第九話 重複してた
誤字報告ありがとうございます。
王女様から依頼を受け、目標の町へと向かっている。伊達に高地にあるだけあって、中々どうして道の傾斜はきつかった。村への道は整備されており歩きやすかったのがまだ救いか。
この道を歩いている限りはモンスターとのエンカウント率も低く、安全だった。1回こっちの方がショートカットになるんじゃないかと思い、道を逸れたところ即座にモンスターと鉢合わせた。しかも元の道まで大した距離じゃ無いのに5回も戦闘になるという酷い目にあった。何だ、道に結界でも張ってあるのか?あれか、道に来ない様にしている分、側に溜まっているのかな。ここは今の所2番目にレベルが高いモンスターが出るフィールドなので倒すのにも時間がかかる。
「てかいつまで歩かなきゃいけないんだ……!」
結構歩いたが、まだ着かない。王女に貰ったざっくりとした地図をよく見ると、目的地までは道が延々と蛇行している。まあ山道なので蛇行するのはしょうがないだろうが下手に道を外れるわけにもいかないから面倒だ。
というかこの道本当に合ってるのか?さっき分かれ道があった様な気がするけど気のせいじゃなかったか。道は道だし、一応村の方へは向かっているはず……この地図、ざっくりすぎて若干見づらいんだよな。ここまで来てしまっては文句は言えないし、本当に地図通りならもうすぐ着くからもう少しの辛抱だ。
そうして更にしばらく歩くと森から草原へと景色が変わった。草原というよりかは牧草地か?シャーロットが羊が特産物って言ってたし。
「いや村どこなんだよ……」
見渡す限り牧草地が広がっているが、人工物は少し離れた所に見える小屋1つしか無い……あれは羊の群れかな?あ、人っぽいシルエットも見えるわ。とりあえず聞いてみよう。
「すいませーん」
「ああ……?何でここに人が?どうやって来たんだ?」
「え、いやこの地図に従って……」
近づいて話しかけると怪訝そうな顔でこちらを見て来たので地図を見せた。何だ、余所者は出てけパターンか……?けど、そういう風では無くて単純にここに他人がいるのが不思議な感じみたいだが。
「ああ、こっちの道に来たのか。こっちは羊がここにいる時用にあそこに来る為の道さ」
「ああ、そうなのか……」
そう言って、羊飼いの人は小屋を指差した。まさかの種類が違う地図……!さっきの分かれ道が村へ行く方がだったか……なんて物を渡してくれたんだあののじゃロリ王女。この人が示した通りならもう少し短い時間で着いたみたいだし。何処から持って来たんだこの地図。
「何か運が悪かったなみたいだな……それにしても何しにこの村に?見たところ探索者さんみたいだが。ウチの村に興味を惹く様な物は無いと思うんだが」
「いや依頼で……ほらここの羊が襲われとかでな」
「その件でか!そりゃあありがたい……!いや、でも村長が今朝探索者を雇ったとか言ってたけどな?」
「はあ!?ま、まあ良いや、とりあえず村どっち?」
「あっちだ。余計なお世話かもしれんが気をつけてな」
「ああ」
羊飼いのおっさんが示した方に行くと割とすぐに村に着いた。あそこより低い所にあったみたいで隠れていただけだった。まあ今までの道のりに比べればなので、見えていても少しかかったけど。
とりあえず色々事情を聞かないと……村長とかの偉い人何処にいるかな。王女様からの依頼書もあるし無碍にはされないはず。というかされたら大問題のはずだ。
丁度通りかかった村人に村長こ家を尋ねて、そこに向かう。村長の家という物は、他の村人の物より多少なりとも立派だったりするイメージがあったのだが、この村の場合はその様な事は無いみたいだった。さて、家の中にいると良いが。
「はい……どちら様でしょうか?」
「この依頼を受けた探索者だけど」
「はい……?はい!?わ、分かりました。とりあえず中へ……」
「あ、どうも」
ドアをノックし、中から出て来たのは村長の奥さんらしき人だった。依頼書を見せると、シャーロットの署名付きに驚いた様だった。その効果は絶大な様で、改めて権力者なのだと実感するな。脱走してたりするせいで普段のイメージがアレだから忘れそうになる。
村長は家の中にいた様で、テーブルの向かいに案内された。村長は年を食ってる人かと思ったら、それなりに若そうで3、40代ぐらいの人だった。
「村長のリカルドです……まさかこんなに早くいらっしゃるとは」
「途中で聞いたんだけど、他のプ、探索者に頼んだとかって……?」
「はい……アハトミノへ陳情を出したんですがまさか王女様の方へと話が行っていたとは……何分被害は増えて来ておりまして一刻も早く解決したい状況でして」
「ああそれで丁度来た探索者にか」
「はい。今朝方たまたま立ち寄った様でして……道からではなく森から出て来た様で、腕が立つのではと調査だけでもと」
「まあ……しょうがないか」
NPC側からすれば、食い扶持に被害が出ている上に自分達の命の危険もあるだろうからな。少しでも早く解決したいのは分かるから余り強くは言えないか。
被害の詳細について聞くと、被害にあった羊の数はそこまででも無いらしいが、その数は日を追うごとに増えている様だ。そりゃあ焦るのも当然だな。殺された羊は群れの端にいたそうで、しかも夜に起こった事だから目撃者はいないそうだ。そこに多少なりとも実力のある探索者が来たものだから縋りたくなるのもしょうがないだろうな。
「とりあえずその探索者探してくるよ。こっちは、というか俺は調査が目的だし」
「ありがとうございます……もちろんどの様な結果になりましても報酬はお支払いいたしますので」
「それはありがたいけど……あ、それでその探索者は何処に?」
「その方でしたら東にある森の方に。跡からしてその魔物はそちらに移動した様で……とりあえず近辺から探すと仰っていたのでそう遠くにはいないかと」
「そうか、ありがとう」
「どうかよろしくお願いします」
目的は調査だから、やれる所までやろう。まずはクエストが被ったプレイヤーを探さないとな。東の方と言っていたが、牧草地の向こう側に森が見えた。対象じゃないモンスターが出ないと嬉しいんだけどな。
森に入り、探し始めてから十数分経ったが、見つからなかった。遠くには行っていないとの事でも、そもそもが広いからなあ。最悪はすれ違いまくる事だけど、運の良し悪しはどうしようも無い。運といえば全くモンスターと遭遇しない。最初は運が良いと思っていたけど1体も遭遇しないのは流石に不自然過ぎる。これもそのモンスターの影響なのやら。
「……うわっ!?」
森を進んでいるといきなりどこかでズドンと重低音が鳴った。耳を澄まして見ると木が倒れる音も聞こえる。それに発砲音らしき音も聞こえるのでおそらく戦闘か。さては探していたプレイヤーかと思い、そちらへと向かう。
そうして近づいた先には、銃を2挺持ち機敏に動き回る女性プレイヤーと、それを追う4足歩行の……4足?とにかく気色悪いモンスターがいた。何だっけ祟り神?神様相手はちょっと……いやそんな事を考えている場合じゃないか。
「なに!?あっ、ごめん!」
更に近づこうとしたら、余程集中していたのかこちらの物音に反応し、俺を確認する前に発砲してきた。いきなりだったので照準も甘く、こちらも何とか避けられたので良かったが、当たっていたらヘッドショットだった。反射で撃った割には結構正確な射撃だったな。
直ぐに謝って来たのは良いとして、とりあえずどうしようか……あのモンスターは敵なのは間違い無いだろうから横入りにはなるが参戦するか?




