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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第五章 過去の遺産の、清算を
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第十六話 視界いっぱいは流石に


「さて、村に着いたは良いけど……」


 タイガとは村で待ち合わせとはなっていたが、詳しい場所を決めていなかったのを思い出した。村の規模はそこまで大きくないので、歩いていればその内見つかるはずだ。まあとりあえず村長の家の辺りかなと雑に考えたところ、ドンピシャだった。丁度タイガが村長の家から出てきたところに鉢合わせした。


「あ、ここにいたのか」


「お、丁度だね。もしかして探させちゃった?」


「いや来たばかりで……とりあえずこの辺かなあって」


「そうなの?それなら良かったけど」


 運良くすぐに合流出来たな。連絡手段はあるのだし、そんなにすれ違いが起こるなんて事も無いだろうが。そういえばタイガは丸めた紙を手に持っていた。


「その紙は?」


「これ?リュド君にその祠があった場所を地図に書いてもらったの。見る?」


「それじゃあ……」


 見なくてもタイガについて行けば着くのだろうけど、一応自分でも場所は把握しておきたい。地図といっても大分簡単な物だったが、目印をシステムの方のマップに照らし合わせていけば何とかなった。その祠があった、現在は破壊されて落とし子の通り道となっているそこは村から大分遠い場所にあるみたいだ。


「……結構距離あるな?」


「そうでしょ?子どもが1人であの場所まで落とし子に遭遇せずに行ったなんて……村長さん顔面蒼白だったよ」


「そりゃあそうだろうなあ……」


 下手すりゃ気絶ものの大事件だ。活発だと言っていたが、活発で収まる範囲なのだろうか。まあ村長も予想外だったんだろうな。リュドのおかげで見つけられた訳だが、何とも言えない感じだ。


「それでお母さん、また鬼の形相で奥の部屋に引きずって行っちゃったよ」


「母は強しだな……あと何かありましたっけ?」


「いや特に無いんじゃない?早速行こうか」


 目的の位置は判明している。土地神の具体的な特徴は、落とし子を作るぐらいしか分からないがそれでも落とし子とかけ離れてはいないだろう。子は親に似ると言うしな。一応奥の手は用意してあるし、何か特殊なギミックがあるとかストーリーアイテム的な物が必要にならなければ、大抵の事は対処出来るはずだ。






「何か多くない?」


「フラグが立ったって事かな……」


 森に入ってしばらくだったが、落とし子との遭遇率が大分高くなっていた。祠に真っ直ぐ向かっているせいなのか、予想通りストーリーが進行したから状況が変わったのか……何にせよ、大分面倒な事になっている。


「すみません、頼りきりで」


「いやいや、ここは適材適所でしょ。いざボス戦でSPが足りませんなんて、目も当てられないし……私の方は弾薬は山程持ってきたからね。まだまだあるよ!」


 こういう状況なので、何度か戦闘になっている。しかし、俺の場合SPやらを使わないと火力が出ない。その為スキルを使わなくても火力自体は安定して出る銃士系のタイガさんに頼らざるを得なかった。

 流石に棒立ちしている訳じゃなく、引きつけたりはもちろんしている。落とし子の方はそれなりにタフな上、足も速く逃げようにも逃げられなかった。

 更には前に遭遇した時より妙にこちらを察知して寄って来るので事前に回避する事も出来やしない。幸いというかそこまで群れていないので、多くても2体、2人で十分に対処出来るのが救いかな。


「それにしてもその銃凄いっすね」


「そうでしょ?この子はお気に入りの1つだからね!まあ威力のせいで1回に1発しか装填出来ないし、リロードにも結構時間がかかるけど……それを差し引いても余りあるし」


「確かに凄い威力だったな……」


 タイガが今装備しているのは、この前使っていた物よりゴツい大口径の大型銃だった。銃というか大砲に近いレベルの代物だったが、一応カテゴリとしては銃らしい。実際その大きさに見合うだけの威力を持ち、あのタフな落とし子でさえ当たりどころが悪ければ即死というレベルだった。

 まあそんな物がポンポン撃てるとゲームバランスが崩壊してしまう。そうなると剣と魔法のファンタジーゲームからファンタジーFPSゲームと成り果ててしまうので、タイガが言っているよりもデメリットは多々あるみたいだった。

 例えばタイガが言っていた様に1回に1発しか装填出来なかったり、リロードするには冷却の為に数分待つ必要があったりする。数分となると軽いものならモンスターとの戦闘が終わるレベルなので、撃った後すぐに装備変更出来ないとなると奥の手に値する代物だろう。

 この大きさなら鈍器としては一流だが、そもSTRが余程高くなければ大した攻撃力にはならない。すぐに装備を切り替えられるなら、大量に高威力の銃を用意すればDPSがえらい事になる。外してしまえば隙を晒す所の話では無いので、正確な射撃を行える事が何より重要だ。

 そしてタイガは結構な反動があるにもかかわらず、1発も外していない。『銃王』に就いているのも伊達では無いという事だな。


「という訳で、それなりに考えていないと、モンスターにたこ殴りにされちゃうからね。初心者は大体そこでミスしたりするから」


「ファンタジーで銃はちゃんと調整しないと糞ゲーになるからなあ」


「今となっては迷宮が出来るまで調整していたんじゃないかって思ってるプレイヤーが多いよ」


「ああ、確かに」


 ジョブの1つとしては弱すぎたから迷宮で何とかしたんじゃなくて、一応実装しておいて後で完成品にしたと。その考えの方がそれっぽいが、まあ改善された事は良い事だ。現に今物凄く頼りになっているし。


「銃だと弓以上にコストかかりそうだな……」


「実際に結構かかってるね。落とし子相手だとドロップが何も無いから消費するばかりだし」


「結構バカスカ撃っているみたいだけですけど?」


「それは楽に倒せるなら、その方が良いじゃない。折角作ったんだから使ってナンボでしょ」


 ああ、タイガは必要になったら出し惜しみなく使うタイプの人か。俺はレア度が高かったり、残りが少なくなると出し惜しみしてそのまま肥やしにしたり無理をするタイプです。結局そのまま使う機会を失って手に入れた意味が無くなるんだよな。その辺で使ってもヌルゲーになりすぎる物もあったりするから、損した気分になるし。

 気を取り直して進んで行こう。この勢いなら上手く節約できそうかな。






「〜〜〜〜っ!キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい!!」


「流石にこれはっ……キツい!」


 あれから更に目的の場所へと近づいたが、落とし子の数は増えていった。今俺達は6体の落とし子と戦っているが、既に3体倒している。もうすぐ着くといったところでこの状況に陥った。最初は5体ぐらいだったのだが、割と近くにいたのか音を聞きつけ4体も増えたという恐ろしい事態になったのだ。

 流石にこの状況でスキルを温存するというのは無理な話なので、【貫牙剣(アウラ)】を使い片っ端から落とし子を捌いていく。

 そして1体でも中々に気味が悪い落とし子が集まると、それはもう絵面が酷い事になるのでタイガも参っている。この数だと大型の銃は使えないのでメインで使っている物であろう2丁を構えひたすら撃っていた。若干涙目になっているし、その光景は中々に酷く、俺でも少しキツかった。

 結局の所、倒せるには倒せたが、それなりに消耗してしまう結果となってしまった。HP、MPはポーションでどうとでもなるが、SPは回復速度を上げるぐらいしか出来ないので、時間をかけて回復するしかない。ボス戦前に消耗させてくるとは中々に嫌らしい仕掛けだ。ボスが戦う前に回復してくれないかな。


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