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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第十九話 話が分かる


「それじゃあ、僕はこっちに」


「じゃあ俺はこっちだな」


 とりあえず手分けをして探す事にした。1軒1軒回るのはとても目立つ。それにまだ村全域を調べたわけでは無いので、もしかしたらどこかで遊んでいるかもしれない……この霧だが。探すだけで見つかるなら儲け物だし、見て回る事に損は無いはずだ。

 そうして、村を見て回っていくが、プレイヤーの目があるので、派手に動き回れない。真珠の件で、皆出払っていると思ったけど、参加しないプレイヤーもそりゃいるか。見つければ、大金やそれなりの素材が手に入るが、全てのプレイヤーが興味を持つわけでは無いよな。


「全然見つからないな……」


 特に気にしないプレイヤーはともかく、こんな霧じゃNPCは外に出ないか。今日は仕事をする住人もいない様だし、全く見かけない。随分と寂しい感じだ。どうしようかと思っていると、ショウから連絡がきた。


「どうした?見つけたか?」


『うん、見つけたよ。今一緒にいるんだけど』


「そうか、そっちだったか……」


 まあ見つかったので、良しとしよう。ショウに場所を教えてもらい、そちらへと向かう。そこには、ショウとあの時ぶつかった子ども、それと母親と見られる女性がいた。


「あ、あの時のお兄ちゃん」


「やっぱり合ってたか」


「えっと、この子がお世話になった様で……」


「いやいや」


 記憶通り、子どもが首から下げていた袋には、話に聞いた真珠ぐらいの大きさに膨らんでいた。こうしてみると、結構違和感あるな、今までよく他のプレイヤーに気づかれなかったものだ。


「えっと話は?」


「一通りしたよ。それで、その事なんだけど……」


「これが必要なんでしょ?はい、どうぞ」


 そう言って子どもは首に下げていた袋から玉を取り出して渡してきた。鑑定してみると確かにイベント関係のアイテムで合っていた。

 拍子抜けだったな、人の物になっていたのだから一悶着あるのかと思ったら、何も無かった。


「良いのか?御守りとか言ってなかったか?」


「うん。そこの砂浜で拾っただけだし」


「そ、そうなのか……」


「この霧が無くなるならその方が良いでしょ?」


「あ、そこまで話したのか」


「うん」


 子どもの母親も事情はショウから聞いていた様で、素直に納得してくれた様だった。子どもが拾ってきて、綺麗な物だとは思っていたが、そんな物だとは知らなかったそうだ。そも真珠を知らない様で、海鮮物を採っている村でもそのぐらいなのかと思った。

やっぱり海系はあんまり発展してないんだよな。船関係はプレイヤーのせいでチグハグな感じになっているけど。まあそのおかげで上手くいくならよかったし、とにかく物分かりが良くてよかった。対人の面倒事になると厄介だからな。


「ありがとな」


「うん」


「じゃあ届けに行こうか」


「そうだな」


 子どもから受け取った真珠をしまう。これで4つ目か5つ目かは分からないが、1つ揃ったわけか。4つ目が見つかったとは聞いていないから、これが4つ目か。

 2人で今回のイベントの考察やら何やらをしている建物の1つに入る。ショウのおかげか、ほとんどフリーパスだった。ショウに案内されて入った1室には数人のプレイヤーがおり、その中にはイプシロンさんもいた。


「やあ2人とも。ここに来たって事は……?」


「はい、4つ目……ですよね?」


「4つ目だね……確かにそうみたいだ」


 ショウがイプシロンさんに……ではなく、眼鏡をかけたプレイヤーに渡した。この人が情報やらを売買している集団の人かな。


「ちなみにこれ、どこにあったの?」


「村の子どもが拾ったそうです」


「子ども!?」


 部屋の中にいた、シンプルな長剣を腰にかけた女性プレイヤーが驚いた様に声を上げた。今まで各フィールドに落ちていたらしいからなあ、そりゃ驚くか。

 この女性もでかいクランのリーダーとかなのだろう。他にもそんな様な人がいるし、イプシロンさんがいる時点でそんなもんか。まあ完全に独占出来る訳もなし、大手クランが共同で主導しているという事か。情報は大体開示している様で、今までのイベントも終わったら、全部放出しているみたいだ。まあ他のプレイヤーを出し抜き合うよりはマシかな。


「子どもか…‥.なるほど、まああと1つだから大丈夫だろうけど」


「5つだとフィールドの数と合わなかったからね……納得といえば納得か」


「じゃあ報酬貰えます?」


「ああ、基本の分に……少し色をつけておこうか、後々参考になるだろうし」


「お、どうも」


 眼鏡のプレイヤーがショウに金の入った袋を渡す。素材は今は困っていないし、金で良いかという事になっている。

 報酬も受け取ったので、ここから出ようとすると眼鏡のプレイヤーから声をかけられた。


「それで、君が色欲の悪魔の契約者だね?」


「あ、はい」


「私はワテル、一応こういう事のまとめ役をやらされていてね」


 やらされているんかい。予想通り情報などをまとめているクランのリーダーの様だった。リーダーといっても、ジャンケンで負けた末らしいけど。

リーダーらしいことをしたくてしているクランって今の所見た事ないな……イプシロンさんの所はいつの間にかそうなっていたみたいだし、タイガも4次職だったかららしいしな。まあ面倒は多いからそんなもんなのかな。


「えっと、それで……?」


「いやまあ、自己紹介だけだよ。一応聞きたい事はあるけど、そこは個人の秘匿の範囲だからね……エクストラスキルの詳細なんて話してくれないだろう?」


「それはまあ、流石に……」


「悪魔など、世界観関係の事はショウ君経由で全部話してもらっているからありがたいよ」


「ああ、噂の。私はクラン「マギ・カ」のクランリーダーをしているローズよ。よろしく」


「ああ、コウです、よろしく……あれ、魔法職のクランじゃ」


「そうよ?4次職の『魔王』だからね」


 ワテルと話していると、女性プレイヤーも話に参加してきた。それにしても、腰にある剣はなんなのだろうか?まさか使うのか?リーダーがイロモノ枠か。


「ローズさんは剣も使うからね……」


「サブジョブは『剣聖』だから」


「凄いな……」


「ありがとう。それにしても話は聞いているけど、どうしてそう出会うのかしらね?」


「さあ、それは俺も何故かは……」


「でしょうね……」


 モモやらクローナやら、なんでこうも遭遇するのかは俺にも分からない。逆の立場だったら俺も聞くだろうけど、答えようがないんだよなあ。


「あ、じゃあ僕のベルゼバブあげようか?」


「嫌よ!流石にあの金額は無理!」


 イプシロンさんも参加し冗談混じりでそんな事を言ったが、冗談でもごめんとばかりにローズが拒否した。魔法職クランとしては最大手のはずらしいが、それでも拒否するレベルとは……どれだけかかっているのやら。怖いので聞かないでおこう。

 まあそんなこんなで話をし、部屋を後にした。5つ目を探そうかと思ったが、今から探しても確率は大分低いだろう。下手に欲をかくと面倒しかない。もう既に見つかってるかもしれないしな。


「あとどうする?」


「うーん、まあ今日は終わりで良いんじゃない?すぐに何かが始まったりはしないだろうし、そろそろ夕飯にしようよ」


「カップ麺だけどな……まあ特にやる事も無いか」


 屋敷に戻り、モモ達に顛末を話してログアウト。琴音さん達にもその事を話し、明日以降に何か起こるんじゃないかという事になった。西田さんは捜索系は苦手らしく、5つ目探しはやらないそうだ。

 あとは、買っておいたカップ麺をすすり、しばらく暇を潰して、寝た。明日は無事に帰れると良いのだが。電車がいつ復旧するかは知らないが、出来るだけ早いと嬉しい。


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