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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第五章 過去の遺産の、清算を
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第十七話 子は親に似る


「はあ……まあとにかく辿り着いたね」


「少し休憩します?」


「いや……あー、そうだね。更に出てくる様子も無さそうだし。少しでも回復しておいた方が良いかな」


 落とし子の連戦を終え、俺達はようやく土地神がいるという洞窟へと辿り着いた。

 バテているというほどでは無いのだが、これからボス戦をするには少し心許ないSPの減り方をしていた。HPは度々ポーションを飲んでいたから良いとして、問題はSPだ。

 流石に9体いっぺんに戦闘になったのはキツかった。何度か死にそうになったし、ボス戦前に死ぬのは洒落にならない。デスペナで一定時間ステータスが下がるし、もし今までの連戦が偶々ではなくシナリオの一部だとしたら復活するという事もあるかもしれない。そうなると2回目以降はステータスが戻るまで待っていたらどうなるやら。時間切れで落とし子だけでも村に来てしまったら大惨事だ。

 まあその落とし子達は何とか倒した訳だが、ボス戦に備えて休憩する事は間違いでは無いはずだ。見たところ、洞窟から何かが出てくる気配も無いので安心して休憩出来る。

 件の洞窟はよく見ると何かで掘った様な見た目をしているので、内側から掘っていたのだろう。周りにはその時に出たのだろう石も散乱しているし、人工物っぽい破片もあるのでそれが祠だったんだろうな。


「……うん、一息つけそうだね」


「ここでまた落とし子出てきたら困るんだけどな……どのぐらいで行きます?」


「えっと……様子にもよるけど10分ぐらい?そっちは大丈夫?足りる?」


「あ、はい。十分に」


「それなら良いかな」


 10分あれば安静にしていれば消費したSPも大体回復する。HPはさっき1本飲んで上限まで回復した。肉体的疲労はそもそも感じないし、精神的疲労は休んでればその内落ち着くのでボス戦前としては良い状態ではなかろうか。

 タイガの方は武器を切り換えながらリロードや込める弾の変更をしていた。あらかじめ弾を込めておけば一応時間の短縮にはなるみたいで、準備に余念が無い。俺の場合は刀1本だし、ポーションの在庫も十分にある。ここはすぐ動ける様にしておいた方が良いか。


「ふう……待たせちゃったかな?」


「いやまだ8分なんで、待つとかじゃないですね」


「あれ、意外と早く済んだね」


 俺もタイガも準備が完了したので、いざ土地神と戦う為洞窟へ。中に明かりは無いが、システムのおかげで薄暗い程度だ。洞窟の中で戦うのでランプも一応用意はしたが、真っ暗で戦う訳では無さそうなので良かった。


「あ、一気に広くなるみたいだね」


「本当だ……特に何も起こらなかったな」


「何も無いなら無い方が良いけどね……」


 進んでいる間は、落とし子が出てくる訳でもなく平和だった。まあ奥には土地神がいるので束の間だったが。洞窟の奥はちょっとしたドーム状にになっており、野球場程では無いがそれと比較するぐらいには広くなっていた。天井の一部には跡があり、あそこが吹き抜けだった所なのだろう。この空間の奥の方には何かが蠢いていた。


「アレかな?」


「アレだろうね……気持ち悪い」


 奥の方で蠢いているものは何やら固められた何かをグジャグジャと……あれは食っているのだろうか?薄暗い上にそこら辺の表現は配慮されているのか具体的に何かは分からない。

 だが予想は出来るもので……まあ音と合わせると中々に気色が悪い。そういえば昔は多少のグロ要素だけで批判する人間もいたそうだが、今時ゾンビ物でも余程ハードじゃなければ小学生でプレイ出来る。この程度なら全年齢対象ゲームとしては十分に許容範囲だろう。


「気付く様子は無い……か?」


「多分……?というか私いつも通りに動けるかな……ミスったらごめんね?」


「それはまあお互い様という事で。とりあえず近づこうか」


「嫌だなあ……もう仕掛ける?」


 さてどうしようか。村の記録からして悪神である事は間違い無いはずだが、今更だがその記録が捏造という可能性もなくはない。もしかしたら……もしかしたら話し合いで解決出来る道も……どうだろうなあ。

 守り神ポジションが村の羊に被害出している時点でアウトか。そして何より見た目が村を守る土地神というにはキモすぎる。人を見た目で判断するなって?そもそもアレ人じゃないし、何かの塊を気色悪く食べている時点で絵面がな。体から生えている腕が微妙に人間に近いのも悪い。その物では無いけど、何に近いかと聞かれたら人間と答えるぐらいには形状が近い。


「とりあえず話すだけ話してみるとか」


「まあいきなり撃つのもね、撃ちたいけど。じゃあ私が行くよ」


「え?」


 気持ち悪いと言っていたのに度胸があるな。本当なら言い出した俺が行くべきなのだが、持っていた大型銃を肩に担ぎさっさと行ってしまった。とりあえずついて行かないと。


「すみませーん、聞こえますー?」


「普通だ」


 率先して行ったので何か考えでもあるのかと思っていたが、何も無いようだった。普通に率先してくれただけか……いやありがたいのは間違い無いのだが。

 タイガに大声で話しかけられた土地神は動きを止め、こちらを向く様に体勢を変えた。うん、確かに子は親に似るわ。違いが大きさと腕の数ぐらいだ。


「オ前ラカ、我ノ分体ヲ殺シテマワッテイタノハ。餌風情ノ分際デ調子ニノリオッテ……!ソノ所業ハ万死ニ値スルゾ!!」


「うん、話し合いは無理そうだね」


「そうだとは思ったけど……てか意外と冷静っすね」


「何か1周回った感じがする」


 会話をしようにも全く成り立たない。相手は完全に戦闘体勢に入った様で、背中の腕をワシャワシャと動かしている。こちらも刀を抜き構える。タイガは銃を構え、躊躇いも無く先手必勝とばかりに撃った。その一撃は土地神に当たり傷跡を残した。

 しかし、その傷跡は瞬く間に塞がり、傷など元から無かったように綺麗に治った。


「あっれぇ……?」


「マジか」


「フン、効カヌワソンナ物。スグニ喰ロウテヤルワ!」


 土地神は背中の腕を伸ばしこちらを捕まえようと攻撃してくる。いくらでも伸ばせそうなのでリーチがえげつないし、斬ろうとしても微妙に丈夫だし、斬っても生えてくる。

 うーん、厄介な。モーションは分かりやすいから避けやすいが、いかんせん量が多い。ギミックタイプならまだしもデフォルトで再生持ってるモンスターは本当に戦いたくない。


「どうっ、しますっ!?」


「とりあえず満遍なく攻撃していこう!無限は流石に無いし、負けイベでも無いでしょ!」


「その根拠は!?」


「勘!」


 まさかの勘。いやまあ、一応このゲームの先輩だし、経験に基づくものなら否定しようも無いが……戦闘が長引いて損をするのはタイガの方だし、そういう事ならやっていくしかない。


「【貫牙剣(アウラ)】!」


 土地神の腕はそれなりに丈夫なので、すっぱり斬っていくにはスキルを使った方が良い。これに脅威を感じてくれればタイガへの圧力が減る。今の俺のステータスなら土地神に接近しても迫ってくる腕を避けられる。タイガの射線にでなければお互いに邪魔になる事は無い。土地神の図体がでかくて良かったな。とりあえず【貫牙剣(アウラ)】の効果時間内に第2形態でも何でも良いから再生能力がどうにかなる変化をしてくれるとありがたいのだが。


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