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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第十二話 あっさりと


 船の中は明かりは無く、薄暗かった。モモが魔法で明かりをつけてくれたので視界は十分に確保された、外側があれだけボロボロだったので、もちろん中もそうだった。所々で木が朽ちていて穴が空いていた。下手をすると踏み抜くかもしれないので進むにも注意が必要だ。


「きゃ」


「はっ」


 しかも角からスケルトンが出てくるのでさながらテーマパークのアトラクションの様だ。今も急に出てきたスケルトンに対してコトネさんが驚き、アポロさんが即座に始末した。これで5回目、多いなあ。1体とかじゃなく数体まとめて出てくるし。暗がりから出てくるので驚くのはしょうがない。


「それにしても結構広いね」


「まあ船の規模がなあ……モモの魔法で何とかならないか?」


「そう言われてもねぇ……何がいるのかは分かっても何があるかまでは」


「そうかあ……」


 そう都合良くはいかないか。魔法で色々できるとしてもそこまで痒い所に手が届いたりはしないよな。探知魔法で出来るのは生物もしくは魔力に関する物といった程度らしい。モモがスケルトンと分かったのも遭遇した事あるものと似た様な気配だったからだそうだ。この船の中に重要なアイテムがあったとしても、探知に引っかかったりはしないみたいなので、地道に探していくしかない。

 しかしまあ、船がでかいせいで、探すのにも苦労する。待っているクルト達も暇だろう。一応こうして危険があるので置いてきたが、モモやクローナ、アポロさんがいるので2人ぐらいなら大丈夫だったんじゃないかと思う。


「それにしても、全くドロップしないね」


「極低確率か、そもそもドロップしないか……まあ後者だろうな」


「あのスケルトンにそんな価値があるとは思えないですしね」


 ドロップが出ない理由はいくつか思いつくが推測の域を出ないし、思いつくものもシステム的な方面なので、考察にならない。


「そういえばクローナは置いてきてよかったんだよな?」


「あー、そうだねぇ。まあここぐらいで、こうして明かりを出していればまだ大丈夫だろうけど……」


 暗くて狭い場所が苦手らしいクローナだが、問題なのは暗い方か。じゃあ、次の機会があるとしたらクルト達もまとめて連れてきても大丈夫そうだな。ちなみに驚くと手が出るタイプらしい。つくづく天使らしくないな。弱点があるのは良いとしても、不便そうだ。機会があれば何故苦手なのか聞いてみたいものだ。


「……ここは船長室でしょうか?」


「装飾もあるしそうじゃない?文字は掠れて読めないけど」


 とりあえず進んで行ったら、物があったりして進めない所があった。退かしたりすると崩れそうなので、結局下に向かい迂回するしかなかった。そうして着いたのがここだ。船長室らしき場所なら何があっても良いはずだが……これまで調べた部屋は何も無いか、ゴミしかなかったからなあ。

 一応何がいるのか分からないので、何があっても良いようにタンクであるショウが扉を開ける。


「う……ぐぅ!」


 嫌な予感は当たるというもので、扉を開けると剣での攻撃がショウを襲った。不意打ちとは面倒な。まあ警戒していたのでショウは盾で防ぎ、そのまま攻撃してきた対象を部屋の中へと弾き飛ばした。急いで全員部屋の中へと入り、対象を確認する。攻撃してきたのは今まで遭遇したものより豪華な服を着たスケルトンだった。大きさも2メートル越えで、骨ながら中々に逞しい感じだ。部屋の中も、昔はそれなりの物であった事が感じられるので船長室で間違いないかな。船長スケルトンは大きめのカトラスを持ち、カタカタを骨を鳴らしている。


「受けてみた感じは……?」


「それなりにレベルは高いみたいだけど……このメンバーなら問題無いと思う」


「じゃあ大丈夫だな」


 ショウがそう言うなら、負ける心配はないか。まあギミックがあるかもしれないので油断は出来ない。部屋はあまり広くないし、まともな物がいくつか見られるのであまり壊したくもない。手がかりがあるかもしれないし、万が一沈んだりでもすると、本当に困る。

 船長スケルトンは骨をカタカタ鳴らしながら攻撃してきた。最初に攻撃したショウや、戦闘職ではないコトネさんならまだ分かるが、何故かアポロさんの方に。よりにもよってそっちかよ。


「……?【泡砲鋏(ヴィクリス)】、【居合】」


「……あーあ」


 予想通りというか、それなりに素早かったはずの船長スケルトンの攻撃は見事に躱され、カウンターで高威力の一撃を叩き込まれ砕けていった。一撃かよ。斬撃も一応衝撃波だから骨相手には効果抜群か。【居合】は【レストリジェクト】と同じくカウンター系のスキルだが、判定が微妙にキツい。【レストリジェクト】は判定が緩いので、大分便利なんだよな。楽を覚えてしまった。

 船長スケルトンのドロップに関しては、今まで遭遇したものと同じく、何も出なかった。


「ボスっぽい割に呆気なかったね」


「いや、相手が悪いと思うけどなあ……」


「ボスじゃなかったって事でしょうか……?」


「うーん……まあとりあえずこの部屋探してみようか。色々あるみたいだし、アポロさんのおかげでほとんど荒れてないしね」


「そうだな」


 障害はアポロさんが1人で撃破してくれたので、部屋はほとんど荒れていない。これなら何か無くなっているという事もないだろう。端に転がっている机や棚、木箱など何かが入ってそうな物が色々とあった。それぞれ近い場所にある物を漁ってみるが……空、ハズレか。


「あっ、何かありました!」


「え?あ、本当だ」


 当たりはコトネさんの方だったか。コトネさんが手に持っていたのは、1冊の本だった。

中を確認してみると、それは日誌のようだった。


「それっぽいね」


「結構びっしりと書いてありますね……」


「読むのには時間がかかりそうですね……」


 コトネさんがパラパラとめくっているが、どのページもいっぱいに書かれていた。読めるは読めるが、確かに時間がかかりそうだ。


「とりあえず他の所は?」


「こっちには何も無かったよ」


「こっちもです」


「僕の方もね」


「特に何も無かったねぇ」


「……じゃあ1回外に出るか。大体探したし、ここまで何も無いなら収獲はこの本ぐらいだろうし」


「それもそうだね」


 ここに来るまでに、船の中のほとんどは探索したと言っても良い。空だったりゴミばかりだったので、これ1つというなら納得だ。まあこれだけ探して1つというのも微妙な気分だが。


「じゃあ船に……日誌、持ち帰れるよね?」


「大丈夫だと思うよ?物自体は変な痕跡も無いし」


「そうなんですか」


 モモのお墨付きもついたし、大丈夫か。俺達の船に戻ると、留守番組の3人はトランプをしていた。


「何やってんだい……護衛は?」


「こうしてこなしていますが?そも怪しい気配の1つも近づいて来なかったので」


「まあそうなったら分かるか……」


「それで何かありました?」


「あったあった」


 やっぱり暇だったか。まあ親睦を深められていたみたいだし、良しとしよう。あった事を2人に伝えながら、舞台の村へと戻る。考察用の拠点があるらしく、そこに届ければそれなりの報酬が出るみたいだ。まあそこの交渉は面倒なので、顔も利くショウに丸投げだけど。アポロさんは……まあ行かないよな。ショウに日誌を任せたら、30分程で帰ってきた。


「どうだった?」


「いやー、中々だったよ、ほら」


「おお」


 そう言ってショウが取り出しのは結構な大きさの袋だった。全部銅貨みたいな事も無いだろうし、予想以上の金額っぽいな。大手クランの共同ともなれば金払いが良くていいな。

 そして、ショウが言うには今の所5隻の幽霊船が確認されているという。俺達が見つけた本とはまた別の本の内容から5隻で合っているらしい。今まで4冊見つかっていた様で、俺達ので丁度揃ったとか。

 報酬は全員で山分けした。あとは情報の整理を待つだけだな。ああ、明日は約束の日だっけ。持ち物確認しておかないと。


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