第一話 さっさと済まそう
迷宮のイベントが終わり数日が経った。迷宮は告知通り、規模を縮小しながらも残っている。そのせいか迷宮に入るプレイヤーも減少し、それなりに落ち着いてきた。迷宮の前にあった町もどきはそのまま残り、プレイヤーが減った代わりにNPCが増えたのでフィールド各所にある村の様な扱いになっている。元々はほとんどプレイヤーメイドなのだが、結構そのまま残すみたいだった。まあ自由さが売りの1つだから納得だな。迷宮のその後は大体そんな感じで、これからも銃士系統のプレイヤーの需要を満たしてくれるのだろう。
さて、イベントが無い間に色々と身の回りの事を進めたいが、とりあえず自分のステータスを確認するとこんな感じだ。
Name:コウ
Level:65
Main job:侍
Sub job:武士
HP(体力):10000
MP(魔力):820
SP(技力):1250
STR(筋力):1220(1427)
VIT(耐久力):630(+760)
AGI(敏捷):1740(2314)
DEX(器用):1290(1328)
INT(知力):100
LUC(幸運):150
スキル
ジョブ:【抜刀】【朧流し】【居合】【刺突】
汎用:【鑑定Lv.7】【採集Lv.7】【魔力操作Lv.1】【魔力感知】【罠感知】
Exスキル
【貫牙剣】【空走場】
魔法
『反剋』
武器:黒刀:豪
所持金:56428612G
称号:[Exモンスター討伐者][標準探索者][邂逅者][大罪契約者(色欲)][第3王女に目をつけられています][春イベントシナリオクリア][迷宮踏破者]
改めて見ても3次職になってからレベルの上がる速度が大分遅い。まあ多少は上がっているが多少だな。普通に遅くなってくるのは色々と厳しいなあ。今更だが4次職になっているプレイヤーは凄いな。そう考えるとレベルが94とか言っていたカリファも相当プレイしているんだな。そういえばアポロさんはレベル100だったよな?リアルを知った今、受験真っ只中でこのゲームに時間を割いてレベルが100って……ショウが霞んで見えるな。まあとりあえず4次職目指して頑張ろうか。その為には効率の良い狩場が必要であり、更にその為には先のフィールドに行ける様になる必要がある。
「という訳でフィールドボスを倒しに行こう」
「何がという訳なのか知らないけど大体察せるから良いよ」
「そうですね、レベルも上げづらくなってきてますからね」
場所はいつもの談話室、ショウとコトネさん、それにクルトやアゲハもいる。ちなみにモモは部屋にいる。
「何だっけ、生産職はもうフリーで行けるんだっけ?」
「そうだね、フィールドボスの戦闘に混ざる必要も物を売ってノルマをこなす必要も無いからね」
「こっちからしたら助かったわね」
「そうだよね、というか僕達もう行きましたし」
「あ、そうなの」
ここまで来ると生産職に制限設ける必要は無いだろという感じなのかな。初期の頃は差が出たり先のフィールドで手に入れられる素材で装備の横流しとかが出来るからか。
「で、どうする?どっちに行く?」
「いや時間あるし両方行こうかなって……あるよな?」
「2体ですか……あ、時間は大丈夫です」
「まあ良いんじゃない?下手こかなきゃ大丈夫でしょ」
ざっくりとした感じだが、推奨レベルとパーティメンバーからして行けるんじゃないかと思う。道が横で繋がっていないので移動が面倒だが、やる気がある時にやってしまいたい。
「モモさんはどうしますか?」
「うーん、頼りすぎるのもアレだし……」
試しに聞いてみたら生返信が返ってきたので特に参加したいという気は無いのだろう。頼れば来てくれるだろうが、下手に頼りすぎると良くない予感がする。聞いた時に部屋の中が見えたが何やら本というよりは文献みたいな物を漁っていた様だった。何かを調べている様だったが、そもそも生き字引みたいなものじゃなかったっけ?
「お気をつけて」
「気をつけてね〜」
2人に見送られながらいざフィールドボスの元へ。とりあえずは砂漠側の方へと行く。
「また砂漠か……」
「こっちの方がまだ暑くないね」
「砂漠の種類が違うからでしょうか?迷宮の方は砂で、ここは岩石ですけど……気候は場所によって違うはずですし」
「まあ動きやすい分、ありがたいよな。まだ集中力が続くし」
迷宮の時との環境の違いを感じながら、ボスがいる場所へと進んでいく。装備の対環境仕様は準備できていないから今は我慢するしかないか。ショウはプレイしている期間が長いのでちゃっかり対策済みだが、防具の種類が違いすぎるので貸してもくそも言えやしない。他のやる事やってたら結局必要な時に間に合わないってね。まあゲームな分、多少不快で済むだけマシだろう。進んでいくと見えてきたのはでかいサソリだった。
「結構でかいな」
「その代わり動きは遅いから」
「それはありがたいですけど……」
思っていたよりでかいのには驚いたが、とにかくさっさと倒したい。この後もう1体フィールドボスを倒す予定なので時間をかけていられない。曲がりなりにもフィールドボスに対して舐めた考えだと自分でも思うが攻略はやる気がある内にしないと。
「尾の先に毒あるから気をつけてね。後は物理攻撃しかしないから」
鑑定してみた所、名前はデザートスコーピオン。そのまんまだが、ショウの言う通り後は毒の攻撃ぐらいしかないからそれぐらいの形容になるのだろう。
「それじゃさっさと倒そうか」
「そうだね」
「そうですね」
ボスサソリの毒は尻尾だけ。という訳でそれの対処は【貫牙剣】で断ち切れば簡単だった。他の攻撃は鋏による攻撃、後は大体のモンスターがデフォルトで搭載している突進ぐらいだ。そも直近で迷宮を経験したおかげで、ボスサソリ程度と言ってしまえるぐらい速く、重い攻撃はもう慣れている。【空走場】も使ったが、解体するのが楽になったので価値はあっただろう。幸い移動するのに時間がかかるので全回復ではなくともそれなりに回復する。
さて、その次に倒すボスは雪原フィールドにいた。山脈1つ挟んでいるので王都を経由してぐるっと回らないといけない。そうしないも時間短縮装置である馬車を利用出来ないのでかかる時間はともかく結構回りくどい。ただ迷宮の所にできた村にも馬車が通っているおかげで王都を通らずに少しばかりショートカットできた。
冷めた考えだと山脈挟んだだけで砂漠から雪原に変わるのは中々不思議な地形だ。元も子もないがゲームだからね、で済ましておこう。ここのボスの名前はミラージュフォックス、名の通り……ではなく雪で作られた分身を使ってきた。まあどれが本物か分からなくて幻覚っぽく見えたからミラージュと名付けた……という設定らしい。ややこしい事この上ないが、タネが割れてしまえばどうという事はなかった。分身の数は固定らしく、最悪全部叩っ斬れば良いみたいで、今回は6体目で当たりを引いた。複数体からの攻撃を避けるのは中々に面倒だったが、サソリの時と同じく迷宮の強敵の動きに慣れていたので問題無かった。
「いや2体倒そうと思えば倒せるもんだな……フィールドボスって後1体だろ?行ってみるか?」
「あー、それは止めておこう」
「……意外ですね?」
「流石に最後のボスは今倒したのより3、4段階ぐらい強いよ。最初にクリアしたパーティだって当時相当時間かかっていたし」
「そんなにか」
「うん、そんなに」
流石に勢い任せに舐めプで突撃するのは無理だったか。まあ出来る所まで進めて、今は素直に行ける様になった町の観光でもしようかな。レベルが上がる余地は相当あるんだし、それなりに時間をかけて強くなってからにしよう。




