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星の降る惑星を、  作者: 若野輪
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ホームルーム

入学式が終わり、クラス別に分かれてホームルームが行われる。竜也と凛は、Bクラスの前の廊下に立っていた。華鱗高校において学年という概念は極めて薄い、いや無いと言っても問題が無いほどだ。実力主義の華鱗高校に年齢は関係なく、ただただ実力のみでクラスを振り分けられる。そのため、Aクラス、Bクラスの構成は先輩が多く占めているのだ。逆にEクラス、Fクラスは1年生が多くを占める。一クラスにおける生徒数は20名であるため、華鱗高校の総生徒数は100人である。勿論退学者は毎年出る為、卒業式前には、100人ではないのだが。


「先輩方は既に教室で待機しているようだし早く入りましょう」

「そうだな」


クラスメイトとの初の顔合わせ、若干の緊張をしながら二人は教室の扉をゆっくりと横にスライドさせていった。扉を開け切った二人はすぐには教室に入らず、椅子に礼儀正しく着席している上級生達を前にして第一声を考えていた。通常であれば、挨拶をすればよいのだが、Bクラスに漂う空気が、その普通の行動を躊躇わせているのだ。


「君たちが新入生の葵竜也と藤林凛だね、歓迎するよ」


一人の男が、蝋人形の如く動けずにいた二人に声をかけた。彼の一声で二人の時間が再度動き出す。


「初めまして、新入生の葵竜也です」

「初めまして、同じく新入生の藤林凛です」


二人は目の前にいる男に向かって挨拶と自己紹介を行った。二人とも理解したのだ。この男がBクラスにおけるリーダーであることを。それは、彼が自分たちに最初に声を掛けてきたからではなく、彼から漂う実力の高さを、直感で悟ったからである。


「挨拶はホームルームでするから、今言わなくてもいいよ」


男から言われた言葉は、文章だけで見れば冷たいものであるが、彼の声音や態度から二人に対する悪意は感じない。クラスの面々に対してのアクションに悩んでいた二人に、助け船を出すために言った言葉である。


二人は目前の男に対して、「はい」と返すと自分が座る席を探し始めた。ただ当然、空いている席は二つしか存在しないため、苦労なく自分の席を見つけ、二人はそれぞれ席についた。


数分後、チャイムの音が校内に響くと同時に担任の教師であろう男性が扉を開け入ってきた。年齢は30代半ば頃であろうか、表情や薄っすらと見える皺が彼の年齢を示唆していた。しかし、華鱗高校の教師の中では異例の若さである。華鱗高校に勤務する者たちは一部を除いて皆元国家魔導士であるため、天下りの老人ばかりなのである。その中で30代の教師がいるというのはそれだけ不可思議なものなのである。


「おはよう、Bクラスの担任になった竜胆 叶威(りんどう かない)だ。早速だが皆の自己紹介をしてくれ・・・」


竜胆先生は、挨拶を軽く済ませると生徒の自己紹介を促した。最初のホームルームは自己紹介が目的であるが、竜胆先生の話の進め方には急ぎ足な部分が多く感じられる。自分自身の挨拶と生徒の自己紹介以外のことは一言も触れず、最短で話をまとめている事からも、それは間違いないだろう。


「それでは、出席番号の順番でいいですか?」


先ほど二人に声を掛けた男性が竜胆先生に対して自己紹介の進め方の提案を行った。竜胆先生はそれに同意の意志を示したため、早速自己紹介が始まった。それぞれが学年と名前を淡々と述べていったので、さほど時間をかけることなく自己紹介は終了した。


「自己紹介も済んだことだし、学級長を決めるぞ・・・」


またしても竜胆先生は、一言だけ発すると黙り込んでしまった。どこまでも最短で事を進める竜胆先生に、Bクラスの生徒も少し違和感を持っていたが、それを抑えこんで学級長決めを開始した。


「では、まずは学級長になりたい人はいるかな?」


自己紹介の進め方を提案した時のように、先ほどの男性が質問を繰り出した。だが手を上げる者は皆無。皆知っているのだ、このクラスで一番力を持つ者が誰であるかを。だからこそ誰も手を上げる事ができずにいたのだ。その後の流れは決まっている。


「では、僕が立候補しよう、他に立候補する人がいない場合は僕が学級長と言うことになるけど皆いいかな?」


学級長は、二人に声を掛けた男性に決定した。


「では改めて、桐生院 凪(きりゅういん なぎ)です。学級長として頑張っていきますので、一年間よろしくお願いします」


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