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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第六章 夏だ!海だ!漠漠濛濛。
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第一話 夏休みの計画


「あ゛

「いや座ってから5分も経ってねぇよ。せめて5分涼ませてくれ」


 現在、この町の図書館におります。夏休みに入ったわけだが、課題がまだ終わっていない。意外と量が多かったんだなあ、これが。なので、いつもの面子で集まってやろうとなったのだが……外がクソ暑い。予想最高気温が35度って何だよ、死ぬわ。しかも翔斗が席を見つけてすぐに始めようとする始末。流石に少し涼ませて欲しいものだ、5分経ったらちゃんとやるから。

 課題の方は2、3時間集中すれば終わる量だ。夏休み前に進めておいたのが功を奏したか。結果としては1時間半で終わった。長期休みの課題の最短終了記録だな、こんなに早く終わるとは。


「んで、予想だと今日なんだっけ?」


「そうそう、今日明日辺りには告知が来るはずなんだけど……まだ来ないね」


「まあ予想だしな」


「それじゃあ夏休みの予定でも決めようよ」


「あ、海の事ですか?」


「そうそう」


 海の話か、まあ課題が終わった今ならいつでも……いやイベント初日は駄目だ。イベント期間でもずっとログインする訳ではないから、その時でも良いが、初日はちょっとな。1日潰れるぐらいで遅れを取りすぎる事は無いだろう。


「じゃあ2週間後で良い?」


「何故いきなり日にち?」


「ネットで調べたらそこ辺りが多少空いてるってさ」


「それソース大丈夫……?」


 池田が場所も決めずに日にちから決め始めた。別に2週間後のその日に何かある訳でも無いが、何故いきなりその日なのか。というか空いているという言い方をするという事は、場所はもう決めているのか?

 まあ誰もその日には不都合が無いみたいなので、その日に決まった。決め方がアバウトな気がするけど、池田が立てた予定は大体上手くいくから気にしないでおこう。それより、行く海はもう決まっているみたいだった。


「いや何も聞いてないんだけど」


「言ってないからね」


「え、僕も聞いてないんだけど」


「マジか」


 まさか翔斗まで知らされていなかったとは。それに反応を見る限り、西田さんと坂下さんも知らされていないみたいだ。色々といきなりだな、こっちも交通費とか考慮しなくちゃいけないんだが?


「そう言うと思ったので……こんな物を用意しておきました」


 何をするのかと思ったら、プレゼンをし始めた。取り出したスケッチブックには、目的地までの交通費など、予想される諸経費が綺麗にまとめられており、その金額は思っていたより安かった。それにその他面倒事に関しても色々と考慮してあり、今立てられる予定としては万全ではなかろうか。元々反対の理由は無かったが、それでもぐうの音も出ない。


「……それ、いきなり出すんじゃなくて予め言っておけば良かったんじゃないか?」


「いやこっちの方が面白いと思って」


「百合さん……」


 まあ変なサプライズとも言えない何かをするのは翔斗と池田の持ちネタだから良いんだけども。知らない西田さんは……あれ、意外と動じていない。


「少し前に似た様な事がありまして」


「あ、もうすでに」


 経験済みでしたか、それなら良いか……良いのか?まあこれで海については予定が立った。ほぼ池田が立てたが、海について言い始めたのが本人だからな。


「あ、来たみたい」


 翔斗がそう言うので、端末で公式ページを開く。すると夏イベントの告知ページが追加されていた。


『〜新イベントのお知らせ〜


探索者の皆様、8月5日より新イベントを開催いたします。お題は季節にちなみ、「夏」。

現在実装されている海、海岸フィールド全域が舞台となります。最初に南西の海岸フィールドにある村に訪れる事をおすすめ致します。

 更に、村がある海域には群島がございます。もしかすると財宝が眠っているかもしれません。もちろんイベント限定のモンスターも出現致します。水辺で効果を発揮する装備を作れる事が出来るでしょう。

 晴天の元、一面に広がる海をお楽しみ下さい。

 探索者の皆様の旅路に幸多からんことを』


「……まあ春イベの時よりは主旨が分かりやすかったような」


「慣れただけかもね」


「これは……海で遊ぶか、宝探しという事でしょうか?」


「普通に考えればそうかもね」


 宝探しか、宝の種類にもよるけどなあ……宝探しなら今回はパーティ毎という事も無いだろうし、1番乗りみたいな事は無理かな。


「普通?」


「いや、運営が素直に書いてある事をするかなって」


「確かにそうですね」


「……それもそうだな」


 春イベントは、最初は桜は満開じゃなかったからな。今まで行った季節イベントはいずれもそうなっていたらしいし、鵜呑みにするのは不味いか。


「とりあえずは、船が必要か?」


「んー……そうかもね。船関係はNPC側はそこまで発展してなかったはずだから、馬車みたいなのは生まれないだろうし。どうせなら小型の物を作った方が色々便利じゃない?」


「そうですか……じゃあプレイヤーメイドですね」


「忙しくなりそうだなあ、その人達」


「そうか、じゃあ早速連絡入れとかないと。確か船作ってたはずだし……ちょっと外すね」


「おう、よろしく……あいつの交友関係なら大体の事出来そうだよな」


「丁度良く船をつくれる人がいるみたいですからね……」


 端末を持って、翔斗は席を外した。交友関係の広さには相変わらず目を見張る。上手くそのプレイヤーに渡りがつけば良いのだが。そうなると、後は材料を揃えるだけになるからな。


「ふーん、ゲームの中も海なんだ。楽しそうだねー」


「……あの、何故百合さんはゲームをしないんですか?嫌いという訳でも無さそうですけど」


 池田が興味を示したのに疑問を持ったのか、西田さんが尋ねた。池田がオンラインゲームをしないのはなあ。


「あー……陽葵ちゃんには話してなかったっけ。いや、前はやってたんだけどね。人間関係でちょっと巻き込まれて、嫌になっちゃったの。今は偶にオフラインゲームはやってたりするけど……「◯◯」って知ってる?」


「あ、知ってます、というか持ってます」


「あ、本当?」


 池田は本当に巻き込まれただけだからなあ、アレは。ゲームの中のちょっとした騒ぎ程度で済んだんだが、オンラインゲームを忌避する様になるには十分なものだった。まあトラウマになったりはしていないから、趣味が少し変わる程度で済んだのが良かった。

 今は1人用のオフラインゲームを少しするぐらいだから、一緒にゲームをしたのはその時以降無いな。

 というか、その持っているゲームの話で盛り上がっている。まあ掘り下げる話でも無いから良いのか。

 それから数分すると翔斗が戻ってきた。


「いやー、何とか連絡ついたよ。良かった良かった」


「どうだった?」


「1件待ちみたいだけど、まあそのぐらいなら全然大丈夫でしょ、今から作るみたいだし」


「1人みたいですけど大丈夫なんですか?」


「そこはゲームだし……あと小型専門なのもあるんじゃない?そこは詳しくないからあんまり分からないけど」


 聞いたところ、小型と言っても金持ちが乗ってそうなクルーザーぐらいの大きさはあるそうだ。それを1人で作るのか……まあゲームだしな。それにそのぐらいの大きさがあるならウチのメンバーはみんな乗れるだろう。


「まあ素材とか集めないといけないけどね」


「それはまあ、そうだろうな」


 夏イベントが始まるまで日にちがあるし、それまでに集めれば良いだろう。

 そういえばクローナの装備も近々完成するみたいな事をクルトが言っていたな。果たしてどんな感じになったのやら。


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