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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第二十四話 対価は等しくあるべき?


「すみません、お世話になります」


「いや適材適所だろうし、使って楽に倒せるなら」


「それにしても長く晒す様な……」


「えー、まあしょうがないとしか?」


「……後で1つ教えますね」


「え?」


「あ、来ます」


 いやいや、ちょっとなんて言いました?1つ教えるって……エクストラスキル?それは俺に利益多すぎない?俺詳細教えたわけじゃないしそれは……対価が結構おかしいが、アポロさんその気だしもう良いか。まあ有耶無耶に出来たならその方が良い。

 体勢を立て直した亀が放ってきた水の弾幕を避ける。死角ができたのは良いが、攻撃の性質のせいで近づきづらい。避ける分には上の階層の銃火器相手の経験が活きるが、近づかないとなあ。アポロさんの方は軽々避けながら斬撃を放っているが、甲羅に当たっているため効いている感じがしない。【貫牙剣(アウラ)】を当てられればそれなりにダメージを与えられるんだろうが、近づけないし斬撃を出せたとしても【貫牙剣(アウラ)】の効果は乗らないしな。銃と違って永遠には続かないので、それを待つ。数秒後亀の攻撃は止み、こちらへと突進してくる。


「【貫牙剣(アウラ)】!」


 突進を避けながらの攻撃なのでいささか浅いが、甲羅に傷らしい傷をつけることができた。このまま解体したいが、それを許してくれるならとっくに倒せている、アポロさんがね。ヘイトが移っただけなのか俺に近づくのが危険だと悟ったのかは知らないが亀はアポロさんの方へと体を向ける。


「悪手ですね」


 先程は甲羅にばかり当たっていたためダメージがさほど無かったが、そも高威力の斬撃、甲羅よりはまだ硬くない頭や足に食らえばそこそこの衝撃とダメージになる。更によろけた隙を突き俺が付けた傷に的確に斬撃を放ち内部へとダメージを与えた。


「クルァァァ!?」


 結構なダメージだったのか亀を苦しみ出し、暴れている。うーん、ダメージ判定あるわ、離れないと。


「……引っ込んだな」


「何はともあれチャンスですね」


「え?」


 引っ込んだまま静かな亀に近づき俺が付けた傷に何回も刀を突き刺すアポロさん。刺すたびに甲羅の奥から鳴き声が聞こえ、大分可哀想な感じになっている。


「まあチャンスはチャンスか」


 今の内に甲羅に傷を増やしておけばアポロさんも攻撃しやすくなると甲羅に刀を刺し傷を付ける。


「ク、クァ、クルァ!?」


「あとどれぐらいで倒せますかね?」


「さあ?とりあえず刺していきましょう」


「そ、そっすね」


 倒さないといけないボスモンスターなので可哀想な感じでもさっさと倒そう。そうして刺していくが何か肌寒くなってきた様な?あれ、この甲羅こんな冷たかったかな……霜ついてら。いや床もちょっと凍り始めてるわ、やばい。アポロさんも気づいた様で急いで離れると次の瞬間甲羅から出てきたのは氷を纏った刺々しい見た目亀だった。あー、第2形態。


「随分と見た目が変わりましたね」


「あれ四神としてはアリなのか?」


「そこまでは詳しくないので……水の延長線上なので良いのではないでしょうか?傷も塞がっているみたいですね」


「モンスターだからそこまで気にしなくても良いか。ああ、折角付けた傷が」


「クルァ!!」


 何かスピードと速くなってるし。よく見たらスケートの要領で移動しているみたいだが、割と小回りも効く様で厄介だ。まあまあ時間もかかっているのでそろそろ倒したい。こうなると下手に甲羅に攻略するより首を叩っ斬った方が速いが、余程の隙を作らないと。行動パターンに変化があったからか最初の様な水鉄砲みたいな放出系の攻撃はして来ず尖った氷を使った物理攻撃のみになった。


「……私が引きつけますので後は」


「あ、分かりました」


 亀がこちらへと勢い良く滑ってくる。どっかにあんなモンスターいた様な、いや避けないと。何回か方向転換しながら向かってくるが止まる時は必ず来る。その止まったタイミングでアポロさんは両手で握った刀を振り下ろし斬撃を地面に走らせる。その斬撃は亀の足元で弾け亀が怯んだ。ああいう使い方もあるのか。怯んだチャンスを不意にしないため近づくが、亀も流石に危険だと悟ったのか体勢を急いで立て直した。しかし攻撃はアポロさんの別の斬撃により阻まれる。ここまでお膳立てされて失敗するわけにはいかないな。刀を硬く握りしめ、渾身の力で亀の首へと刀を振り下ろす。


「そらァ!!あっやべ」


 首斬ってる途中で【貫牙剣(アウラ)】の効果が切れたァ!?やっべ、本当にやっべ。どうしよう!?


「ふっ!」


 アポロさんが刀を上から俺の刀に振り下ろし後押しした。その第2撃で亀の首は完全に断ち切れ、残ったのは黒色の玉が1つだった。


「これで2体目か。あ、さっきはすみません」


「いえ、結局倒せたので。結構時間かかりましたね」


「一旦中断しますか?」


「そうですね。明日にしましょう」


 ログアウト自体は問題なくできるので扉の部屋へ戻り、玉を嵌めてからログアウト。ベッドは無いので回復はしないが、まあそこはポーションで何とかすれば良い。

 それにしても改めて考えると厄介な事になったな。折角だからショウに頼るか。






「まさか家庭科室が燃えるなんてな」


「いやー、遠目に見たけど天井焦げてたみたいだよ。何があったのやら……」


「まあこうして早退出来るなら良いだろ。怪我人ゼロらしいし、追加の課題は出てるけど少ないし」


「当事者じゃないと対岸の火事だしね、火事だけに……それで変な所に流されたって?」


「そうそう、何か知らねーかなって」


「いや僕に聞かれてもね。迷宮については知らない事ばかりだし隠しステージねぇ。存在自体は知ってはいるけど鋼輝が思っている様な事じゃないし」


「ええ……まあ的確な答えが来るとは思ってなかったけど」


 元々そこら辺については期待してない。というよりはそんな事まで把握しているならどんだけ情報溜め込んでるんだという話である。ちょっとした知恵袋扱いで頼っているのに、詳しい設定まで答えてきたら怖いだろう。


「それにしてもアポロさんと一緒だって?やっぱり強いでしょ」


「そりゃなー。今戦ってるボスモンスターも時間かければ1人で倒せそうなぐらいだし」


「でもコウもそれなり活躍したんでしょ?エクストラスキル派手に使って」


「活躍っていうかなあ、まあ詳細は言ってないしまだ大丈夫だろ。そもそも否が応でも目立つから時間の問題だろ」


「それはそうだね」


 朱雀と玄武の攻撃は何とか躱せたが、アポロさんはもっと綺麗に躱していた。そりゃステータスの差もあるんだろうが躱す動きも様になっていたからなあ。何か武道でもやっていそうな動きだったが、まあそこら辺はどうでも良いかな。とにかくそれに準ずる事はしている人なんだろう。画面に向かうゲームよりVRの方がリアルの技能が役立ったりするし意外な事が自分を助ける事もあるしな。


「それとエクストラスキル1つ教えてもらえるんだって?情報クラン垂涎の情報だよ、それ」


「いや釣り合ってないだろ?こっちも詳細教えてないんだし。有耶無耶で良いんじゃないかと思うんだが」


「まあ僕もそう思うけど……教えてくれるなら良いんじゃない?釣り合ってないなら鋼輝も教えれば良いでしょ。この先やっていれば不特定多数に知られるのも時間の問題だろうし」


「そうかなあ……」


 確かに【貫牙剣(アウラ)】は攻撃用だし刀が届きさえすれば大体の敵に通用するし使う機会は多い。知られるのも翔斗の言う通りだな、まあ他言しなければ良いわけだし。そもそも1つ教えてもらったぐらいで勝てる相手じゃないから大丈夫か。さて、帰ってログインしないと。アポロさんいるかな、まあ準備とかしてれば良いかな。


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