中はやたらスケルトンの数が多いみたいだから……この前よりは大分難易度高いみたい」


「そりゃそうか」


 正道を行かないとクリア出来ないタイプか。まあ大体そういうのが殆どだし、真面目に行こう。エクストラスキル持ちに強力なNPC2人がいるとはいえ、俺達にまで声がかかったという事はどれだけ船が多いのやら。霧のせいで全体が把握しづらいが、100近いのはあながち間違いでは無いのだろう。


「じゃあ、船に乗り込んで沈めていけばいいんだな」


「そうそう。とりあえず行こう」


「頑張りましょう」


 船を持ってきておいて良かったな、本当に必要になるとは。片っ端から沈めていってほしいとの事なので、近場の船へと近づく。前と同じく、【空走場】で上へと上がり、モモの魔法で甲板上のスケルトンを一掃する。縄梯子をかけ、3人が昇ってくるのを待つ。今回はクルト達がいないから船をしまうのも忘れない。


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