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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第二十二話 朱雀


「やっぱりあの窪みに嵌める物を集めろってことですかね」


「多分そうだと……丁度道も4つありますし」


 俺達がやってきた道の向かい側にある扉、そこを調べると4つの窪みがありそこに何かを嵌めるようだ。嵌める事で扉を開く事ができる感じか、分かりやすくてありがたい。窪みは半球状になっているので、集めるのは玉かな。他の4つの道を行かないと集められないのだろう。


「……どこから行きますか?」


「うーん、特に手がかりもないんで……えっと」


 刀を床に立て手を離す。倒れて向いた方向は中途半端な方向では無く、綺麗に道の1つに向いた。


「じゃあこっちに行きます?」


「そうですね」


 ここで見る限りはどの道も何か違いは見受けられず、閉じた扉のレリーフもヒントらしきものは無い。なのでこの様な雑な決め方になったが、まあしょうがないだろう。アポロさんの手持ちのランプじゃ光量が足りないから端まで見えないし。そういう事でアポロさんと刀が倒れた方にあった道へと進んでいく。落ちた部屋からの時の様に長く歩くのかなと思ったが、予想を裏切り道はそこまで長くなかった。辿り着いた先は5階層や20階層の時の様なボス部屋の様だったが、そこよりも2回りは広い気がする。明かりが付いていたのは最初の部屋だけだったが、このボス部屋には最初から付いているみたいだ。そして、その部屋の中心には炎を纏った鳥のモンスターがいた。


「あれを倒さないと手に入らない感じか……?」


「多分そうじゃないかと。もしかしたら避けるタイプかもしれませんが、それは無いと思います。奥に玉がある感じはしませんし」


「そうだよなあ」


 まあ避けるタイプなら俺たちの方を向いて待ってたりしないよな。というかアポロさんって考察とかだと、割と喋るのかな。声量は余り変わってないが、慣れたお陰で特に支障は無い。とにかく、あの不死鳥っぽい見た目のモンスターを倒さないといけない訳だ。ちなみに俺達がゆっくり見ていられるのは部屋の中には一歩も立ち入っていないからである。悲しいかな、ゲームのシステムに縛られておる。心なしか鳥がこちらを凝視している気がするが、まあ気のせいか。真正面向いてるだけだからそう見えるだけだな。あとアポロさんが思考の海に沈んでいるからそろそろ引き上げないと。


「アポロさん?」


「…………あっ、すみません。お見苦しいところを……」


「いやいや」


 恥ずかしかったのか、声量が2割減。慣れたとはいえ流石にこれ以上下がるのは困るのだが。聞き取れないのはちょっと。


「えっと、どうします?もう挑みます?」


「いえ他の3つを見てからにしましょうか。幸い入らなければ戦闘にならないみたいですし」


 特に不都合は無いのでアポロさんの提案に乗り、一旦戻る。戻る時に少し振り返ってみると鳥は動いていなかったが、なんとなく落ち込んでいる様な目を……気のせいだな。他の3つを見たところ、尻尾が蛇の亀、青い木で出来た龍、白い虎だった。ここまで来れば何を表しているかは俺でも分かる。


「四神ですか、扉の奥は麒麟ですかね?」


「それが無難ですけど……どれから倒します?」


 四神に順番があるかどうかまでは知らないが、4つ玉を集めれば良いし順番を指し示す様なヒントも見当たらなかったから大丈夫だろう。もしかしたら運営は常識でしょみたいな感じで作ったのかもしれないが、それは無いと信じたい。


「そうですね……では朱雀から行きましょう」


「その心は?」


「え、いや最初に見つけたので……」


 あ、特に意味は無かったのね。これはお互いに恥ずかしい奴だ。触れるのは止めておこう。まあとにかく朱雀(暫定)から倒すことになったのでまた戻る。イメージと見た通り炎の鳥だが、ポーションは十分あるし最低限は大丈夫だろう。


「連携はどうします?」


「そうですね……ジョブ系統が同じですから……自由にやりましょう。そういえばコウさんの動き知りませんし」


「そうですね、お互いに邪魔にならない感じで」


アポロさんとパーティ組んだ事無いし、下手に動きを合わせるよりはその方が良いか。2人で部屋の敷地に踏み込むと、ついに朱雀は動き出し羽を広げた。近づいてみると結構でかいな……4、5メートルぐらいあるんじゃないか?これ、2人で倒すの?まさかここの進行の判定は合計戦闘力みたいな感じだったりしないよな、それだとアポロさんが突出しすぎな気がするんだけど。まあ今更だな。朱雀が空中へと飛び立ち、戦闘態勢へと入る。


「ではお互いに頑張りましょう……!」


「あ、そうですね」


 アポロさんが何かのスキルを発動させた様だが、上手く聞き取れなかった。エクストラスキルかな、まずは朱雀の方に集中しないと。朱雀の方へと視線を向けるとこちらへと飛び込んでくるところだった。ヘイトこっちかい。


「あっちぃ!!」


距離があったから普通に避けられたが、かすってもいないはずなのに熱さを感じるとは。システムのお陰で少し熱いな程度になるはずなのにこれとは、どれだけの熱量なんだか。朱雀は身を翻し俺へとまた向かってくるが、それは横から飛んで来た斬撃によって阻まれた。アポロさんのアレか、やっぱりエクストラスキルだった。ダメージはともかく衝撃はそれなりにあったようで朱雀の体勢が崩れた。俺も一太刀浴びせるが、思ったよりも手応えが無い。もしかして体は炎に置換されてたり?ダメージ入ってんのかな……攻撃を阻まれたのと体勢を崩されるほどの衝撃を与えたアポロさんに朱雀のヘイトは向いた。アポロさんなら大丈夫だろうけど俺はどうしようか?【貫牙剣】を使うべきか、いや……いやアポロさんなら別に良いか。アポロさんの人となりは多少知ってるし、コトネさんと仲が良いみたいだし。手の内を晒しても言いふらしたりはしないだろう。もしPvPの機会があっても俺のエクストラスキルで不意をつけても負けそうだし。ならここで円滑に倒せる方が良いかな。また使うのは基本的に【貫牙剣】だけだけど。


「【貫牙剣(アウラ)】」


 朱雀の方はアポロさんへ炎を吹いたが、それを難なく躱し、先程と同じく斬撃を朱雀にぶち込んだ。こっちは気づかれないように死角へと走っていく。こちらに気づいたアポロさんは少し目を見開き驚いた様だったが、すぐに表情を戻し、朱雀を引きつけてくれる様な動きになった。下手に時間をかけると気づかれるので急いで近づき、刀を朱雀の胴体へと突き刺す。


「ギィエエェ!?」


 初めて鳴き声をあげた朱雀は身を振りまわし俺を振り払う。


「うぇべっ!」


 痛ぇ、受け身取れなかった。というか良かった、効いたわ。あの炎も防御扱いなのかな。


「あんまりダメージは入ってなさそうですね」


「基本的な急所はあんまり関係ない感じですかね。今のも驚いただけかな……頭も試してみたいけどな」


 朱雀が驚いている間にアポロさんが話しかけてくる。配慮なのかエクストラスキルには触れてこないのでありがたい。朱雀の特徴はなんとなく掴んだが、クリティカルを狙えそうな箇所が無いのが面倒だなあ。


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