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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第五章 過去の遺産の、清算を
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第十四話 悪しき神

誤字報告ありがとうございます。


「こちらです」


 村長に案内されたのは窓の無い部屋だった。扉の向かいの壁は一面本棚になっており、先程見せてもらった本当同じタイプの本が所狭しと並べられていた。確かに見ただけじゃどれがどの本か分からないな。


「こっから探すのか……」


「まあこの本周辺を調べれば……一応順番ではあるんですよね?」


「はい、動かしたりはしていないので。ではランプはここに置いておきますね」


「あっはい。じゃあしばらくお邪魔します」


「どうぞ、よろしくお願いします」


 村長は管理しているといっても、無くなったりしないようにしているだけなので本の内容の把握具合は俺達レベルらしい。探すのを手伝ってくれれば時間の短縮になるかもしれないが、プレイヤーとNPC、戦闘職と一般人では見ている点が違いすぎる。下手をすると重要なヒントを見逃しかねないので、2人で探した方が効率は良いだろう。


「結構多いなあ……雑なやつだとこういう本棚でも取り出せるのは一部で、しかも1冊丸ごと調べなくても済む様になってたりするけどね」


「そしたら楽だけどなあ……これ全部運営の誰かが考えているのか?」


「いや、流石にそれは無いでしょ。AIとかで良い感じになってるんじゃないの?」


「最近の科学は凄いな」


「気を取り直して探そうか……あ、ここがこの本あった所だね」


 そう言ってタイガが指差した所は、1冊分の隙間が空いていた。よく見ると埃がとれた跡があるので、リュドや村長が触った時のものだろう。背表紙が無いので一々取り出して表紙を確認しなければいけないが、どの道中を確認するので大した手間ではない。

 見せてもらった後の本は土地神に関する記述は無いはずなので、その前の本を探していけば良い。全体の量に比べればその量は少ないが、それでも数十冊はある。冷静に考えると気が遠くなりそうになるので、深く考えない様にしよう。


「……誰か助っ人でも呼びます?結構な時間かかりそうだけど」


「まあ量はあるけど大丈夫じゃない?やろうと思えば落とし子で村を襲う事だって出来るはずだし……これを漁るぐらいの時間はあるはずだよ……多分」


「最後で一気に不安になるなあ……」


「あはは……まあ私こういうの結構好きだし」


「ああ、そうなのか……助っ人は戦闘でどうにもならなくなったらか」


「そうだね、そもこのクエストのメインは調査だし」


 このクエストは一応調査、もしくは討伐となっているが、討伐はこの段階だと不可という事もなくは無い。敗北イベントという訳では無いが、それならそれで進行があるだろうし。まあやるだけやってみれば良いよな、調査だけだと報酬少なそうだし。

 とりあえず何冊かまとめて取り出して2人で本の中身を確認していく。本を手に取ってみると、古い本なので手荒に扱うと破れそうなのが分かる。管理といっても専門的な事はしていないのだろうし、触れて崩れるなんて事も無いのでまだマシか。そこに気をつければ普通に読み進められるので、丁寧に扱いながら読み進めていく。村長が表現が古いから読みづらいと言っていたが、プレイヤーの場合はそんな事は無く普通の文章だったのでそこも大丈夫だった。

 読み進めていくと、土地神がいた時期はどこかの国に属してはいなかった様だ。まあ多少他のコミュニティとの交流はあったそうだが、超常的な何かの庇護下にあるコミュニティなんてそんなものだろうというイメージかある。


「えっと次は……」


「あ、そっち読んだよ?」


「あれ、じゃあこっちか」


 色々と目を通して見たけど、大した情報無いな。生贄を要求していたみたいだし、畏れを抱いた対象の事を詳細には書けなかったのだろうか。日記調なのもあってか、他の事もそこまで詳しくは書いていない。日にちが飛んでいるので、重要事があった日しか書いていないみたいだ。

 こうなってくると、どの様な手段を用いてくるのか分からないので、臨機応変が結構必要になってくる。対策立てられないのはキツいな。

 それにしても読んでみた感じ生贄は年一ぐらいの頻度で要求されていた様だけど、よく村滅びなかったな。今の村の規模と同じだとしたら、数十年で0になりそうだけど。昔はもっと大きな村だったのだろうか。


「うわあ……」


「どうしました?」


「えっと……まあ読んだ方が早いか、ほら」


 そう言って読んでいた本を差し出してきた。とてつもなく不快な事を読んだのか、顔を顰めていたが、どんな内容なのか……まあろくな内容じゃないんだろうな。

 その内容は、ざっくりまとめると、ある時期から生贄の年齢が下がっていったらしい。一時期は赤ん坊だったとか何とか。あれか、若い方が美味いとかそんな感じか?クソみてぇな土地神だな。


「完全に討伐推奨だな……」


「ま、まだ分からないかもよ?一応モンスターからの被害が無くなったのは本当みたいだし……」


「何故に擁護を……?自演とか?」


「身も蓋もない……まあ十中八九そうだろうけど」


 それにしても運の無い村だったんだな。生贄っていっても、生きていたりするタイプの話もあるが、これの場合は確実に食っているみたいだ。

 最初は生い先短い老人とかだった様だが、どんどん若くなって最終的には子どもや赤ん坊か……選り好みするとしては最悪の事例だろう。人を守ると宣って人を食ってりゃ世話がない。それにしても生贄の対象が子どもとは改めてこの村滅びなかったな。






「これで……終わりか」


「お疲れ様〜。いや時間かかったね」


「結局収穫は無しだったなあ……」


「時々胸糞悪い話を読まされただけだったね……」


 土地神との戦闘に役立つ様な情報は全く無かった。他に分かった事といえば土地神が現れる前に村に被害を出したモンスターは落とし子だという事ぐらいか。

 書いてあったモンスターの特徴が今出現しているものと全く同じだった。マッチポンプなんていう使う機会があんまり無い言葉を使う事になるとは。しかも守り神的地位に収まった途端、すっぱり被害が収まったのも雑な計画だなと思わざるを得ない。


「まあ悪神だって事が分かりやすくて良かったよね」


「討伐は確定で良いみたいだけどな……」


「詳細は分からないけどね、そういえば生き埋めになった轟音の正体分からなかったよね」


「少し後の本も見てみたけど、当時の村長全力で忘れようとしているみたいだったし……」


「まあ今日は時間結構かかっちゃったし、戦うにしても明日にしようか」


「そうっすね」


 これ以上の情報を手に入れる手段は無いので、対策は半ば諦めた。とりあえず、今日はそれぞれ拠点に帰り、ポーションなどの備品を補充して備える事となった。情報が少なくどういう展開になるかは分からないので、持てる物は持っておかないと。クルトに頼んでおいた装備も近々出来上がるみたいだし、奥の手の準備ができそうだ。

 長々とお邪魔した事を村長に礼を言って、村を後にした。討伐は明日、どうにかできると良いのだが。


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