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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第十一話 幽霊船


 船で霧の中に入ってみたが、まあそうそう幽霊船に会えるはずもなく、彷徨っている。もちろん霧の中だと視界が悪すぎるので、遠くまで見れないから探すのにも一苦労だ。霧の範囲が広いのもあるだろう。その中から大型船だとしても探すのは気が遠くなる。


「あー、どうだモモ?」


「やっぱり魔法の類では無いねぇ。何にせよ、結果としては物理現象の範囲内だね」


「自然っちゃ自然のものか……?そこら辺どうなんだ?」


「いやあ、詳しい情報はね。幽霊船に遭遇したパーティもいるにはいるんだけど、その数が少ない上に、乗り込んでもスケルトンが滅茶苦茶多いぐらいしか情報が無くてね」


「そうなんですか……」


 ショウに聞いても進捗は今の所芳しく無い様だ。まあその情報は少し前のものなので、今はもう少しあるかもしれないが……劇的な進展は無いだろう。大規模クランは共同で色々と動いていると聞いたけど、海は広いからなあ。霧のせいで視界も悪いし、効率は良くない。

 解決した後の群島の事も含めれば、1月以上のイベントとなりそうだなあ。そういえばこのイベントの終了日時決まってないし、進捗で決めるのだろうか。下手をすると未解決で終わりそうだが……まあ何かのきっかけでどんどん進むかもしれないし、そこに期待だな。


「やっぱり視界が悪いですね……」


「一応どこにいるかは把握してるんだろ?」


「一応は……けど大分大雑把なので村に戻るぐらいしか出来ませんよ?」


「村に戻れるぐらいなら上々だろ」


 視界不良な上に、海の上なので進む目印が無い。とりあえず霧の外に出たりしない様に進んでもらっている。しかし、何の変化も無いのでどうしたものやら。この霧の中では通常のモンスターとは遭遇しない様で、操船しているクルト以外手持ち無沙汰だ。ただただクルトの操船技術が上がっていくだけである。モモの探知魔法でも流石に霧の範囲が広すぎてカバー出来ないみたいだ。


「とりあえずお茶を淹れました」


「ああ、ありがとう」


 クローナは最近家事スキルを磨いている。家事スキルと言っても、実際にそういうスキルやジョブからある訳では無いが。流石に暇なのをみかねて、お茶を淹れてくれた様だ。腕を磨いているだけあって、味も中々のものだった。まああんまり違いとかは分からないのだけれど。

 クルトだけ仲間外れは可哀想なので、その間は俺と交代した。止めても良いけど、どうせなら進んで行った方が良い。ここで変な事が起きたら確実に俺のせいにされるので、細心の注意を払って進んでいく。その間10分程だったが、特に大した事は起こらなかった。未だに何も見当たらない。他のプレイヤーも船で探しているだろうに、それすら会わないとは。このゲームの海はどこまで続いているんだろうなあ、試しているプレイヤーは少なからずいそうだけど。


「何か見つかった?」


「いんや何も。今日はもう収穫無いんじゃね」


「確かにそろそろいい時間だけど……とりあえず聞いてくるよ」


 それなりに長い時間進んだが、何の収穫も得られなかった。前向きに考えれば、これだけ時間をかけても何も得られなかったという情報が収穫と言えるかな?結局幽霊船のゆの字も見当たらなかった。中々どうして規模の大きいイベントだな。

 ショウに他のみんなの意見も聞いてもらったが、今日の所はもう帰るという事で一致した。操縦をクルトに返し、近くの陸地へと向かってもらった。真っ直ぐに向かってもらったので村でも何でもないフィールドだったが、上手い事停められる様な岩場があったので良かった。収納アイテムに入れれば船も問題無いしな。出す時は気をつけないと座礁するから気をつけないといけないけど。





 翌日も船に乗り霧の中を進んでいる。全員いるので、何が起こっても対処出来るだろうけど2時間近く進んでも何も見つからなかった。


「今日も駄目ですかね……」


「どうしたもんだか」


「さっきプレイヤーの船とすれ違っただけだもんね……」


 船はこちらの物より大きく、テレビで見る漁船の様な形だった。こんな状況なのに釣りをしていたっけ。まあ何をするかは自由だから良いのだが。暇だったら今度釣りでもしてみよう。どんな魚がいるんだろうか……モンスターが釣れそうだな。

 今日も収穫無しかと思った矢先、前方の方に巨大な影が見えてきた。


「お、おいアレ……」


「あ、確実にアレだね。流石にプレイヤーでもあの規模の物を使っている所はいないはずだし。


「……確かにスケルトンの気配がするね。甲板にも中にもうじゃうじゃいるよ」


 モモの探知魔法がモンスターの気配を捉えている。アレが幽霊船か。2日目で遭遇出来るとは何とも運が良い。

 速度を落としてゆっくりと近づいていくと、船の詳細が見えてきた。幽霊船はその異名に相応しく、ボロボロなのだが何故か普通に航行出来ている。船の種類としてはガレオン船で、大砲も見えるがそれが動く気配は無い。


「で……どうする?」


「乗り込みたいけど、モンスターも多いみたいだしね」


「何なら沈めてみるかい?」


「オイ」


「あなたはそういうのは昔から変わっていませんね……」


「いや、流石に冗談だけど」


 モモの場合確実に出来るだろうから洒落にならない。というか昔からそうなのか……まあそんなに性格は変わるもんでもないか?


「でも良いんじゃないでしょうか」


「アポロさん……?」


「あ、乗り込む方です。それに甲板だけなら派手に魔法を使ってもらっても大丈夫ですし」


「そっちか……なるほどそれなら」


 一瞬船を沈める事に賛成したのかと思ったが、そういう事なら乗り込むのも楽になりそうだ。


「じゃあやるよ、【バーンバースト】」


 モモの魔法により甲板の方で爆発音が鳴った。少し待って、モモが甲板に動く気配は無くなったと言ったので乗り込んでも大丈夫だろう。それにしてもここからでも発動できるのか。


「じゃあほら、よろしく」


「おう……【空走場(アハルテケ)】」


 上に登る手段が無いので、とりあえず俺が甲板へと登る。甲板はあちこち焦げており、モンスターは1匹も見当たらなかった。あれ、ドロップ品が無いな……?


「おーい、早くー!」


「分かったー!」


 催促されたのでとりあえず疑問は置いておき、渡された縄梯子をかけショウ達を待つ。

戦闘の可能性があるのでクルトとアゲハは船にお留守番。一応護衛としてクローナも残ってもらった。梯子の長さは十分に足りていたみたいで、数分で全員登ってきた。結構丈夫だなこれ。ショウとかかなり重量あるはずだけど……まあ文句は無い。


「うわあ、凄いね」


「でもドロップ品が無いですね」


「全部無くなってしまったのでしょうか?」


「無くもないけど……」


「とりあえず進もうか」


 近くの入り口から船の中へと入る。何か目ぼしい物でもあれば良いのだが。とりあえずイベント関係の物出てこい。


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