第四話 オプション豊富
「何位だった?」
「……言いたくない」
「いや……そんなに低いわけじゃないみたいだけど?」
「見つけてるなら聞くなよ……順位1桁の奴と比べられるだろ」
期末テストの期間は終わり、俺達は廊下に張り出された順位表を見ている。流石に勉強に集中しようと思い、クルト達に素材を渡した後は今日までずっとログインしていない。テストが終わった後とか、採点の間にやれば良いんじゃないかって?いや最終日はテストで疲れてたし、何故かこの学校、急いで採点して翌日に答案全部返して、壁に順位張るっていうよく分からない力の入れようをしている。
「初日のはともかく、昨日のまで採点終わって集計するのは凄くないか?」
「普通土日とか挟むもんだよね。どうしてそこまで速く終わらせるんだか……速く終わらすと教師も休みになるとか?」
「まさか。採点終わらしたところで教師の仕事なんて山程あるだろ」
「そうだよねー」
改めて順位表を確認してみると、ショウは1桁前半、というか2位。成績良い奴は、いやショウの場合は余裕あるから良いよなあ。次に坂下さんと西田さんが10番台。対する俺は平均よりまあ上ぐらいの順位である。特に悪い結果ではない、というか特に上を目指す気が無い俺としては上々の結果のはずなのだが……なんだろう、この劣等感。何だ勉強法、勉強法が悪いのか?翔斗と西田さんは割とギリギリまでプレイしていたみたいだが、何故にあの順位をとれるのか。翔斗に聞くのは癪だから、今度2人にどういう勉強してるのか聞いてみようかな。
「あ、2人ともいた。どうだったー?」
「見ての通りだよ」
池田が2人を連れてやって来た。ただでさえ混んでいるのに順位表の前で5人固まるのは邪魔なので、少し離れた場所へと移る。喜ぶべきではないが、池田の順位は俺と同じくらいだ。こういう時に同志がいるとありがたい。本人には悪いがこの中で俺は4番目だからほっとしてしまう……上を目指して歩きたいな。
「はー、翔斗はいつも通りね。少しで良いから分けて欲しいわ。鋼輝もいつも通りで安心するわ〜」
「3人との差がえげつないけどな」
「す、すみません?」
「いやそこ謝るところじゃないよ、陽葵ちゃん。私達が惨めに……やっぱり地頭か……?」
「あと環境じゃね?2人は何か勉強法とかは……?」
「いえ特に大した事は……陽葵さんは?」
「いえ私も……物覚えは良い方なので」
まあ意識してやってないとどの方法が効率良いのか分からないよな。俺自身は物覚えは悪い方ではないとは思うのだが、個人差という理不尽なものがあるし。
「翔斗はあれだろ、頭にマイクロチップでも埋め込んでんだろ?」
「してるわけないでしょ、なんで僕だけ??そもそもあれ、そんな便利な物なの?」
「さあ、知らね」
まあテストの点であーだこーだ言うのはそろそろ止めておこう。長引くと不利になるのは俺の方だ。結果は出たし、順位が変わるような採点ミスはあったら大問題だし。そも確認したら1個も無かった。
「あ、そういえばクルト君が装備完成したって言ってたよ。会心の出来だってさ」
「そうかじゃあ帰ったら確認するか……あれクルト達いるかな」
「それなら部屋に、倉庫の方に置いといたってさ」
「装備変えたんですか?」
「あ、言ってなかったでしたっけ?」
とにかく帰ったらログインして新装備の確認だな。ゲームの話を切り上げて教室へと戻る。ゲーム関係の話はゲームの中でもできるから、ここで話す必要も無い。今日はテスト返しして終わりだから、この後の諸連絡が終わったら帰れるし。そういやそろそろサブジョブちゃんと決めないと。ぐだぐだ先送りにしすぎたな。
そして学校から帰りログイン。倉庫代わりの部屋に入ると、確かに新装備が目立つ所に置いてあった。勿体ぶる必要も無いので早速装備。こういう時に姿鏡を買って置いて良かったと思う。新装備は全体としてはあまり変わっていないが、デザインが緻密になってたり邪魔にならない感じでポケットやホルダーが増えていたりとクルト達の技量が上がっている事を如実に感じられる。ゲームだからそもそも配慮されているだろうが、柔軟性も上がっているような?とにかくデザインも着心地も文句無しだ。一緒に置いてあったメモ書きによるとオプションを付ける事に成功したとかで、少し手間はかかるが耐寒耐暑効果を切り替えられる様になってるらしい。まあ環境関係の耐性は、攻撃系に対する耐性よりも付けるのが容易みたいだとの事だが、それでも結構便利な機能ではないだろうか。武器の方はこれまた大きくデザインが変わっていたりはしないが、若干近未来武器っぽくなっていた。例の機甲武装とやらではなさそうなので見た目だけだろうけど……えらく興味を持っていたみたいだから影響を受けたんだろうな。まあこれはこれで好みなので十分アリだ。あ、そういえばとりあえず装備変えたら談話室に集まろうと話してたんだっけ。
「忘れてたな……」
多少小走りで談話室の方へと向かう。中にはショウとコトネさん、アポロさんがいた。
「遅いよー?」
「すまんすまん、1人で色々見ててさあ」
「まあわからなくもないけどね」
「あ、あのコウさんどうでしょうか……?」
そう言ってコトネさんは立って腕を少し広げた。えと、これはどうすれば良いんだ?ショウの方にチラと視線を向ければ目を細めて早く何か言えと言っている様な気がするので、これは普通に褒めれば良いのかな。女性の普通の褒め方なんて知らないけど。
「えっと、似合っていると思いますよ。
「そ、そうですか。ありがとうございます……!」
これで良いのか、良いんだよな?喜んであるみたいだし、無難に済ませられたはずだ。そも日常生活で人を褒める機会なんてあまり無いし、そも女性を褒めるなんてした事無い。春イベの時にも変な事口走ったし。ショウに視線を向けるがアポロさんと何やらヒソヒソと話をしていて役に立たない。まあ気分を害していなければセーフのはず。
「それで補正の方はどう?」
「ああ、こんな感じだよ」
「こんな感じですね」
一緒に置いてあったメモ書きと共に、ステータスを見せる。
Name:コウ
Level:65
Main job:侍
Sub job:武士
HP(体力):10000
MP(魔力):820
SP(技力):1250
STR(筋力):1220(1513)
VIT(耐久力):630(+2640)
AGI(敏捷):1740(2453)
DEX(器用):1290(1406)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】【居合】【刺突】
汎用:【鑑定Lv.7】【採集Lv.7】【魔力操作Lv.1】【魔力感知】【罠感知】
Exスキル
【貫牙剣】【空走場】
魔法
『反剋』
武器:黒刀【銕鴉】
所持金:52998216G
称号:[Exモンスター討伐者][標準探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア][迷宮踏破者]
よくよく確認してみると補正が前より大分高くなっている。現在確認されているフィールドの中でも後半の方の素材をメインに使っているわけだが、それでもこんなに上がるのか?
「これは……結構良いね?」
「そうですね、随分良い装備ですね」
「2人から見てもそうなのか。アポロさんが色々くれたおかげもあるか」
「いえ、あれらはお詫びなので……」
中々に良い装備を作ってくれたようだ。これは払う金を増やした方が良いだろうか。
とにかくこれで当分装備に困らないな。最後のフィールドボスはもう少しレベルを上げてからにするとして、とりあえずレベル上げやらジョブ関係だな。もうすぐ夏休みだし、時間が目一杯とれるようにしよう。




