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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第二十七話 過失


「助かります……」


「いやいや」


 いきなりの吐エフェクトの後、バタンとアポロさんは倒れてしまった。気絶状態では無く体が動かないというだけの様でアポロさんを背負って中央の部屋へと戻る。事情を聞くとこの状態はさっきの魔法の反動らしい。パーティ欄を見てみると確かにHPが1割ぐらいになっているし、よくわからない状態異常になっている。体が動かないのは状態異常の効果かな。吐エフェクトもあるとは中々面倒だなあ。まああの強化の代償ならどっこいという所なのかな?部屋に戻るが、玉はまだ嵌めない。4つ揃えて今の状態で強制進行になったら目も当てられない。1時間もすれば治るらしいのでそれまで待つ事に。1時間ぐらいなら全然待てるし、休憩だと思えばなんて事はない。


「……あ、そうでした。エクストラスキルの事を」


「えっ、いやいや。対価に見合ってませんて」


「え、じゃあもう1つ……?」


「あっ違う、逆です逆!」


 律儀だが、本当に別にいいと思うんだけどなあ。こういう秘匿するべき要素の扱いって基本どうなってたかな……他のだと、ごくたまにあったけど、人に話す様な事は無かったからな。片手で足りるぐらいしかない。えー、こういう時は遠慮無しに聞いた方が良いのかな?


「……一応言っておきますけど自分で言うのも何ですが、私ぐらいの、それも同じエクストラスキル持ちぐらいならどういうスキルか大体分かりますよ?」


「え、マジですか?」


 アポロさんはそう言うので、意外と取引になっているのか?思い返してみるとエクストラスキルなんて、超レア要素だったような……2つもあるから若干麻痺していたような気がする。ここまで言われて固辞するのもアレだし折角だから聞いておこう。そもそもそんな事細かく教えてくれるわけじゃないだろうし。


「アポロさんは普段から使ってますよね?」


「いやアレは広まる事を差し引いても便利なので……」


「そうっすか……」


「そうですね。私が普段使っているのは【泡砲鋏(ヴィクリス)】、見た事あるでしょうが斬撃を飛ばす……のでは無く攻撃を拡張するスキルです」


「拡張……?」


「後は……効果は500秒、クールタイムは200秒。1発毎にMPを消費します。後はえっと……」


「いや十分十分、十分ですって。対価と言うならそんぐらいでは?」


「……そ、そうですね。過剰は良くありませんからね」


 ふう、そのまま止めなければならまあそれはそれで得難い情報が手に入れられるのだろう。だが、そうするとその内隠しておきたい情報を尋ねられた時に隠しづらくなる気がする。下手に情報を引き出すより、無難にイーブンにしておこう……イーブンだよな?まあアポロさんならバレてもいいかな。軽率に吹聴する様な人じゃないし。

 さて、後の時間はどうしようかな。アポロさんが回復するまではまだ動けないし、一旦ログアウトして何かする程の時間でもない。ああそうだ、学校が休校になった代わりの臨時課題が出てるからこれ終わったらやんないとなあ。時間足りるかな?


「古文10ページ訳するとか面倒だよなあ……」


「え?」


 やっべ、口に出てたか。まあ大した内容じゃないから別に問題無いだろう。学生ぐらいはバレてもしょうがないというか、そもそもタッパでそんぐらいは分かるだろうし。見た目変えても身長を目に見えて分かるほど変える人ほとんどいないしなあ。見た目で言えばアポロさんも同じ歳ぐらいに見えるけど、そこは分かんないからなあ。


「38から48ページ……?」


「え、なんで……あっ」


「あ……す、すみません」


 なーんで課題の範囲を知っとるんじゃあ!?というかもしかしなくてもマナー的に……いやどうなのか、俺が自爆した気もするな。わーお、どうすりゃ良いんだか。ここから誤魔化すのは無理だし。


「すみません、本当にすみません……!」


「と、とりあえず起きた事はしょうがないとして……」


「か、代わりになるか分かりませんが、他のエクストラスキルの情報を……」


「い、いやそれは違うから……あっ、一応聞きますけど何故休みに……?」


「家庭科室が火事で……」


 うわ、ビンゴだよ。ここまできたら有耶無耶にするのもアレなので聞いてみたところ、こうなった。同日同タイミングで、同じ原因で休みになって、同じ課題を出された学校が2つもあるわけ無いよなあ。もう良いやと、さらに確認したら違うクラスの同級生でした。それ以上は流石に個人情報だから聞いてないけど、こんな事あるんかーい。


「ええ……?」


「ど、どうしましょうか……?」


「どうするも何も……こんな形でなあ。あ、コトネさんは?」


「いえ、もちろん知らないです。改めて思えば都合の合う日がとても多いと思いましたが……」


 そりゃあ普通リアルの話なんてしないから分かりもしないか。トッププレイヤーが違うクラスの同級生でしたなんて考えないしな、普通。いやー、本当にどうしたものか。内容が内容なだけにどう扱って良いものやら。俺の素性がバレた時点でコトネさんとショウの事まで芋蔓式でバレてるからな。アポロさんが何か悪用したりは多分しないだろうからまだ安心だが、相手からしたら色々不安だろう。


「あー…………アポロさんはどうします?」


「えっと、少し考えさせてください」


「そりゃそうですよね……」


 雰囲気がもう微妙な感じになってしまった。うーん、ちょっと待つか。






「あの……」


「はい?」


「と、とりあえずここから出られる様にしませんか?あったとしても後1戦でしょうし」


「あ、そうですね」


 そうか、そうだな。とりあえずこの中途半端な所でぐだぐだ考えるよりも区切りを良くしてからの方が良いな。確かにあるとしても後1戦。戦闘でこの微妙な雰囲気をリセットしてちゃんと考えられる様にできる可能性に頼ろう。そういう事で、最後に残しておいた玉を壁に嵌める……何も起きないな?


「あっ、嵌める位置……」


「あ、そうか」


 雑に嵌めていたせいで場所とか全然考えていなかったわ。急いで全部外し、改めてレリーフを見るが何かヒントの様な物はない。結局何なんだこのレリーフ、雰囲気オンリーか。


「えっと……」


「もう総当たりでいきましょう。回数制限も無いでしょうし」


 とりあえず総当たりで試してみると、数回で開いた。よく見てみたら部屋の位置に対応してた。何で気づかなかったんだか、恥ずかしい。とにかく無事開いたのでもう見慣れた感じの通路を歩く。今回は少し長く歩きそうだな。


「最後戦うとしたら麒麟かな……」


「一般的にはそうですね。ただ黄竜というパターンもあるので一概には言えないかと」


「あー、なるほど」


 竜かあ。ここまできて無いとは思うが、四神のパターンを崩してくる可能性も無くは……いや流石に無いか。まあ無難な方を考えておこう。


「あ、無難なのは良いとして、属性は何ですかね?」


「えっと、確か土だったかと」


「土か……土?」


 土とかイメージが分かりにくいよな、龍だと。元ネタが中華的な感じだから、イメージするのが東洋龍で西洋竜より合わせづらい。まあ地形操作とかかな。アハルテケの時にモモが土の壁とか出していたけどそんな感じか。いやこの地下でそんな事されたらペシャンコになって死ぬわ。あー……とりあえず更にボスがいるとは限らないから気を楽に……くそ明かりが見える上に何かいるし。


「竜ですね」


「ボスいるなあ」


 四神の時と同じく広くなった部屋に辿り着き、その中心にいたのは、黄色い鱗の西洋竜だった。ボス戦は確定、さて切り替えていくか。


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