第六話 場合じゃねぇ!
コトネさんのサブジョブの件も終わったので、自分のサブジョブの方に専念できる。早速教会の方へと行き、サブジョブを戦士系統2次職の『蛮族』にした。ここから条件を満たせば3次職の『蛮将』になれる。とりあえずステータスを確認しよう。
Name:コウ
Level:65
Main job:侍
Sub job:蛮族
HP(体力):10000
MP(魔力):820
SP(技力):1250(1313)
STR(筋力):1220(1635)
VIT(耐久力):630(+2640)
AGI(敏捷):1740(2279)
DEX(器用):1290(1406)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】【居合】【刺突】【ディケイブースト】【レストリジェクト】
汎用:【鑑定Lv.7】【採集Lv.7】【魔力操作Lv.1】【魔力感知】【罠感知】
Exスキル
【貫牙剣】【空走場】
魔法
『反剋』
武器:黒刀【銕鴉】
所持金:52998216G
称号:[Exモンスター討伐者][標準探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア][迷宮踏破者]
久しぶりにスキルが増えたな。AGIの補正率は少し下がったが、SPに補正が付いてSTRの補正率も上がったからどこを重要視するかによるだろう。
スキルの方は、【レストリジェクト】は静止した状態で発動できるスキルで、効果はSTR参照のカウンタースキルだった。静止した状態といっても、移動していなければいいみたいなので判定は緩いそうだ。
【ディケイブースト】の方は……確か森でカリファが使っていたスキルだよな。ちょっと禍々しい感じのエフェクトがしていたやつ。使ってみたらエフェクトが同じだったからそうだろう。スキル効果は武器の耐久値を削る事で攻撃の威力を増大させるというものだった。削る耐久値は多少変えられるみたいで威力の増減も調節できるから結構便利そうだ。
3次職の就職条件を満たす時にはクルトの試作品の失敗作を大量に買い取っている物を使う。下手すると壊れる危険性があるので、条件を満たすためだけに使うならメイン武器はあまり使わない方がいい。失敗作なので再利用、武器は死蔵するより使ってこそだしな。
そんでもって就職に必要な条件はこんなものだった。
・【ディケイブースト】で合計100万ダメージを与える
・【レストリジェクト】でモンスターを100体討伐
・『蛮族』のジョブを取得している状態でモンスターを500体討伐
中々に面倒そうだが、『侍』の時も似た様なもんだったのでこんなもんだろう。【ディケイブースト】の条件は武器1本丸々犠牲にすれば何回かでクリア出来るだろう。【レストリジェクト】の方は……カウンター系だしタイミングがなあ。まあ面倒なものは変わらないのでウチのWikiに効率の良い方法を聞いておこう。丁度談話室にはショウ達がいた。
「で、何かない?」
「自分で調べなよと言いたいところだけどあるよ。火山か雪山に行けばいいよ。戦士系統は就く人多いから効率も色々試されてるからね」
「へえ、マジで?てかどっちかって言ってるけどめっちゃ距離あんじゃん」
「ホントホント、ボクヘンナウソツカナイ」
「いや、今ので真偽が行方不明なんだけど」
「どっちかってのは単純に装備の問題だよ。コウのみたいに耐暑も耐寒もどうにか出来る装備付けてる人ばかりじゃないからね」
それなら火山でいいか。やりづらいようであれば面倒だが雪山の方に行けばいいし。早速新装備の機能が役に立つな。
「おやマスター、火山に行くんだって?」
「そうだけど……どうした?」
「じゃあ頼みたい物があるんだけど」
「え……まあ良いか」
行こうとしたらモモが聞きつけた様で素材のお使いを頼まれた。結構強いんだから自分で行けよと言いたいところだが、別の場所に行くみたいだから色々忙しいのか?まあ大した量じゃないので、ついででこなせるだろう。
「あ、僕も……大した量はないので」
「え、ああうん……」
「あ、じゃあ私も」
「え」
「じゃあ僕も」
「チッ」
「あ、あの……ポーションの素材でもう少し予備が欲しい物が……」
「この際だから別に良いですよ……」
「何か僕だけ扱い酷くない?」
「お前に関しては悪意アリだろ」
便乗してきたからな。そも他の3人は自分で素材を採りに行けないから分かるが、ショウの場合は1人で行けよと言いたい。まあ全員分合わせても大した量じゃないので何とかなるはず……多分。
気を取り直して火山フィールドへ……と思ったが、西側の門へ行く道中にはトリモチさんの店があるのを思い出し、様子を見に行く。どうせ行列だろうが、道を1本遠回りするだけなので大した手間でもない。見に行くだけならタダなので寄ってみると、何と行列は無く、更には店の中も混んでいなかった。
「す、空いている……!?」
客がいるという事は営業中、中の様子からして入れないという事もあるまい。これは絶好のチャンス、火山になんか行ってる場合じゃねぇ!!
「いらっしゃいませ〜。こちらの席へどうぞ」
店員NPCに案内され、席に着く。早速注文をして一息ついた。ガラガラという訳でもないが、いつもの様子と比べたらガラ空きに等しい。いやあ、運が良いとしか言いようがない。後でショウ達にお土産……いや呼んだ方が早いか。というか呼ばないと色々と恨まれそうだ。
「あ、ショウ?」
『どうしたの?何かあった?』
「あったあった。「ペルティカ」今ガラガラ」
『……マジで?全員いける?嘘だと殺すよ?』
「十分いける。嘘じゃねぇよ……あ、モモもな」
『そりゃもちろん。急いで行くよ!』
そう言って通話は切れた。空いていると聞いた途端、目の色を変えた様な感じの口調になってたな。まあ俺も最初の時以来だし、この幸運はありがたい。少し待ち、ケーキが来たらショウ達も来た。早いな、どれだけ急いで来たんだか。
「早かったな」
「そりゃ急ぐでしょ……本当に空いてるね」
「久しぶりですね」
「へぇ、ここが例の」
俺の周りの席は空いているので全員座れる事が出来た。人はまあ増えてきているが、しばらくはゆっくりしても問題無いだろう。
「それにしても火山に行ったと思ったらここにいるなんてね」
「ちょっと通ったらこうなっててな」
「まあナイスとしか言えないね」
「コウさんに感謝ですね」
みんなが頼んだスイーツも来た。食べている間は全員味に集中したいのか誰も喋らず、沈黙の時間が続いた。モモでさえ黙々と食べている。かくいう俺も黙って食べているが、ケーキ一切れ程度だとすぐ食べ終わるので沈黙の時間はそこまで長くなかった。
「はー……こりゃ凄いね」
「モモでもそう感じるか」
「まさか噂は本当だったとは……都市伝説かと思ってたよ」
「都市伝説?」
「この店はほら、いつも大行列なのに何故か空いている時があるんだってさ。昼間で、開店してすぐという訳でもないタイミングで」
「へー」
実際へえとしか感想が出てこない。まあ原因は気にならなくもないけど、いつ起きるか分からないなら覚えておく必要も無いか。その後は全員、別のを頼み、持ち帰り用の物も頼んだ。今は余程で無ければ個数制限も無いようで、結構な量を頼んだ。自分用はもちろん、味を知っているプレイヤー相手なら袖の下に使える代物だ。NPCにも効くらしく、まさに万能アイテム。欠点としては甘い物が苦手な人には効かない点か。
「へい、毎度」
「あれトリモチさん……2回目だな、これ?」
「そうだっけか……?ほら持ち帰りの」
前にもあった気がするが、たまたまという事もあるか。既に開いているのに空いているという謎現象に遭遇しているわけだし。持ち帰りのスイーツも受け取り、店を出る。いや、思わぬ収穫だったな。




