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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第五章 過去の遺産の、清算を
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第二十話 責任者


「はあ……終わった……」


「お疲れ様……威力凄かったね」


「あ、どうも……タイガの持ってるエクストラスキルも相当だと思いますけど」


「まあそれを言われるとね」


 色々と消費した物はあったが、それでも2人で5体満足で土地神を倒す事が出来た。消費したと言っても大体はタイガの弾薬だが、それはまあそういうジョブだし。

 思い返してみれば、若干余裕があったような気がしないでもない。とにかく村に被害を出さずに討伐できた時点で万々歳だろう。


「でもこのスキルのせいで壊しちゃったし……メリットが無限弾の割には制限多いんだよね。銃と弾の制限もあるし」


「そうなのか……まあそのぐらいはするか」


「制限多いだけで全然強いから良いんだけどね。コウが使っていた……あれ魔法?刀で出る威力じゃないと思うんだけど。『戦王』とかでも出せるかどうかじゃない?」


「あー、ちょっと迷宮で手に入れて……」


 何時ぞやのカリファがでかいクワガタにお見舞いした一撃を思い出した。確かに結果だけ見ればアレに近いよなあ。とんだ高威力の攻撃方法を手に入れたもんだ……条件付きだけど。

 『反剋』はプレイヤーに使ってもほとんど意味が無いはずなので、詳細にでは無いが、経緯など大体のことを教えた。試している時にクルトに向けてみたら判定無しだったし……仮に判定があったとしても、そこまで強化はされないだろう。


「なるほどね、そんなのも迷宮にあったんだ。私はずっとパーツ漁ってたし……流砂に巻き込まれるって……ふふっ」


「ちょっと」


「ごめんごめん……まあエクストラスキル持ってて更にそれって、中々に運凄いね。私は今の所魔法の方は縁が無くて」


「ありがたい事にな……色々と快適なもんで」


「土地神も2人で倒せたしね。コウがいなかったらいつものパーティと……もう1つぐらい必要かな?それでも何人か死んじゃいそうだし」


「やっぱり火力だよなあ」


 とにかく、全てが無事に終わった。落とし子は全て倒したはずだし、流石に1体2体残っていたりするのは状況的に無いだろう。まさか羊の被害を調べる所からこんな規模の戦闘になるとは思わなかったが、色々と収穫もあった。とりあえず村に報告に行かないと。


「んじゃ……あれ、罅入ってる……!?耐久値的には……一気に減らしたからか?うわぁ……」


「ああ、【ディケイブースト】?へー、一気に減らすとそうなるんだ」


「うわ、作ってもらったばっかなのに……勉強費として諦めるか」


 ジョブ条件のダメージ量を稼ぐ時は失敗作を一撃で使い潰していたから気づかなかった。まだ耐久値は半分ほど残っているのにこうなるのか。直りはするだろうが……後でクルトに謝らないとな。作ったばっかりで修理に来られると色々アレだろう。


「はあ」


「まあまあ、とりあえず良い報告をしに行こうよ」


「そうっすね」






「ではもう被害は出ないと!?」


「多分そうですね。けど元々いたモンスターが戻ってくるはずなので、そのモンスターがどう動くかは……」


「それは恐らく大丈夫かと。多少影響はあるでしょうが、その内いつも通りに戻るでしょう」


 村に戻り村長に報告すると、それはもう喜んでいた。こんなに喜ばれるとは思っていなかったが、感謝される分には悪い事は何も無い。


「あ、それで討伐した証拠は……疑っているわけでは無いんですが、一応」


「それは普通の考えなので大丈夫ですよ。あ、見た目がアレなので一応覚悟を」


「え、あっはい」


 そう言ってタイガが取り出したのは、心臓の形をしたアイテムだった。生きているはずが無いのに脈を打っていて、色や形もグロテスク。大きさは人間の物ぐらいだが、流石に本人……本神の物では無いだろう。このクエストの報酬の1つとかかな、2つドロップしたし。

 一応何かに使えるみたいな内容が鑑定結果に書いてあったが、何に使うのやら。まともな効果は無さそうだし……そも動いているので気持ちが悪い。

 【鑑定】のレベルが9や10のプレイヤーに聞けばもう少し何か分かるのだろうが、そうなるとこれの出所などを説明しないといけなさそうなので面倒な事になりそうだ。大体その手のプレイヤーは情報を扱うクランとかのメンバーだったりするみたいだし。


「こ、これは何とも……あ、もうしまっていただいて結構です」


「はい」


「とにかく、大丈夫でしょう。あとこれもまた失礼なのですが、報酬は数日後となりそうなんです」


「え?ああ、大丈夫ですよ。払ってはくれます……よね?」


「え、ええ!それはもちろんです」


 少し前のゲームはどこからともなく報酬が湧いてくるが、最近のゲームはちゃんと物理的に手順を踏んで渡される事が多い。

 この場合は実際に羊への被害が止むかどうか確認する必要もあるし、国に報告したりタイガに急に頼んだ経緯があるので、そこら辺の計算もあるのだろう。まさか払わない事は有り得ないし、数日待つぐらいなら全く困る事は無い。


「お二人とも、今回は改めてありがとうございました……!」


「いえいえ」


「どういたしまして」


 村長への説明もしたので、今出来る事は終わった。これ以上はやる事が無いのでアハトミノへと戻った後、タイガと別れた。クランの拠点は王都にあるみたいだが、アハトミノに用事があると言っていた。

 まあ特に大した事も言わずに別れたが、そもゲームなので仰々しい挨拶はいらないだろう。フレンド登録はとっくにしたので連絡はいつでも可能だ。どうせ報酬の時に会うのだろうし。報酬は連絡が来るらしいけど、また村まで行くのだろうか?






 2日後、シャーロットから手紙が届いた。何気に手紙とか初めてじゃないだろうか。いつもいきなり来るから、立場的にこちらの方が普通なのに新鮮な気分だ。

 手紙の内容は暇な時に2人で城に来いというものだった。確認するとタイガの方にも送られていたらしい。今回はタイガがいるから対外的にちゃんとしたって事かな。いつでも良いとも書いてあったので、タイガと相談したところ、今すぐ行く事になった。丁度お互いに暇だったし、何より早く済ませた方が良い。いつでも良いって書いてあったし。

 城の門番に手紙を見せると、すんなり通された。もう少し確認とかあるのかと思ったら全く無いという。案内されたのは前に訪れた事のある部屋だった。部屋の中にはシャーロットとメイドさんしかいなかったが……こういうものだっけか。


「よく来たの。まあ今日来たのは話が早くて助かるの」


「昼間だったらいつでも良いって書いてあったしな」


「こちらも早く済ませたかったからの。とりあえず座るといい」


 シャーロットに促され、席へと着く。改めて考えれば礼儀も何も無いが、何も言われてないので問題無いか。


「ちょっと大丈夫なの?相手王女様でしょ?」


「大丈夫大丈夫。屋敷によく出没するし」


「出没……?」


「妾は魔物か何かか。打首じゃぞ?」


「……それ気に入ったの?」


「お主ら探索者なら気軽に言えるがの、まあ冗句としては全く面白くもないが」


「じゃあ何で言ったんだ……」


 話していると、メイドさんが袋を2つ俺達の前に置いた。ああ、これが報酬か。


「まあそれが報酬じゃな。報告も確認も全部終わっておるから安心せい。妾がやっておるのは依頼を出したからじゃな」


「え、もう終わり?」


「そうじゃぞー」


 そんな感じですぐ帰された。一応依頼を出したから最後まで筋を通したのだろうが、凄いスピーディーだったな……5分もかかってないぞ。報酬も貰ったので現地解散。まあ拠点の場所が逆方向なだけなんだけどな。あ、そうだレベル上げ再開しないと。


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