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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第二十九話 環境の変化


「えー……というわけで?」


「西田陽葵です」


「うん、どういう事?」


「そういう事じゃね?」


「おい」


 翌日、学校でアポロさん……リアルの名前は西田さんを翔斗達に紹介する事になった。まあ紹介と言っても昨日別れた後坂下さんには連絡したらしく、俺も翔斗には伝えてあるので改めてという事だ。情報自体は共有したのは良いが、ただのプレイヤーならともかくアポロさんだからなあ、翔斗がこうなるのも分からなくもない。ゲーム仲間では無いが、除け者と言うと少しアレだがそうする必要も無いので池田もいる。リアルなので他の話題はいくらでもあるだろうし問題は無いだろう。連れてきたのは坂下さんだし。そもコミュ力高いからどうとでもなるんだろう。

 改めて西田さんを見るが、背は坂下さんより小さく、特徴といえば前髪で目が隠れているぐらいか……ジロジロと見るのもアレだしやめておくか。前にも見た事がある気がするが、だいぶ前にぶつかった人かな?他にも見たことあるような気がするが、それは記憶を探ったところで他人の空にかもしれないし、話題にもならないし別に良いか。そも会話すら無かったんだから気にしてもしょうがない。


「へぇ、そのゲームでねぇ。私は池田百合だよ、よろしくね。ゲームはやってないけど」


「よろしくお願いします」


「……勇気があるというか」


「それが百合さんの良い所ですし」


 この中では1人だけ同じゲームをやっていないアウェイ感の中で真っ先に声をかけるとは。まあさっき言った通り除け者にしているわけじゃ無いので、こういう場合は池田の物怖じしない性格は長所になるからなあ。


「にしてもあのアポロさんが、同い年でしかも同じ学校の生徒なんてね……世間は狭いと言うべきかな」


「しかも縁が何かとあったしな」


「ゲームって意外な所で繋がるんですね、驚きました」


 まあ実際にそうなっているから何とも言えないが、普通はそうならないよ坂下さん。そもリアルが判明したのだって半ば事故みたいな……確定させたのは俺の口が滑ったからか。まあアポロ……西田さんが鎌をかけた事になったのは割とアウトだろうけど……人柄的にギリギリセーフって事で良いかな。俺?俺は個人情報の悪用なんかしないヨ。いやそんな事する利点なんか無いし、そもそもそうする動機も度胸も無い。ゲームはとりあえず楽しく出来れば良いスタンスだし。

 同性同士という事で坂下さんも加わり3人でワイワイと……まあ騒いでいるのは主に池田だが、談笑している。西田さんの声はゲームの時と同じく小さいが、まあそれはもう気にしなくて良いだろう。

 どっから情報を仕入れたのかは分からないし知りたくもないが、翔斗によると西田さんは坂下さんと同じく文武両道的な人らしく、どちらかというと若干武に傾いているとか何とか。情報と言っても西田さんの同中の人に一般的な事を聞いただけとか言っていたが、いつ聞いたんだか。坂下さんもゲームに興味があるとは思っていなかったし、客観的なイメージは参考程度の方が良いかな。というかやっぱり何かしらの武術的な何かの経験があったのか。


「人柄はゲームの時とあんまり変わんなかったね。リアルの件を聞いた時はどうかと思ったけど、まあそも変な噂も聞いた事無いしね」


「実際変なイメージついているみたいだしなあ、両方。バレた件は両成敗という事にしておきたいんだよ。今更面倒だし」


「まあ極論話さなければ済む話だしね」


「後は……リアルが分かっても特にな」


「これまで通りで大丈夫だよね。百合達はともかくそもそもそんなに用事無いし……まあ接点出来たのはありがたいけどね」


 変に関係が変わるわけでも無し、同じゲーム仲間として付き合っていければありがたいし、欲を言えばちょいちょい助けになってもらえる事ができればもうほんとありがたい。

 昼休みでの事だったので、時間が終わり別れた。今日は会うとしたらゲームぐらいかな。






「この度は色々と……」


「いやいや」


 案の定ゲームの中でも集まっている。でもというかコトネさんが提案があるというので集合した次第だ。パーティを組んで何かするというわけでは無いので場所は屋敷の談話室であり、メンバーは俺とショウとコトネさん、アポロさんである。

 話の内容は何かというとこの度はリアルやら何やらで縁ができ、屋敷の一室をアポロさんに使って貰いたいとの事だった。


「アポロさんが、ずっと宿暮らしだったとはね……」


「毎日使ってもそこまで大した金額にはならないので……」


「まあアポロさんならどうとでもなるよな」


 塵も積もれば山となると言うが、どんだけ金額かかってたんだろうな。ちなみに、パーティに誘うとかクランを作った時にメンバーになってもらいたいとかではなく、単純に部屋が余ってるから使った方が良いんじゃないとの事だった。こちらとしてもこの屋敷の持ち主の1人のコトネさんの提案を否定する要素は皆無だしな。問題はリアルの事情なんか知らない他のプレイヤーからどう見られるかと言う点であるが、知己の広いショウもいるしそこら辺は……大丈夫なような、そうでないような。最悪イプシロンさんに頼れば何とかなりそうな気がするが……ゲームで対人関係が面倒になるのは永遠に無くならない課題だろうなあ。

 後は屋敷の方は本当に広いからなあ。住んでいるのは俺達とクルト、アゲハ、モモの6人でそこからそれぞれ倉庫扱いで1つ割り当てても余るんだ、これが。なのでアポロさんに1部屋2部屋あげてもどうという事は無く、こうして活用した方が家の使い方としてはあってるはずだ。ただの部屋を物置にしているのはこの際無視しておこう。

 アポロさんは最初固辞していたが、それは単純に自分のものでは無い住居の2室を無料で譲渡する事に遠慮しての事で、コトネさんの説得により穏便にそこは何とかなったみたいだった。そもそも反対する理由も無いし、人柄的に普通に歓迎する感情しか無い。


「とてもありがたいのですが、良いんでしょうか、無料で」


「いや金を取ったら意味無いですし、部屋はいくらでも余ってるから……ね、コウ」


「そうだけど、それお前が言うセリフか?」


「あはは、まあ良いじゃない」


「あ、あのここまで誘っていておいて何ですが……ご迷惑でしたか?」


「い、いえいえ!提案自体はとてもありがたいものです」


「それなら良かった……まあクランに加入してもらいたいというわけでも無いしな」


「そういえば、皆さんクランは……?」


「うん?いや人数が……」


 アポロさんを、含めて良いんなら最低限人数制限は満たしている。まあクルトとアゲハを含める前提だが……今は作るつもりも無いし、俺がそうならショウもそうだろう。今の所作る利点が無いし、他のゲームで作ったのなんてメリットが微妙な感じになった途端解散したし。


「そうでしたらありがたく」


「どうぞどうぞ、内装も好きにしてもらって。何なら壁ぶち抜いても」


「いえ流石にそれは……」


 そうこうして拠点をこの屋敷に移したアポロさんだったが、今後も大して変わりは無いだろう。コトネさんと組んでどっか行く事は多少多くなるだろうな。パーティを組むにしても俺たちじゃバランス悪いし。

 成り行きでソロをやっているアポロさんなので、下手に人が増えても面倒だろうし、人のプレイスタイル変える権利は俺は持っていない。

 迷宮に関しては3人と1人なのにアポロさんは次は36階層、俺たちの先を行っているので流石としか言い様が無い。隠しステージの影響で攻略がストップしていたが、今日から進めていかないとな。


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