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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第五章 過去の遺産の、清算を
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第二十九話 また俺か


「そもそも妾達王族は昔、アルカディアにいたそうなのじゃ」


「……へー、アルカディア」


「もしかして聞いとらんかの?」


「そうだね」


 「アルカディア」というものが何なのか全く分からない。色々と前提としての情報が足りなすぎるので説明が欲しい。


「そうじゃの……アルカディアというのは神が住まうという城……それも空中にあると伝わっておる」


「今もあるでしょうね……落ちていないでしょう」


「未だに何処かで浮いてるんだろうさ」


「空中城か……」


「空にあるなら見えそうなものですけど……?」


「物理的には見えない様にしてありますからね……もしかしたら今は真上にあるかもしれません」


 真上か……無くは無いが、流石にそれはあからさますぎるかな。それにしても空に浮かぶ城か、ロマンあるな。もしかしてそこにガブリエルや他の天使がいるのだろうか。


「どこにあるか分かったりしないのか?」


「魔法じゃ分からないし……あんたも権限はもう無いんだろう?」


「ええ。そもそも「聖水」がありませんし」


「じゃあ探し出すのは無理か」


「では続けるぞ。それでその城におったそうじゃが、2000年前の大災害の折、無事に地上へと降りる事が出来た子孫が妾達じゃ。まあその血は大分薄い上に、元々高貴でも何でも無いがの……あ、他所で喋ってはいかんぞ?」


「話さねぇよ……というか話せねぇよ」


「あの状況で生き延びた者達がいたとは思いませんでした」


「どんな状況だったんだ?」


「……気づいたら後ろに死神が立っているというか、そんな感じです」


「いや例えじゃなくて……言えないのか」


 また条件が足りません案件か。こうなってくると、過程にあるものすっ飛ばしてこの状況になってるみたいだな。


「シャーロットさんは何が起きたか知らないのですか?」


「記録が一切残っていないのじゃ。こうしてここに来た理由の1つは、その事も聞きたかったからじゃの」


「何も……?」


「そう何もじゃ」


「まあそうだろうねぇ。端から端まで隠滅しただろうから。残っていたとしても、どこにあるやら」


「確かにしましたからね。あの時は……それが最善だったと思うのは今も変わっていません」


「あれは……肯定はしたく無いけどねぇ」


「え、当事者?」


「はい」


 今度はあっさりと話したな……いや、具体的な事は言っていないからモモ達側としてはセーフなのか?話し方から察するに、その記録を隠滅したのは天使側で、悪魔側は黙認していたみたいな感じだろうか。いまいち立ち位置がよくわからない。

 それに、シャーロットがその子孫だと言うなら、記録が残っていなくても何かしらの手段で残す事は出来たと思うのだが……謎が深まるばかりだな。


「こちらの話は……詳細に話すならまだあるが、こんなものじゃの。出来れば、お聞かせ願いたいのじゃが」


「そうですね、話せるなら話したいのですが……」


「そこら辺の制限どうなっているんだい?」


「……昔のままみたいですね。これ以上は厳しくはならないでしょうが……緩くもならないでしょう」


「はあ、アレは一応ちゃんと管理はしているみたいだね……今はまだ無理か」


「……そうみたいじゃの。そこはしょうがないとするしかないか」


 この前のバレると言っていたのはこれか。というか、話せないのは分かるのだが、もう少し分かりやすく……いや、話せないからこそ分かりづらい説明に……ああもうごっちゃになってきた。運営さん、どういうルートだと分かりやすいんですかね。メール送ったら意外と返答来たりするかな……期待しない方が良いか。


「理解した?」


「いや曖昧過ぎるし……」


 シャーロットも聞きたい事に関して満足のいく説明が得られないと分かったようだ。全部終わってから明かされるタイプの情報なんだろうな。

 そういえば、このゲームは終わりとかあるんだろうか?サ終じゃなくてストーリーの方だ。一応、天使と悪魔がメインで進んでいるが、その先は……まあ後付けでどうとでもなるよな。


「そういえば、騎士団長はどうしたんだ?モモの時はいただろ?」


「ああ、姉様達なら父上や兄様と一緒に禁書庫を調べ直しておるぞ。ここに来たのが妾なのは、まあお主達と1番関わりがあるからじゃの」


「なるほどな」


 禁書庫という事は、何かしら記述がある物が無いのか調べているのか。王族が直々に……いや禁書庫だからか。


「……今更じゃが、天使殿の名前を聞いておらんかったの」


「すみません、私にもう名前はありませんので……」


「ふむ、それはすまんかった……で、どうするんじゃ?」


「何故俺に聞く?」


「お主の案件じゃろ?」


「ええ……?」


 確かに、俺が起点みたいなものだろうが……ショウ達に視線を向けると逸らされた。まさかこれは、俺が名前を考えるパターンか?ネーミングセンスを俺に期待しないでくれ。


「是非お願いしたいと思うのですが」


「え、いやー……そういうのはモモの方が向いてるんじゃ」


「絶対嫌だけど」


「私もアスモデウスの考えた名前を名乗るのは……」


「えー……」


 ここで、仲が悪いモードが発動するのか。いやまあ、それを抜きにしても古い付き合いの奴に名付けられのはアレか。ええ、本当にどうしようかな。


「まあ……今はええの。とりあえず、基本的に法さえ守ってくれさえすれば、これまで通りで構わんからの」


「ああ、分かった」


「……では、お暇しようかの。お邪魔したのじゃ」


 とりあえず用件は終わった様で、シャーロットは帰っていった。あちらさんは結局大した成果は得られなかった様だが、それはこっちもだから仕方がないな。


「ああそうだ、イプシロンさんにも色々伝えないとね」


「そうだった……よろしく」


「まあそうだけどさあ……」


 一応協力というか、情報クランやら何やら関係はイプシロンさんに丸投げしている。正確にはイプシロンさんとショウにだが。関わっている俺やコトネさんの名前はあちらも知っているみたいだが、得た情報は全て伝えているのでこちらに接触してきた事は無い。まあ取得した情報が抱えきれるレベルじゃないからね、これで自由にプレイが出来るなら安いものだ。

 まあ丸投げしているせいであちらさんがどの様に動いているのかは知らないが、今の所面倒な事には巻き込まれていない。

 ちなみにエクストラスキルの詳細は話さなくても大丈夫だった。経緯が経緯なので、その存在自体は隠せなかったが、そこはプレイヤー個人の秘密という事ですませてくれているのかな。


「イプシロン……?」


「ベルゼバブの契約者だよ」


「え、かわいそうに……」


 顔も知らないのにいきなり憐れまれたイプシロンさん……アレの食事の量を意味しているのか、もっと他の意味があるのか。まあ食費は確かにかかっていそうだな。一体1日いくらかかっているのだろうか。


「あの、黒……天使さんは、今どの様な状態なんでしょうか?」


「そういやそうだ。流石に見た目だけじゃ無いだろう?自分の事ぐらい多少は分かるはずだけど……」


「翼が黒かったですし……堕天使みたいな感じですけど」


「堕……?確かにその言い方は合っているかもしれませんね。状態としては……「聖水」が無いだけで、特に変わりは」


「そうなのかい……なら武器でもあれば多少の役には立つか」


「若干腹が立つ言い方ですが……反論しようが無いですね」


 スクロールでも使えばいくつかの魔法は使えるはずだとモモは言うが、それだとモモの下位互換でしかないからな。

 あとは、堕天使自体は存在しないのか。まあこの天使が初の事例みたいだし、名前の付けようがなかったのだろう。


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