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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第四話 処置無し


「えっと、どうしましょうか?」


「まあ……村で聞き込みとかだろうけど」


「じゃあ僕は知り合いにどうなってるか聞いてくるよ」


 そう言ってショウは足早に村へと向かう。考察班やらその辺がどうなっているかはショウに任せておこう。

 俺達も村に向かい、様子を見に行く。状況把握はしておきたいし。


「大丈夫ですか?」


「うん、一応……」


 アゲハはまだどんよりとしている。まあそうすぐには立ち直れないだろうけど……何か気分転換になる事でもあれば良いんだけどな。

 村に入ってみたが、特に直接的な被害がある訳でも無さそうだ。こんな状況だからか、見かける村人の数は少ないけど、特に悲壮な表情ではなく、この霧にうんざりしているといった感じだった。


「特に揉めていたりはしないみたいですね」


「春イベみたいな事は無しか」


 それなりに規模の大きい村みたいだ。プレイヤーが多いので、活気が有る様に見えるが、村人がそも少ないからな。

 村人と話しているプレイヤーがいたので、盗み聞きしてみるとこの村の漁は比較的浅瀬で行われているので、霧があっても注意していれば何とかなるみたいだとか。イベント開始は今日だが、少し前から霧が発生していたという設定にもなっているらしい。村人も原因は分からないそうで、どうにもならない様だ。

 この前のクエストのせいで、村に村人の知らない何かがあるんじゃないかと勘繰ってしまう。まあ流石に同じ様な事は連続で起こらないだろう。偶然という可能性は十分にあるし、判断するには時期尚早だ。

 とりあえず村を1通り回り、桟橋へと着いた。ここはまだプレイヤーも少ないので、息がつける。この辺になると多少霧も深くなってきたので視界も悪くなってきた。太陽の光も当然遮られているので、夜みたいな感じだ。


「それでどうだ?」


「うん、魔法由来じゃないねぇ……魔力は多少感じるけど、結果というか現象に近い……?」


「うん……うん?」


「要するに不思議って事さ」


「要しているのか、それは?」


「全く役に立ちませんね……」


「じゃあアンタがやってみなよ……!?」


「やめろやめろ、頻度が多い……!」


 改めてモモに聞いてみたが、大した事は分からないか。まあすぐに原因が分かったら苦労しないよな。春イベの時は桜の精を拉致してきたからな……あの時は色々積み重なった上での事だったのだろう。

 とりあえず今は他に何も思いつかないので、ショウを待つ。別れてから結構経っているので、数分も経てば連絡が来た。今いる場所を伝えたところ、割とすぐに来た。


「とりあえず概要を聞いてきたよ」


「じゃあ頼むわ」


 ショウの説明によると、とりあえず村が原因という線はなさそうとの事だった。何故それが分かるかというと、船で霧の中を進んでいたプレイヤーが大型船を見つけたそうだ。その船はボロボロで今にも沈みそうなのに、何事も無く進んでいったそうだ。追いかけようかと思ったらしいが、進路方向やら速度やらの関係で見失ったらしい。


「幽霊船か……?とりあえずホラー路線か」


「まあアンデッドとかスケルトンみたいなのが出てきそうだよね」


「ガイコツの海賊……」


「海賊かどうかはまだ分からないけど……」


 話の続きとしては、今の所ストーリーを進めるヒントは全く見つかっていないそうだ。そも村に実害が無いので、何処を探せば良いのか全く分からないしな。強いて言えば、その幽霊船を調べる事だろうけど、今船無いし。

 あとは、モモ達がいるので若干濁した言い方だったが、ストーリー自体は全プレイヤー共通で進むみたいだ。村長にパーティ毎に訪ねてみたら、さっきも話したと門前払いを食らったらしい。迷惑だったろうな……まあプレイヤーだからしょうがないか。

 それにしても方式は春イベと違うんだな。春イベはパーティ毎に辻褄合わせが上手い事してあったからな。という事は、プレイヤー全体でかからないと駄目な規模の何かが起きるのか……まあレイドだろうな。


「という感じだね」


「お疲れ様です」


「じゃあ船が無いと今は何も出来ませんね」


「そうだな……というか全然素材とか集めてなかったよな?」


「船の種類によっては必要な素材が全く違ったりするからね。決めてからじゃないと大損こくから」


「そんなもんか」


 とりあえず俺達が出来る事は無い事が判明した。船は作ってもらえる事になっていて、そろそろ順番が回ってくるみたいだ。

 順番が回ってきても素材が無ければ話にならないので、進展が無い今の内に集めておきたい。


「そういえば、モモが海凍らせて船に近づくとか出来ないのか?」


「見えているなら出来るだろうけど……何処にあるか分からないんじゃ延々と彷徨う事になるからねぇ。現実的じゃない……それを言うならマスターは空を歩けるじゃないか」


「あー……MP全然足りないだろうな」


「アンタが飛べればまた違ったんだろうけど」


「神器が無いですからね。そもそもここは海ですし」


「ああ、そうだったか」


 神器があれば飛べるのだったか。というか海だと何なのだろうか……まあ今は関係無いから聞くのはやめておこう。

 【空走場(アハルテケ)】はな、モモ並みのMPがあれば違うのだろうが今の俺だと絶対途中で海に落ちる。MP無しで足場を固定出来れば良いのだが、流石に難しすぎる。大人しく船を作ろう。


「では、私は別の海に行きますね。イベント限定モンスターを狩りに行きたいので」


「あ、どうぞどうぞ」


「お気をつけて」


 アポロさんは、いつもの様にソロでモンスターを倒しに行った。とりあえずは各自好きな様に動く方が良いだろうしな。


「じゃあ……僕達も屋敷に戻りますね」


「そうだな……気をつけてな」


「はい。ほらアゲハ行くよ」


「うん」


 そう言ってクルトは未だ意気消沈しているアゲハを連れて屋敷へと戻って行った。気分が上がる様な事が何も起きてないからな、しょうがない。

 残るはプレイヤー3人、NPC2人だ。今日はモモも単独行動はしないみたいで、俺達についてくる様だ。


「じゃあ……どうしようか」


「村人に何か聞いても意味無いだろうしな……」


「私達も屋敷に戻りますか?」


「……それもそうだね」


 よく考えたらここでする事は無いのだから、いる意味は無かった。歩きながら村を見てみると、霧が無ければ普通の村だな。流石に変な歴史があったりはしないか。


「おわっ」


 そうして歩いていると、向こうから走ってきた子どもとぶつかった。村の子どもか、いつもと違ってプレイヤーが多いから避けきれなかったか。


「大丈夫か?」


「あ、うん大丈夫……」


 ぶつかった子どもを起こして、怪我が無いか見る。大した怪我は無さそうだが、一応コトネさんが回復魔法をかけてくれた。


「ありがとう、お姉さん……あれ、僕のお守り」


「これの事かい?」


「うんありがとう、お姉さん」


 その子どもはモモから何か球体の様な物が入った袋を受け取り、首にかけ直した。その後はまた走って行った……また転ばないと良いのだが。


「お姉さん……そういう歳では無いでしょうに」


「それ、そのまんまアンタに返すよ」


 また始まった。何とかならないのかなー……ならないだろうな。放置するしか無いのだが、もう少し素直になったらどうなのか。


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