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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第六話 充実したカタログ


「……思ってたより種類があるな」


「スペックはともかく、船の構造によっては色々と変わるからな。それに動力の方も迷宮のお陰で改良されているし」


「ここにも影響が……万能すぎないか?元々は銃士系統用だろ」


「まあ銃も機械みたいな物だし……」


 あの迷宮で採れる機械のパーツはどれだけ汎用性があるのやら。いつの間にか船にまで使われているし、探せば他の所にも使われているんじゃなかろうか。便利なのは良いけど、便利すぎるのは果たしてどうなのだろうな。


「とりあえずMPで動くやつにしたけど……やっぱりMPでしか動かないんだよね?」


「そりゃあな。燃料を使うのは効率がなー……元手がタダのMPを使う方が余程マシだな。それに長く動かすなら中型船をおすすめするぞ。俺は作れないけど」


「ああ、そうなるのか」


 燃費は良いみたいだが、小型船の範疇は出ないか。まあモモのMPの量は莫大だから、このイベントで使う分には問題になる事は無いだろう。他に使う機会は……あるのかな。


「ああそうだ、武装はどうする?」


「あって損は無いだろうけど……」


「使う機会はあるんでしょうか……?」


 海にはモンスターが普通にいるので、迎撃用としては損は無いだろう。しかし、作る予定なのが小型船なので限りもあるだろうし、そも目的は幽霊船に向かう事だ。幽霊船は大型船らしいので、小型船に付いた武装を使う事はまず無い。そもそも遠距離で言うならモモが……あ、またモモ頼りだ。単体での汎用性が高すぎるのがいけない。まあこの場合はしょうがないか。


「本当に使うかな……例えばどんな物があるんだ?」


「バリスタとかだろうな。砲は小型船には取り付けられねぇし。バリスタもつけれて1基だろうな。それに船の形状も限られてくる」


「……いる?」


「いらないな」


「いらないですね」


「じゃあ無しだな。迷宮産のパーツで改良はされてるけど、威力もコスパも微妙だし」


「やっぱりいらないね」


「そうだな」


 ご縁が無かったという事で、武装の件は無しになった。となると、あとは外観とかだな。


「MPの……まあエンジンで良いか。それは大きさに違いはあっても形状に差し支えは無いから大丈夫だ。まあ外注になるからあんまり自由は効かないけどな。カタログは……これか」


「どれしようか」


 ざっとみただけでも2、30種類はある。しかも外見に至っては100に近い。細部が違うだけのもあるけど、それでも多い。帆船みたいなのから、ユーマが言った通り金持ちのクルーザーみたいなのまでよりどりみどりだ。需要は無かったのに、何でこんなにあるんだか。多すぎて悩むなあ。


「……漁船みたいな物まであるんだな」


「漁なんて出来たの?」


「ああ、一応……そのページの1番上の奴はNPC相手に1回売れたぞ」


 漁船はもちろん漁を行うための物だが、この場合モンスターがかかったりするのだろうか?NPCだとどうどうするんだろうな……中々に謎だ。

 小型船はクルーザーみたいな物しか無いと思ったが、テレビで観る様な個人所有の漁船も小型の内に入るのか。リアルの小型船の定義は知らないけど、このゲームだとそうなっているみたいだ。

 参考までに見せてもらった中型船の仕様は、思っていたよりも規模が大きく流石にこれは1人では作れなさそうだ。ユーマが小型専門なのはそういう事だろう。


「どうせクルト君達も乗るから1回持ち帰って相談する?」


「確かにその方が良いかもな」


「それコピーはいくらでもあるから持っていっていいぞ。えっと……ほらこれ、大体見積もり出せるから」


「ありがとう、それじゃまた来るよ」


「おーう」


 大分時間がかかりそうだったので、一旦持ち帰ることになった。ユーマも作業があるだろうから長くいると迷惑だからな。種類があると多少は拘りたくなる。

 屋敷に帰り、概要を話すとモモとクローナは辞退した。自分の事ならまだしも、船ぐらいなら何でも良いとの事だった。という訳で、新たに加わったのは、クルトとアゲハ、そして丁度休憩中だったアポロさんだ。


「あの、僕達はお金出してないですけど……?」


「いいよ別に。どうせみんな乗るんだから」


「多すぎるから、とりあえずの候補を選出したいってのもあるし」


「そうですか、それなら」


「あの、私も何でも……」


「一応見てみましょうよ」


「……そうですね、じゃあ」


 さて外観決めだ。この大量の紙の束の中から選り分けなけなくてはいけないので、人数分に分けて、それを回し読みしていく。自分が良いなと思った物をメモしておき、その後話し合おうという事だ。


「そういえばアポロさんは1人だとどうするつもりだったんですか?」


「最初はモータボートの様なタイプを買おうとしてました」


「ああ、なるほど……というかモータボートまであるのか。充実してるな」


「これに書いてあるのは小型船でもまあまあ人数乗れる物だけだからね」


 まあ種類が多いのはプレイヤーが趣味で作っているのもあるんだろうな。まさかこんな形で役に立つとは思っていなかっただろう。


「けど効率の話を聞いたら思っていたよりMPが必要になったので、何処かのクランに同乗させてもらっていたかもしれませんね」


「魔法職ですもんね、向いているのは」


「その内バイクとか出てきそうですね」


「……可能なのか?」


「多分……ジョブの仕様を見てみた感じ、出来ない事はなさそうでした」


 バイクか……技術革命起こりすぎじゃないだろうか。クルトはその方面は趣味じゃないので試していないそうだが、可能性は十分にあるみたいだ。探せば趣味のプレイヤーは必ずいるだろうからいつか出てきそうだな。まあそれもMPで動くだろうから使えるプレイヤーは限られてきそうだけど。それに該当するプレイヤーは魔法職でMPを戦闘に使うから実用性は低そうだな。ポーションの無駄にもなりそうだし。

 しかも地上で動く物は効率がやたら燃費が悪くなりそうな感じらしい。冷却がどうやらこうやらとかだそうだが、そこはクルトやショウに聞いても分からないか。

 本来は銃士系統の装備に使う物だからな、ジャンク品みたいな物だろう。改良しているプレイヤーもそこは想定内らしいので、趣味100パーセントなんだろうな。何にせよロマンがあるので、頑張ってもらいたい……使う機会は無いだろうけど。


「さて、これで1周したよね?」


「ああ。一応良さそうなのにチェックは入れたけどな」


「それでも多いですね」


「少し形が違うだけの物もありましたからね」


 自分達がメモした紙を見せ合い、被っている物がないか確認していく。これで、全員が良いと思った物が1つでもあればそれに決まるのだが、母数が多いせいでチェックした数も多く、確認作業が面倒臭い。


「束を分けたのは失敗だったかな……」


「見ていた順番が違いますからね」


「けど1人ずつ見てたらもっと時間がかかったんじゃない?」


「それはそうだけどな」


 まあ多少時間はかかっても、全員が納得出来るなら許容範囲だ。

 擦り合わせていって、最終的に決まったのはクルーザータイプの物だった。全員チェックをつけている物があって良かった。しかもその1つだけだったから即決だったしな。乗る人数が人数だから、快適さも欲しいので当然の結果だろう。見た目がファンタジー世界から少し浮いてるのは気にしない。

 外観は決まったので、ショウがユーマに必要な素材を聞きに行った。どのぐらい必要になるかな。


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