第二十話 レイド説明
「あ、起きた」
「あ"〜?あー……そうかホテルか」
目を覚ますと、翔斗がベッドの上で荷物を整理していた。端末で時刻を確認すると7時だった。起きるの早いな。俺は目覚ましで起きたのだが、翔斗の様子からして10分やそこら早く起きた訳では無いのだろう。
「……何時に起きたんだ?」
「えっと、5時ぐらい?」
「早過ぎないか?」
「いつもこのぐらいだけど」
「うわー」
いつもかよ、早ぇな。まあ騒がしくしてた訳でも無いし、こちらに害は無かったのだから放っておこう。他人の生活習慣に口を出す程偉くない……とりあえず顔洗っておこう。
洗面所から戻ってくると、荷物の整理が終わったのか、翔斗は端末をいじっていた。
「あ、電車は10時くらいに復旧するってさ」
「そうか、結構早いな……助かるわ」
一晩で復旧なら大分早い。下手をすれば夕方ぐらいまでかかると思っていたからな。雨が予報よりも早く明けたらしいから、それが功を奏したかな?
10時ならチェックアウトの時間もそれぐらいだから丁度良い。運が良い……いや、こんな事態になっている時点であまり運がいいとは言えないか。
「そういえば、イベントの方はどうなってる?」
「それだけど、5つ集まったみたいだよ」
「マジか……まあ結構時間経ってるしな」
数時間あれば1つぐらい見つかるか。おそらくあると思われたフィールドは1つだけだったし、深夜といえどプレイヤーが集まればどうにかなるよな。
5つ揃ったので何か起こっているのかと思ったが、翔斗によると起こっているけど起こって無いらしい。
「どういう事だ?」
「5つ揃った時点で、真珠の鑑定結果が変化したみたいでね。カウントダウンが始まったみたいなんだよ」
「いきなり始まらない様にか」
「そうじゃない?それで、そのカウントダウンは中途半端な感じだったみたいでね、多分時間帯は決めてあったんじゃない?」
「社会人でも参加できる様にか。という事はレイドか?」
「多分そうだと思うよ。そんな感じの内容が鑑定結果に書いてあったみたいだし」
その鑑定結果から察するに、レイドの内容は船団と大量のスケルトンの様だった。まあ残当だな。イベントのストーリーで関係あるのはそれぐらいだった。限定モンスターは村には出現していないから、このレイドで出る事は無いのだろう。質より量のレイドか、それなら大概のプレイヤーは参加できるか。
「そういや、レイドはどんな感じになってるんだ?」
「このゲームの場合、量の奴は1回あってね、その時は場所でモンスターのレベルが分かれてたかな」
「配慮はしっかりだな」
「自分よりレベルが低すぎるモンスターを倒しても経験値やドロップは入らない様になってるみたいだから、今回もイザコザは起こりにくい様になってるでしょ」
「じゃあ大丈夫だな」
レイドは関してはゲーム然と言った感じだな。まあ分かりやすくて良い。海という事もあって、どこから攻めてくるのかは分かっているし、やり易いな。ちなみにレイドは明日の19時から始まるみたいだ。今日1日あれば準備は出来るか。見つかる時間によっては今日開始だったのかもな。とにかく、明日に向けて準備をしないとな……まあアイテムぐらいだろうけど。
「それじゃ、帰ったら……どうするか?」
「まあポーションぐらいでしょ。そんなに特殊な攻撃してくるモンスターもいなかったし。色々準備するのは悪くないけど、過ぎたるは及ばざるが如しだろうし」
「それもそうか……あれ?」
そんな話をしていると、ドアを叩く音が聞こえた。誰かと思いドアを開けると、女子3人がいた。
「どうした?」
「いやほら、10時まで暇でしょ?鞄を漁ってたらこんな物が見つかって」
「トランプか……ベッタベタだな」
「まあ良いでしょ、ほら」
「お、お邪魔します」
「失礼します」
トランプか、ど定番だけど、まあゲームをするには微妙な時間だったし、特に断る理由も無い。
そういう訳で10時ぐらいまで、トランプで遊んでいた。沙蘭さんについては、ギリギリまで寝ていたらしい。色々やったが、翔斗と西田さんが強かった。万能かよ、この2人。次点で琴音さん、ドベは俺と池田が争っていた。大概は翔斗と西田さんが勝利し、琴音さんがたまにとんでもない引きを見せる。そして特に面白くもないドベ争いという訳だ。言い出しっぺの池田がドベ争いなのは流石と言うべきかな。
「も〜、強過ぎだよ。少しぐらい手加減してよ」
「ははは、勝負事で手を抜く訳ないじゃないか。というか、それは西田さんにも言いなよ」
「えっと、私も同じスタンスなので……」
手を抜かないのは別に良いが、ここまで強いとな。まあ俺は10回に1回ぐらいは上位に食い込めたので良しとしよう。池田は頑張れ。前向きだから、懲りずにまた勧めるだろうし。
「あ、そろそろ時間ですね」
「本当だ。じゃあみんな準備しようか」
「はー、終わりかー……あれ、まだお姉ちゃん寝てる……?」
「さ、流石にもう起きてるんじゃ?」
向かいの部屋で音が聞こえないとはいえ、このぐらいの時間なら何か動きがあっても良い様な。まあ……自業自得という事で。
女子は部屋へと戻り、俺も支度を済ませる。翔斗はもう済んでいたから楽なものだ。これで、この小旅行も終わりか。事故とはいえ、1泊したせいで本当に旅行みたくなったのは……まあ良い思い出の範疇だな。沙蘭さんは本当にギリギリまで寝ていたみたいで、一応体裁は整っているが、何かボロボロな雰囲気が漂っている。
ホテルでチェックアウトを済ませ、駅へと向かう。電車は予告通り運行を再開した様で、大分混んでいる。再開したばかりなので当たり前だが、まあ通勤ラッシュに比べればどうという事は無い。途中で運良く座れたしな。降りる駅は全員一緒だった。まあ集まる時も同じだったから当たり前か。池田は今度は酔わなかった様だ。西田さんは最寄りは1つ隣みたいだが、家までの距離はほぼ同じだそうだ。
6人で歩いていると琴音さんが歩く早さを調節して、隣に来た。
「どうしました?」
「あ、いえその……また行きたいですね」
「え?ああ……まあたまにはこういう事もあった方が。みんなの予定が合えばですけど」
「みんな……はい、そうですね。あと……えっと……丁寧な言葉遣いはや、やめませんか?」
「え?」
「い、言っておいてなんですけど、私はこれが普通なんですけど、鋼輝くんは違うじゃないですか」
「ああ、なるほど」
あまり関わった事は無いが、一応中学から一緒な訳だ。最近は共通の話題もあるので、話す機会も増えてきた。砕けた話し方をした方が琴音さんの気が楽になるならその方が良いか。そういうと、西田さんは……言われてないからそのままで良いか。
「じゃあ宜しく、琴音さん」
「あ、はいよろしくお願いします」
そろそろ別れるタイミングだ。少し前に西田さんも分かれている。そんなこんなで自宅へと着いた。あー、現実に戻った感じがする。ホテルやら何やらの清算をしないとな。色々片付ける物もあるし……こういうのは結局最後が1番疲れるんだよな。
「はあ……」
一通り片付けも終わった。息抜きがてらゲームでもしよう。ログインすると、屋敷には 俺以外のプレイヤーはいない様だった。モモとクローナはいるみたいだな。とりあえずレベル上げをする気も無いし、談話室に行くか。
「ん?おやマスターかい」
「起きられましたか」
部屋に入ると、2人は将棋を指していた。一式用意したのか……将棋ならこの前の様にはならないはずだが、今度は千日手になりそうだな。そこまで佳境という訳でも無さそうだったので、ショウに教えてもらった情報を伝えていく。NPCには伝わっていないはずだからな。
「ふうん、船団ねぇ……」
「何か知ってるのか?」
「いや知らないけど……どうにも腑に落ちなくてね」
「その真珠とやらと船団に密接な関係が無いですからね」
「……?」
一応その船団の取得した物だという記述があったらしいけど、それは関係の内に入らないのだろうか?何を疑問に思っているか知らないが、春イベの時の事もあるし、一応頭の片隅に入れておこう。




