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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第三話 残念!


「それで、イプシロンさんも素材集めに」


「そうそう」


 どうせだから、ショウも呼んだ。急ぐ事では無いし別に多少話すなら大丈夫だろう。

 周りを良く見れば、ポールスターのエンブレムをつけているプレイヤーが多い。クラン規模だと集まるのも早そうだな……いや、人数も多いからそうも行かないか。


「まあモンスターがいる事を除けば良いリゾート地みたいなものだからね。しかも経費だったりはほぼ気にしなくて良いし。そういうわけで、他の男メンバーも嫌々やっている人はいないよ」


「確かにそう見たいですね」


 モンスターと戦っていたり、採取しているプレイヤーの中で嫌そうな顔をしている者はいない。雰囲気は普通の素材集めといった感じだ。

 イプシロンさんの言う通り、家から1歩も出ずに海に行ける。この中ならリアルとほぼ変わらない海が感じられるだろう。

 それに、水着装備を作るのに必要な金であれば、少し時間を取ればどうにでもなるか。ステータスのおかげで、不自由無く動けるし、死んでも死なないし。


「そういえばイプシロンさんの所は船はどうするんです?」


「ああそれはね、それなりのをもう所有してるんだよ」


「へ?」


「前にクエストで必要になってね、その時に色々と余裕があったから作ってもらったんだよ。もしかしたら夏イベで使えるかと思ってたけど……本当に使う機会があるとはね」


 まさかの準備済みとは。流石は大手クランだなあ。分類としては大型船らしく、その船を買う余裕があるとは。対してこちらは小型船……まあ少し無理をすればもう少し大きく出来なかないが……張り合うことでも無いか。


「イプシロンさ……ん?話してるとこ悪いですけど、場所移しますよー?ここも人増えてきたんで」


「あ、うん分かったよ、すぐ行く。じゃあ僕はこれで……あ、あっちはまだ行ってないから少し多いと思うよ」


「あ、どうも」


「ありがとうございます」


 ポールスターでは無いプレイヤーが増えてきたので、レベルが高いイプシロンさん達は行きづらい場所へと移動するそうだ。

 ここは採り尽くした訳では無いし、少し経てばまたリポップする。人数の多さで大量に集められるイプシロンのところは集め始めてしまえば移動しづらい場所でも何とかなるだろうし。

 イプシロンさんにあまり人がいなくて、素材もそれなりにありそうな場所を教えてもらったので、そちらへと向かう。確かに、こっちの方が見つかりやすかったので、効率も良さそうだ。






「あと何個?」


「えーと……?」


「あ、今ので全部ですね」


「そうなの……やっと終わったね」


「まあ30分ぐらいだけどな……」


 正確に言うと40分に近いか。まあ素材集めとしてはすぐに済んだ方だ。一応もう1度集めた素材の数を確認する。


「まあ合ってるか」


「そうだね、じゃあ戻ろうか」


 屋敷の方へと戻ると、女性陣はまだ談話室で話しているみたいだったので、アゲハの部屋に素材を置いておいた。素材の見た目からして嫌がらせの様な感じになったが……まあ分かるよな、多分。

 クルトは鍛冶場に行ったので、俺はショウと一緒にレベル上げだ。






 日は飛んで、イベント当日。全員で行こうという事になったので、今はまだ屋敷にいる。今日は全員予定が入ったりはしていないみたいなので、すぐ集まった。

 流石にここでもう水着のメンバーはいない……というか、まだ水着装備を貰ってすらいない。まあ現地の方が良いよな、ちょっと操作すればすぐ変えられ……モモ達は別か。まあどうにでもなるよな。


「全部持った?」


「持った持った」


「楽しみ……!」


「そうですね」


 この中だと、アゲハが1番テンションが高い。クルトによると、リアルで住んでいる場所の関係から海に行った事が無いらしく、そのせいだろうとの事だった。内陸部かな……まあ交通の関係もあるし、まだ小学生ならそういう事もあるよな。

 リアリティが凄いから、満足する確率は高いだろう。俺も海岸フィールド自体は行くのは初めてだ。話になった事はあっても、結局行かなかったからなあ。


「それで、行くのは何処の……?」


「ストーリーが進む村の所で良いでしょ」


 そういえばストーリーって言っても、パーティ単位で進むのかな。春イベの時は何とかなる様になってたけど、海だと開放的だからな。まあ着けば分かるか。






 そもそも海、それもそこが砂浜なら、青空の元強い日差しが水面を照らしているイメージが強い。仮に曇っていて日差しが遮られていると、それでテンションは駄々下がりになるし……まして霧が立ち込めていれば、そのテンションは天から地へと落ちる如く下がるだろう。


「なんてこった……」


「これは……」


「うわあ……」


 はい、着いた海には霧が立ち込めており何とも怪しい雰囲気を醸し出している。全くもって夏という感じは見受けられない。

 1番楽しみにしていたアゲハは四つん這いで項垂れている。orzを綺麗に表現しているなあ。周りにいるプレイヤーも同じ様に顔が死んでいる。

 確かに楽しみにしてからのこの状況は落ち込むだろうな……というか本当に酷い状況だな。


「告知詐欺じゃね……?」


「うん……あーけど、薄ら島っぽいものも見えなくない?」


 ショウがそう言うので、霧の向こうを目を凝らして見てみる。確かにそれっぽいものが見えなくもない。

 しかし、告知だとあんなに海を楽しんでねって感じだったのに……運営はとりあえず告知に嘘を書く趣味でもあるのか。


「モモどう思う?」


「いや、聞かれてもねぇ……とりあえず魔法やその類では無いみたいだけど」


「そうか……クローナは?」


「すみません、そういうのは不得手なので……」


「まあそうだよな……」


「あんたは割と脳筋だからねぇ、神器が無い今は完全にだね」


「それは、喧嘩を売っているのでしょうか……?」


「ああ?好きな様に受け取れば?」


「良い度胸ですね……」


「また始まった……」


 睨み合っている2人は置いておいて、また海に目を向ける。戦闘にはならないだろうから、放置しても問題無い。

 こうして見ていても立ち込める霧は一向に消える気配は無く、今日たまたまとかそんな訳では無いのが分かる。何かを解決しないと晴れないのだろうな。


「うーん……ホラー系かな?」


「ホラーかあ……苦手な人いる?」


 みんなを視線を向けて反応を見るが、手を挙げる人はいなかった。まあ急に出てくるタイプだと驚いたりはするだろうけど、ホラーが駄目という人はいないか。

 暗所だが閉所が苦手らしいクローナはどうかと思ったが、ホラー自体は大丈夫みたいだ。というか「ホラー」が理解出来るのか、まあ面倒だから通じる様にしているのかな。


「うう……水着が、水着が……折角……」


 アゲハは立ちはしたが、立ち直ってはいない。気持ちは分かるが、こればっかりはどうしようもないからなあ。


「あー、今知り合いから連絡が来たんだけど……何処の海も曇ってるみたいだよ。それにイベントモンスターがうじゃうじゃいるらしいから海水浴は無理だね……」


「マジか」


 夏気分の綺麗な海はしばらくお預けか。ショウの追い討ちを受けて、アゲハのテンションが更に下がった。ヘタをするとこの状況が解決するまでこのままかもな。


「け、けど霧を何とかしたら告知通りの海に戻るって事ですよね?」


「まあそうだろうけどね……」


「規模が規模だからな」


 季節イベントだし、数日は最低でもかかるだろう。それに、規模からしておそらくパーティ単位ではなく、プレイヤー全体でストーリーが進むのだろう。その場合は数人が頑張った所でどうにもならない。

 季節イベントは2回目だが、今回もひねくれた始まり方だなあ。


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