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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第七話 再訪


「ただいま〜」


「おかえり、どうだった?」


「とりあえずこんな感じだったよ。必要な素材も思っていたより少なそうだし」


「……その分種類が多いみたいだけどな」


 30分ほどでショウが帰ってきた。差し出してきた紙には、かかる金額と、必要な素材が書いてあった。金額は予想の範囲内だし、予算的にも問題無い。


「それにしても色々と必要ですね……」


「大体は動力部みたいだけどね……外注って言っても素材は必要だし。手持ちでどう?」


「あるのもあるけど……」


「……あ、モンスターの素材は全部ありますね。数も大丈夫です」


「え」


 そう言ったのはアポロさんだった。種類が大分多いが、全て手持ちにあるみたいだった。そういえば前に、アポロさんの素材収納部屋の中を見かけた時があったが、素材の山が出来ていた様な。確かにそれならありそうだけど、必要な素材の中には俺がまだ行けないフィールドの物もあるし……流石と言うべきか。


「じゃあ……金は予定通り等分するとして、素材の方はその分の金額を各自払おうか」


「そうだな」


「別にそのまま私が出しても良いのですけど……」


「流石にそれは駄目だと思います……」


「そうですか……?」


 タダで渡されるのは色々と違う。まあその分代金の方を多く払えばと思ったが、それはそれで計算が面倒臭い。金関係はゲームでもちゃんとしないと、後々面倒事になるからな。まあここにいる面子なら大丈夫だろうけど、ちゃんとしておいて損は無い。


「じゃあ素材関係はそういう事で……あとは木材が必要だね」


「木材……耐久性は大丈夫なんでしょうか」


「枠組みは金属みたいだし、モンスターの素材で覆ったりするから現実より余程丈夫みたいだよ」


「あ、そうなんですか」


「それで木材の事だけど、量はあまりいらないみたいだよ」


「どこで手に入るんだ?」


「春イベのあの村だって」


「……特産多くね?」


「まあ森だからね。関連する産業は大体あそこら辺が携わってるんでしょ」


「そういうことか」


 一応ジャングルもあるけど、そこの木は向いてなかったりするのだろう。そういえば10番目の町の周りも森みたいな話だったが、その町も最近出来た設定だったはずだし、産業とするにはそこまで余裕が無いのかな。NPCもそこまで多くないみたいだし。


「じゃああの村に行くか」


「久しぶりですね。桜の精さんやお婆さんはお元気でしょうか」


「流石に死んでいたりはしないだろうけど……」


 途中で寿命で死んでましたなんてリアルさは流石に再現していないだろう。大体ゲームの時間軸なんて日曜夕方にやってるアニメ方式だろうし。ストーリー進行だったり、故意でもない限りNPCが死ぬ事はまず無いだろう。

 とりあえず村へ行くのは、俺とコトネさんになった。モモは村の結界が復活しているだろうからパス、クローナも危険は無さそうだから来ない。ショウはアポロさんと素材の整理をし始めたし、クルトとアゲハは……そもそも行く人数が多くても意味無いしな。まあ木材を買いに行くだけだしな、この程度じゃフラグにもなりはしない筈だ。実際村に行くのは春イベ以来なので、イベントで縁が出来た桜の精やお婆さんに挨拶をしなければ。NPCとはいえ人の縁を大切にすれば良い事が起きるはず。それにお婆さんは村長にも顔が利くので、もしかしたら木材を買う時に色々融通が効くかもしれない。


「流石に桜は咲いていませんね」


「まあ夏だしな……」



 村に到着すると、桜の木々は青々とした葉が生えていた。という事はちゃんと栄養が行き渡っているという事だ。まあイベントはクリアしたし、当たり前か。ここからでは伐採しているであろう所は分からないが、そこは知る必要は無いな。


「とりあえず……お婆さんの所に行きますか?」


「そうしよう」


 お婆さんの所の方が近いし、相談するだけならタダだ。

 お婆さんの所へと移動すると、お婆さんは家の前の椅子に座りお茶を飲んでいた。


「おや、お2人さん、やっと来た……いや早い方かね」


「え?」


 俺達を待っていたかの様にお婆さんはそう言った。どういう事なのだろうか?


「待っていたんですか?」


「少し前から探索者さんが大勢この村に来たからねぇ。聞いた所によれば船を作るだか何だかで木材を買いに来たそうじゃないか。幸い木材はお得意様に卸す分を差し引いても大量にあるから儲けさせてもらってるよ。アッハッハッハ!」


「さいですか……」


「ご、ご健勝のようでなによりです……」


 相も変わらず立場が謎な人だな。顔が利くにしても実権を持っていそうな感じだけど。まあこういう謎キャラは嫌いではないから別に良いんだが。


「それで待っていたというのは……?」


「あんた達も木材を買いに来たんだろう?まさかこの老いぼれに顔を見せに来ただけな訳があるまいし」


「あ、はいそうですけど」


「ちゃんとっておいたさね」


 お婆さんはそう言って店の奥に引っ込み、結構な量の木材を引っ張ってきた。どうやって収まってたんだ、どうやって引っ張ってきたんだ?ざっと見た感じ俺達が必要としている量プラス安全マージンぐらいという何とも丁度良い感じの量だった。聞きたい事が渋滞するんだけど。


「これは……良いんですか?」


「ウチの村の最高級品……といきたかったが、流石にそれなりの上物止まりの物しかキープ出来なかったけどね。あと探索者さん用の在庫はもう無いよ」


「いやありがたいけど……何でこんな量がピッタリなんだ?」


「おや合ってたなら良かったよ。まあ、年の功さね。あんた達はクランとかいうのにも入って無さそうだったし、そもそういう連中はもう買いに来てる。その程度の人数なら多少多めに見てもこのぐらいで十分だろう?そして船を作るならこの木が1番さ」


「な、なるほど……」


 多少知識があれは分かる事か。タイミングが良すぎて若干怖いが、ありがたい事には変わりはない。不思議さについてはその辺に捨てておこう。


「えっとじゃあ……金額は?」


「まあ……このぐらいかな」


「安い?」


「……相場ピッタリにしたんだけどね?」


 ショウが想定していた金額より1、2割安い。もしかしたら今は需要が凄いので、最近値上がりしてのかもしれないな。それならお婆さんは絶対に知っている筈だが、気遣いだろうか。びた一文まけないみたいな事も言っていたが、高騰している事を口に出さずに売ってくれるのか。この品質なら買い手はいくらでもつくだろうに。つくづく人の縁というか侮れない。全てはコトネさんのおかげだ、ありがたやありがたや。


「コウさん?」


「あ、じゃあこれで」


「毎度あり。何をするのかは知らないけど頑張りなよ」


「ありがとう」


「ありがとうございます」


 目的の木材は想定以上の物を安く手に入れられた。桜の精にも会いに行ったが、人型の姿ではなく声だけだった。まあ特に問題も無いそうなので、大丈夫だろう。

 途中でショウと合流し、ユーマに木材と素材を渡しに行った。木材が良い物なのに多少驚いていたけど、そのおかげでやる気が増した様だ。

 最初訪れた時にあった、作りかけの船はもう完成したみたいなので、俺達の船の作業に早速入ってくれるみたいだった。完成は早くても3日後らしい。

 それまではイベント限定のモンスターでも見に行こう。


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