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星の降る惑星を、  作者: 若野輪
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幼少時代

 主人公と幼馴染の少女、二人の幼少期の些細な一コマ、高校に入学する以前の生活を描いた。

 科学の進歩と引き換えに魔法が発達した星、天球という名の惑星に複数の星が降り注いだ。それは歴史に残る大災害であり、後世の世に『異流星群』(エイリアンスターズ)と語り継がれている。


「はぁはぁ、なんだ!こいつは!」

「なんでこんな強いやつがいるんだよ」

「なぜ俺たちに敵対する!」


「理由はない…全ては天運だ」


燃え盛る街にいくつもの死体、それらは老若男女問わずに転がっていた。辛うじて生きている人間も数人しかおらず、一人を除いて皆膝をついている。唯一無傷で立っている男は、虚無の瞳で負傷した者たちを見下ろしていた。彼の影は炎の動きに合わせ、ゆらゆらと揺らめき、時折その影が人々を暗く染める。その情景は、まさに死と絶望を連想させる悲惨な姿をしていた。



7年前


「あぁ、暇だな」


 幼いながらも心地よい低音が混ざった成長期独特の声音が、長閑な草原でぽつりと零れ落ちた。市街地から離れた農場、広がる田畑にどこまでも青い空が一人の少年を包み込んでいた。青年の名は『葵 竜也』(あおい たつや)。天球に存在する数多の国々の一つ、『グラム王国』の住民である。農民の家柄でありながら、神童と謳われる魔導士見習いである。魔力量は貴族出身の者と遜色なく、魔法技術も援護魔法・遠距離魔法以外は同世代に並ぶものはいないといわれるほどである。


「暇なら修行しなさい!」


静けさが魅力でもある農場に、不釣り合いなほどの騒がしい声が突き刺さった。騒がしいとは言っても決して不快なものではなく、鼓膜を激しく揺らしながらも脳に残る美しい声であった。声の主は、『藤林 凛』(ふじばやし りん)という少女である。美しい紅い瞳に、腰まで伸びた艶やかな金色の髪、顔にはまだ成熟しきっていない愛らしさが残っていた。少女はグラム王国国王の一人娘であり、『自称、葵竜也のライバル』を名乗っている。


「お前また城を抜け出してきたのか、おやじさんにどやされるぞ」


「あなたが訓練場に来ないから私が出向いてあげてるのよ!」」


「だってお前俺より弱いじゃん、訓練にならねぇんだよ」


「私より強いって、一つ勝ち越してるだけじゃない」


「勝ちは勝ちだろーが」


「わかったわ、竜也は私に負けて勝ち越されるのが怖いわけね」


安い挑発ではあるが、竜也のやる気を引き出すには十分すぎる効果があったようだ。竜也の目には殺る気と言う名の炎が揺らめいていた。


「上等だ!絶対負かす!」


殺伐とした空気のなかに仄かに香る信頼と冗談、彼らの関係は完成された二人だけの絶対的なものであった。


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