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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第十八話 頭の中の、何処の棚


「む……」


「むむ」


「……もう諦めたらどうだ?」


「い、いえまだです……」


「いやどう見ても無理だろ………」


「凄いですね」


「こんな事になるとは」


 あれから更に時間は経過したが、未だに決着はついていない。盤上には駒は2つしかなく、このまま続ける意味は無いのは誰が見ても明らかだ。両者共に意地を張っているせいで、この状況になっている。

 どちらが優勢というわけでもなく減り続ける駒を見て、途中からこれは駄目だなとは感じていた。何度か引き分けを提案してはいたのだが、2人ともそれを良しとせず、今に至る。将棋なら取った駒を自分の駒として出せるからやり様はあったかもしれないが、チェスは出来ない。そもキング1つだけでこれ以上何をするんだか。この2人が勝負事になるとこうなるんだなあ……今後は迂闊に対立するさせない様にするか。行き過ぎるとどうなるか分からないし、どうやっても決着がつきやすい物じゃないとこうなるしな。

 それにしてもいつまで次の手を悩んでいるんだか。2人ともどうにもならないのは分かっているのだろうが、引き分けだとしても先に提案した方が負けみたいになるのか。言ったもん勝ちならぬ、言ったもん負けだな。引くに引けない。


「ちょっとコウ、どうにかしなよ」


「ええ……何で俺が?」


「マスターでしょ?」


「そういう時だけ……まあしょうがないか」


 監督責任的なやつか?まあ誰かがやらなければならないので、ちょっとやってみるか。さっき言ってみたけど、却下されたんだけどな。


「あー、ほら、引き分け引き分け。勝っても負けても無いんだから……今度分かりやすく決着がつく奴でな。その時な」


「むう……」


「……確かにそうですね」


 そう言うと、2人は肩の力を抜き駒を片づけ始めた。良かった、今度は引いてくれたか。

 ぶっちゃっけて言えば、2人を無視してショウに得た情報を説明してもらっても良かったのだが、いつかは止めないといけないので今やってしまった方が良い。説明するなら1回の方が良いしな。モモ達は片付けたチェス一式をアゲハに返した。さて、ショウの情報を聞こう。


「それでどうだったんだ?」


「それがね、日誌を調べてみたらあの5隻の船は宝玉みたいな物を探していたみたいなんだよね」


「宝玉?」


「宝玉というか、真珠みたい?大体直径が7、8センチぐらいの物らしいんだけど」


「7、8センチ……結構な大きさですね」


「しかも5つあるみたいなんだよ」


「5つか」


 中々の大きさの宝玉を5つか。価値は相当だろうが、その船達はどこでその情報を手に入れ、どう探していたんだろうな。真珠ならそれを生成する2枚貝がいる訳だ。7、8センチにもなる真珠を生成できる貝の大きさ……どれだけでかいのやら。


「まあ船には無かったねぇ」


「となると、他の場所……流れ着いたとかでしょうか?」


「クローナさんの言う通りで、村の外れ……って言ってもまあまあ離れてるんだけど、そこで1個見つかったみたいなんだよ」


「ああ、5つ集めると何かが起きるのか」


「そうそう。それでさっき、一般プレイヤーにも情報を流布して探してもらってるんだよね」


「あと4つですか」


「あ、いやもう2つ見つかってて、あと2つだね。どれもフィールドに落ちてたみたい」


 更に詳しく聞いてみると、それぞれの海岸フィールドで見つかっているらしく、まだ見つかっていない海岸フィールドにプレイヤーが大勢集まっているとか何とか。モモ達の対局を待ってたらいつの間にかそんな事になっていたのか。


「まあ、言ってしまえば分かっているのはこのぐらいだね。モモさん探せたりします?」


「流石に見た事がない物は……まあ実物があっても探せるかどうかは分からないねぇ。でかいだけで普通の真珠なんだろう?」


「一応鑑定結果はそう変な所は無かったらしくて……そう簡単にはいかないか。ちなみに見つけたプレイヤーで届けた人はそれなりの報酬が貰えるから。まあ村人とかじゃなくて、同じプレイヤーからだけど」


「一応探す分かりやすいメリットはあるわけか」


 ショウがやけに乗り気だったのはそのせいか。報酬は金でも素材でも良いらしく、それならとやる気を出しているプレイヤーも多い様だ。情報料も浮いたし、ここで利益を上げたいよな。

 というか、大きい真珠……球体……どっかで見た様な……気のせいか?


「あー……どこだったっけなあ……?」


「心当たりでもあるの?」


「うーん……」


 記憶の端でぼやけているから、見間違いの可能性は十分にある。村で見た気がするのだが、果たしてどこだったか。ここにいる面子に聞いても覚えはない様だった。そうなると……ただの記憶違いか?あ、いや一緒に村にいた事があって、まだ聞いていない人がいるわ。


「ちょっと2人に聞いてくるわ」


「え、ああ、なるほど……じゃあよろしく」


 そう、コトネさんとアポロさんには聞いていない。別にメールでも良いのだが、口頭で聞いた方が色々と早いだろう。自分の部屋に戻って、一旦ログアウト。ホテルの部屋を出て琴音さん達がいる部屋のドアを叩く。


「誰?」


「俺だけど、琴音さんと西田さんに聞きたい事があって」


「ああ、そうなの」


 先に行くというメールでも送っとけば良かったな。少しすると、2人が出てきた。


「えっと、どうかしました?」


「あー、ちょっとゲームの事で」


 とりあえず2人に経緯をそのまま話す。これで心当たりがなければ、ただの俺の記憶違いだが……琴音さんにはある様だった。しかし、俺と同じくどこだったかは覚えていない様だ。改めて頭の中を探ってみるが……変な引き出し開けそうだな。


「うーん……」


「えっと……あ!」


「え?」


「あの、村の男の子、首に下げてた物がそんな形だった気が」


「……ああ!思い出した」


 村の中を見て回っていた時にぶつかった子どもか。思い出した思い出した。確かにそんな物をぶら下げていたな、すっかり忘れていた。


「ありがとう、早速確認するよ」


「あ、いえお役に立てて良かったです」


 琴音さんのおかげで心当たりの正体が判明した。2人にお礼を言って、またログイン。談話室いたショウ達に伝えると、納得した様だった。あの時ショウ達もいたにはいたが、子どもが首に掛けていた物に関しては、拾ったコトネさんと、怪我が無いか確認していた俺だけだった。そりゃあショウ達が覚えていないわけだ。

 目標が分かったので、俺とショウの2人で村へと向かう。モモ達は屋敷に残っている。その子どもが持っている物がその真珠だと確証を得た訳では無いけど、確かめる価値は十分にある。その辺に落ちている物ならNPCが拾ったという可能性もあるし、海岸フィールドは大雑把には4つに分けられる。それぞれ1つずつ、そして村で1つなら丁度良い感じだろう。

 村に着いたが、相も変わらず霧に包まれていた。


「さて、子どもって言ったってなあ……」


「どこで会ったんだっけ?」


「えっとあっち……とりあえず言ってみるか」


 唯一の手がかりである、ぶつかった場所へと向かう。まあ当然その子どもがいたり、やってくる様な事は無かった。あー、どうしようか、手がかりこれしか無いんだけどな。


「残り2つはまだ見つかって無いんだろ?」


「うん、見つかったら連絡寄越してくれる様にお願いしたし……NPCから見つかったらならそれこそ連絡来るでしょ」


「それもそうか」


 村人は、村がこの状況なので外に出る人はほとんどいない。霧自体に害は無いので、子どもは出るかもしれないが、そうずっとでもあるまい。どこから探そうか……1件1件訪ねていくわけにもいかないし、時間もかかる。そもそんな事をしてたら目立つ。状況があまり動いていないので村にいるプレイヤーの数は初日よりも少なくなったが、それでも目はある。


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