第一話 少年は舞台へ
初投稿です。
初めて小説を書くので拙い文章かもしれませんが楽しんでいただければ幸いです。
「やっと、やっとプレイできる……!」
そう言いながら俺は扉に入室禁止の張り紙をする。ないとは思うが待ちに待ったゲームを邪魔されるわけには行かない……!喉が渇いた時の水分も用意し、長時間ゲームをしても問題ない状況を整え、棚から取り出した「Arkadia spirit」と書かれたゲームのパッケージを開ける。
「Arkadia spirit」とは半年前に発売されたゲームのことで、今までのVRゲームを軽く上回るクオリティを誇っており、表情豊かで運営が1人1人操作しているのかと見紛うようなNPC、多彩な動きをし現実で戦っているかのように感じるモンスターなどとにかく話題になることが多い。
まさか受験勉強を始めた時期にこんなゲームが発売されるとは思わなかった……! 志望校は自宅からの距離で適当に選んだところとはいえ、ゲームにのめりこんだまま合格できるほど易しい所ではなかった。とりあえず初日にソフトは手に入れたもののプレイするわけにもいかず棚に入れ半年……先程問題なく自分の番号の横に合格の2文字を確認し、急いで家に帰って今に至る。
これで友人の感想に悩まされることもなくなる……!サービス開始初日からプレイして、ことあるごとにグラフィックがすごいやら、NPCのAIがすごいやらとプレイしたくなるようなことを言ってきてあいつは悪魔か何かか!……あいつは俺と同じ志望校だが、俺よりやたら頭が良いので受験日までゲームしてようが受かるだろう。というかあいつの番号確認したら合格になってたし。とりあえずゲームであったら何かしらひどい目に合わせよう。うん、そうしよう……そうじゃなくても何かしら度肝を抜かせられたら満足なんだが。
「さていこうか!」
そうして準備を終えた俺はベッドに横になりVR装置を起動する。一瞬視界が暗転すると、何もない白い空間が現れた。すると目の前に半透明のウインドウと真っ白なマネキンが目の前に現れる。
「ええっと?とりあえずキャラメイキングか」
このゲームは、グラフィックの良さを売りの一つにしているだけあって結構な数の顔のパーツやらなんやら用意されている。1から作るのが面倒な人向けにリアルの姿をベースにもできるみたいなのでそれを選択。すると目の前にはベッドで横になっているであろうリアルの俺の姿が表示された。
「まあいつも通り色変えるだけでいっか」
リアルの姿がベースなのだから髪や目などの色だけしか変えないのはプライバシー的な問題があるかと思われるかもしれないが、意外と雰囲気が変わるものである。そういうわけで大概のVRゲームのプレイヤーはそんな感じな人が大半を占めている。かくいう俺もキャラを作るときはいつもそうである……中には1からこだわって作っている人もたまに見かけるが、今までのものはパーツの幅が狭かったりするので量産型イケメンみたいなのが多かった。このゲームは細かく用意されているのでそういう人たちはやりがいがあるのではないだろうか。
「あとは……ジョブか。とりあえず剣士でいいかな刀もふくまれてるみたいだし」
最初に選べるジョブは剣士、槍士、戦士、拳士、盾士、盗賊、魔術士、弓士、銃士、付与士、吟遊詩人、生産者の12個だが上位のものになると派生したり属性で別れたりするようだ。刀の扱いに特化しているジョブは剣士系派生みたいなのでこれでいいだろう。俺はこういうジャンルのゲームの時は刀がある場合は大体刀を使っている。西洋剣よりなんとなく扱いやすく感じるし、何より見た目がかっこいいし。調べてみて分かったが、やっぱり半年も経ってるとWikiも充実してきてるな。というか、1次職とはいえ生産者ってジョブ、括りが大雑把すぎないかと思うが、派生が多かったりするのだろうか。あと最初に吟遊詩人選ぶ奴いるのか?どういうスタイルのジョブなんだ、これ。ジョブは剣士系のことしか調べてないから分からんわ、見とけば良かったな。
「これ最初のステータスはどのジョブでもこの値なのか」
Name:コウ
Level:1
Main job:剣士
Sub job:なし
HP(体力):10000
MP(魔力):100
SP(技力):100
STR(筋力):100
VIT(耐久力):100(+2)
AGI(敏捷):100
DEX(器用):100
INT(知力):100
LUC(幸運):100
武器:初心者の剣
所持金:1000G
ジョブを決めると自分のステータスが表示される。キャラメイクでステータスポイントを割り振ったりはできないみたいなので最終確認とかそんな感じか……なんかHPがすごいことになっているが、このゲームだとHPはこのまま固定でVITをあげたりすることで被ダメージが下がっていく仕様らしい。レベル1で初期マップのモンスターの攻撃をもろに受けると数千ダメージ受けた、とWikiに書いてあった。兎とおぼしきモンスターに体当たりされて1000ぐらいのダメージを受けるプレイヤーの映像もあり、小さな兎の攻撃でその大きさのダメージを受ける光景は仕様とはいえなかなかにシュールだった。そのあとゴツいタンクらしきプレイヤーが出てきて、同じ兎に体当たりされたところダメージは0だったが。検証班みたいなのがいると、俺は攻略サイトは割と利用する方なので本当にありがたい。
あとはMPは主に魔法を使うときに消費するものだが、近接職などでも一部のスキルは消費することがあるらしい。ほとんどのスキルはSPを使うのでMPを上げる近接職は少ないそうだが。STR、VIT、AGIは言わずもがなだろう。VITの+2は装備の補正みたいだ。まあ初期装備だから数値が低いのはしょうがないだろう。上下で2だから1つ+1か。
DEXは生産系やスキルの成功判定などで参照されるが、さらにこのゲームだと実際に器用になるみたいだ。結構な数を連続で的の中心に矢を当てたとかいろいろ書いてあったが、どういうシステムなんだろうか。変に騒ぎ立てるやつとか出てきそうだが、今のところそんな話は聞いたことがないので大丈夫なんだろう。
INTは魔法の威力が上がるらしくMPを多く消費しても上がるみたいだが、INTを上げたほうが効率が良いみたいだ。また、魔法を操作しやすくなるみたいで魔法の弾道を曲げられたとか複数の魔法を合成できるとか。
最後のLUCはアイテムドロップにかかわるが上げてもそこまで変わらないらしい。レベルアップで得たステータスポイントを結構な割合でLUCに振ったプレイヤーがいたそうだがそこまで上げてもドロップが一、二個増える程度みたいで、それならほかのステータスを上げて周回の効率を上げたほうがいいだろう、という結論になったみたいだ。あとはLUC値を下げるモンスターがいるらしくLUCの値が五十を切るとスキルの発動が失敗しやすくなるとか魔法が暴発するとかとりあえず不幸なことが起こるらしいが、対策は割と簡単みたいで結局このステータスは重要視されてないみたいだ。ちなみに振り直しは課金で出来るそうだがレベルが半分になりその分ステータスも下がる様で、上げ直すのはだいぶ苦労するそうなので後悔しない様に気をつけたい。
「あとはプレイヤーネームか」
これはすぐに終わる。ゲームをするときに大体使っているコウという名前を入れるだけだ。鋼輝からコウ、安直だが無難だろう。友人も似たような感じだし。これで大体の設定が終わりいよいよゲーム本番である。
「それじゃあゲーム開始だ」
ゲーム開始を選択し、待ちに待ったゲームの世界へと飛び込んでいく。