15
完全に死んでしまう前に久しぶりにぐっすり寝れるかと思ったのに、長い長い夢を見た末に、結局真夜中に起きてしまった。
「んー……」
がりがり、と頭をかく。首を回してみる。時計が部屋の中に見当たらない。何時に寝て、何時に起きたんだろう。確認した記憶がない。お風呂を借りてそのまま疲れてばたんきゅー。布団を敷けたのが奇跡に思える。二十時くらいに寝たのかもしれない。だとしたら、たぶん体感的に、いまは二十四時くらい。
「明日……、もう今日か。何時に出んのかな……」
くぁ、とあくびは出るけれど、もうすっかりいつもの癖で頭は覚めてしまっている。
このままふとんの上に転がって、朝を待とうか。だらだらと。
べつに、それも悪くはないと思うけれど。
「せっかくだし、もう一回風呂、入っちゃおうかな」
結構、広かったのだ。
子どもの林間学校の宿泊所に使われていてもおかしくない……、というか、ほんとうは元はそういう施設だったんじゃないかと思う。
この部屋だって、ひとりで寝てるのに、明らかに四十人くらい眠れる部屋だし。
ざあ、と布団のこすれる音がして、沙季は起き上がる。背伸びして、腰を回して、すっかり臨戦態勢。
電気を点けていないのに、少し明るい。
カーテンの隙間から、薄く光が差しこんでいる。
むかしの記憶がよみがえった。
小学五年生のときの林間学校、ちょうどこんな風に大部屋に泊まっていて、窓際に寝ていた子が、外に幽霊がいた、と言って泣き始めた。
いまになっては鼻で笑ってしまうような話だけれど、当時のクラスメイトたちは、本気で幽霊の存在を信じていた。きゃーきゃー言って怯えて、先生が来て怒られて、とっとと寝なさい、そんなこと言われても怖いものは怖いもんね、ぎゅーぎゅーになって廊下側に眠る子どもたち。
そのとき、沙季はいちばん窓側に寝た。
怖くないよ、と言ったから。ほんとうは怖かったけれど、自分以外のみんなが、すごく怖がっていたから、勇気を出して、うそをついて。
いまにして思えば、ほんとうにちゃちな勇気だけれど。
だって、幽霊なんて、
「――って、いまのあたしがそうか」
なんじゃそりゃ、とくだらなく思えて笑ってしまう。
中学生のころは、もしも幽霊がいるとするなら会ってみたいと、会って恨み言のひとつくらいぶつけてやりたいと思っていたけれど、いざ自分がなってみると、なんのことはない。なにも変わらなかった。
ただ、そのうち終わるって、それだけ。
カーテンを開けた。
「――わ、」
道理で明るいわけだった。
夏の満月。
あかく、あかく輝いていた。
しばらくその光を瞳に溜めて、それから沙季はゆっくりと部屋を出ていった。
静けさを壊さないように、そろりそろりと。
扉を抜けたら、左に進む。
トイレがあって、集合洗面台――、小中学校に備えつけられていたみたいな、蛇口と鏡のずらっと並んだ、タイルの洗面台を横目に進む。
埃を被った、談話スペース。ぼろぼろにすり切れた児童書。
中庭に面する窓。
「あ」
目が合った。
一瞬、ぺこり、と会釈だけして抜けられないものか、と思ったけれど、そうもいかないらしい。缶コーヒーを片手にその死神はちょいちょい、と手招きをした。
おあつらえむきの勝手口は、簡単に開きそうな内鍵で。
「こ、こんばんは……」
実際に開いてしまった。
べつに逃げようとしたわけでもないから、後ろ暗いところはないはずなのだけれど、それでもなんだか気まずさに低姿勢になりつつ、沙季は中庭を横切って、近寄っていく。
「眠れないのか?」
「いや、一回眠れたんですけど、そのあと起きちゃって……」
シロファニアはちらり、と自分が手に持っているものを見て、
「……カフェインのせいか」
「あ、いや。あたしもうカフェインあんまり効かないんで。……ていうか、死んだ後も関係あるんですか、そういうの」
一瞬シロファニアは眉をひそめたかと思うと、ルールはだいたい同じだ、とだけ言った。
それで、会話は途切れる。
五秒くらいは耐えた。
その末に、じゃああたしもう一回お風呂入ってきます、とその場を後にしようとしたところで、
「――きみの生命保険は、問題なく下りるだろう」
いきなりだったから、なんの話なのかパッとわからなかった。
「こっちに戻ってくる前に確認してきた。警察は病死と判定して、あとは粛々と手続きが行われるだけだ」
「え、あ」
言葉に詰まる。
だって、そういうことを教えてもらえると思っていなかった。
「いいんですか、そういうの言っちゃって」
「かまわない。というより、『魂送り』というのは、元々そういう活動でもあるんだ」
シロファニアは、くい、と缶コーヒーを傾ける。夜風に乗って、沙季の鼻までその香りが届いた。
「きみのように物分かりのいい人間ばかりではない。人間は――、もちろん死神だってそうだが、命が終わるときだれしもこう思う。こんなはずじゃなかった。短すぎる。約束がちがう。するべきことをしていない。
悔いが残る。どうしても。
そういう人間に、きみの死後はこんな風になった。だから頼む、死んでくれ、とお願いするのが――、ときに強制するのが、死神の、特に『御魂回送局』の役目なんだ」
突き刺さるよなあ、とそれでもどこかのんきに、沙季は思った。
自分だって思った。短すぎる。約束がちがう。するべきことをしていない。
でも、たったいま。
死神の前から、それこそ死に物狂いになってでも逃げだそうとしていないのは。
きっと。
「ふつうの死神では『魂送り』ができない場合もある。そういうときに出張ってくるのが『御魂回送局』――私の所属する公的機関だ。それこそ私の常日頃の職分は凶悪犯罪者の相手だよ。こういうとき、魔法が人より上手く使えるのも困りものだ。
ほかにはたとえば、死後のシステムに関して宗教的な信条と折り合いをつけることができない者――、こういう人間には『解釈室』の死神がつく。理論的・論理的・感情的に相手に納得できるような説話を行うらしいが、私には正直よくわからない。おおむね無宗教か、なんらかの宗教に属してはいるがそれに対して無自覚的で、死後システムに対して順応しやすい地域の担当ばかりだから――」
「あの、その死後のシステムって」
聞いちゃっても、と沙季は小さな声で聞いた。
もう自分はあまり質問できる立場ではないだろう、という感覚はあるのだけれど、気になるものは気になる。それに、いまの話を聞いた感じだと、ほかの死んだ人たちも、状況によってはきっちり説明されているようだから。
シロファニアは、うなずいてくれた。
「ルウ少女から、『たまひも』のことや、『原初海』のことは聞いたか?」
「はい」
「だとすると、正直あまり話すことはないんだが……」
「あの、じゃあ、あたしから質問していいですか」
「ああ、かまわない」
「死神って、神さまなんですか」
予想していなかった、というように、シロファニアが大きく目を開いた。
言葉が足りなかっただろうか、と思って、沙季は続ける。
「いや、もちろん魔法とか使えるから、あたしたちが言う――っていうか、その、無宗教?の人が言う神さま的なやつってことはわかるんですけど、それ以上の。たとえば、世界を創ったのは死神なんですかとか、そういうこと」
言葉を重ねていくうちに、シロファニアの目が細まっていく。
すごく悲しそうに笑うんだ、と思った。
「ほんとうの神さまだったら、こんなことはしないよ」
優しい声で、そう言った。
「死神というのは、通りがいいからそう名乗っているだけだ。正直言って不遜極まりない言い草だと思うが、そうした名前でもなければ、多くの死神は己の『魂送り』に対して疑問を持たざるを得ない。必要な措置だ――という言い方も好きではないが、はっきり言ってハリボテだよ。システムを効率よく動かすための虚名だ」
「システムっていうのは、ええと、人間が死んだら『原初海』に『魂』を溶かし直すっていう」
「ああ」
「その、これはべつに嫌で言ってるってわけじゃないんですけど、実際、どうしてそうしなきゃいけないんですか? 放っておいてもいいような気がするんですけど……。だって、人間の世界と死神の世界って、べつに関わろうとしなきゃ関係ないですよね?」
「――建前と、ほんとうのこと、どっちが聞きたい?」
沙季がその言葉を咀嚼する前に、
「どちらも話そうか。建前は、『物質界』で『魂』が飽和することを防ぐためだよ。人間が死ぬ。『魂』が残る。それとは関係なしに『物質界』で生き物が生まれるたび『原初海』から『物質界』へと『魂』は飛んでいく。その生き物が死ねば、また『魂』が取り残される。
あっという間に飽和するんだ。地球全体がぎゅうぎゅうに『魂』で詰まってしまう。あるいは完全に埋まる。自分の居場所を確保するために、互いが争い合うようになる。『物質界』で失われた魂がどうなるかについては、これといった確定説がない。『原初海』になんらかのルートを伝って戻る、という説もあれば、完全に消滅するという説もある。
『物質界』において『体』の社会と『魂』の社会のふたつが併存するようになるが、特に後者の生存競争の方が熾烈になると見られている。というのも、『物質界』において『魂』は生殖活動を――有性生殖であれ無性生殖であれ――行えないとされているからだ。
単に家庭形成がどうとか、そういう話ではない。農作も牧畜も、なにもないんだ。生み出すことができないから、奪うことでしか生き延びられない。『魂』そのものを食らうしかないんだ。
コミュニティが一切生まれず、個人レベルで常時闘争状態になるか、あるいは先に死に『魂』の社会に辿り着いたものたちが徒党を組み、新規参入者を組織的に排除するようになるか――、いずれにせよ、暴力が支配する。そして『魂』は回復可能かどうかもわからない資源として消費されていく。いつか『原初海』すらも枯れ果てるのかもしれない。
そうしたことが起こらないよう、我々死神は慈悲の心でもって人間の『魂』を『原初海』に送らなければならない。『物質界』に恐ろしい闘争の場が生まれぬよう、『魂』がこの世に尽きてしまわぬよう――」
ここまでが建前だ、とシロファニアは言った。
沙季はうっかりうなずきかけていた。ちゃんとした理由があるんだ、と思って。ちゃんとした理由があってよかった、と思って。
けれど、シロファニアはその先を口にする。
「実際のところは、私たちの保身だよ。物事の始まりはともかく、現在の政府上層を見渡す限りは、まちがいなくそうだ」
「保身……?」
「ルウ少女の考えは、正しいということだ」
きっぱり言った。
だから、ものすごく驚いた。
「え――」
「いまのは『魂』がそのまま放置されたら、という話だよ。『魂』だけで飽和させてしまうのがまずいなら、ちゃんと生き返してやればいいんだ。あるいは、新しく生まれてくる生命に、『原初海』に先んじて死人の『魂』を結び付けてやればいい。『身体』と常にペアになるよう『魂』を調節すれば、なにも問題はない。それなら、いままでの『物質界』のルールの延長で動かせる……。そもそも、さっきの話だって、後から言われ出した話だよ。たしかにある程度筋は通って聞こえるが、それは『物質界』が現状のように運用されているから、『心霊界』について一切の知識がない状態で回っているから、起こる話だ」
シロファニアは、薄くまぶたを閉じる。
「怖がっているだけなんだ」
「なにを、ですか?」
「自分たちが人間と関わるのを」
いまいち、沙季はピンとつかめなかった。
そのまま、シロファニアが先を続けてくれる。
「『心霊界』には魔法がある。だから、『物質界』が抱えている問題を、成り立ちの時点でクリアできている場合が多々あるんだ。たとえば、エネルギー問題がそうだな。ローコストで、環境リスクは特殊な場合を除いてほとんどない。
『心霊界』は、『物質界』と比べれば、平和で豊かなんだ。
だから、怖がっている。きみは、もしいまから……」
そこで言葉に詰まる。
言ってはいけないことを言ってしまった、という顔で。
数秒、沙季は考えて、ああ、と納得する。
「生き返れたらどうする、って話ですか?」
「申し訳ない。軽率な物言いだった」
「いいですよ。仮定の話だし。……どうせ信じてもらえないだろうけど、でも家族くらいには言っちゃうかな」
シロファニアはうなずいて、
「きみひとりくらいであれば、たしかにそうだろうな。だが、突然生き返った人間たちの全員がおなじ話をしたらどうだろう」
「そりゃまあ……、さすがに信じるようになる?のかな」
「すると、『物質界』が『心霊界』を認知するようになる。……それだと困るんだ」
「ええっと、」
「魔法というのは、死神の持つ生得的な能力ではないという見方がある。私たちが科学を用いることができるように、魔法を人間が使うことも、おそらく可能だとされている」
沙季は、ルウが言っていたことを思い出す。
――死神がいるから、なんとなく『物質界』より『心霊界』の方がよさそうに聞こえちゃうんだよ。形だけ見たら、『魂』が死ぬ前に一枚壁がある分『物質界』の人の方が有利なのに。
「『物質界』と『心霊界』のゲートを開けられる人間が出てきたらこの世の終わりだ、なんて裏で上層部は言ってるよ。ほんとうのところ、私たちの『魂送り』は奉仕ではない。リスクコントロールだ。実際には、『物質界』になんて毛ほども関わりたくないと思いながら、『物質界』に『魂』社会が生まれた場合に、長く生きた『魂』が『心霊界』を発見してしまうかもしれないと怯えているから、きみたちから死後の時間を奪い取っている。親切面をして」
シロファニアは、額を押さえると、小さな声で、
「神さまなんて、ひどい冗談だ」
ものすごく傷ついた様子でシロファニアは話したけれど。
はっきり言って、沙季はそれを悲しいことだとは、まるで思えなかった。
「『蘇生級』……人を生き返す技術を持った死神が少ないのも、なにもその魔法の習得難度だけの問題じゃない。補助となる理論がまるで開発されていないんだ。愕然としたよ。一部の魔法に対する直感が鋭敏な死神しか――そこに至るまでの道筋をその都度再発見できた死神しか、それを使えないように仕組まれているんだ。そしてそれが使えることがわかると、政府筋からの接触が来る。こうこうこういう理由で蘇生に関する魔法理論を公表するのは控えろと。医療福祉の現場から完全に魔法の応用が排除されているのもその理由だ。人間との接触を恐れるあまり、死神の延命技術についてまで隠匿されている。そのくせ、情報権を握った上の方では医療魔法を使い放題だよ。『心霊界』の寿命は、年収や社会的地位によって明確な格差があるんだ」
だって、当たり前のことだと思ったから。
偉い人が得をする。
偉い人は偉いままでいたいから、弱い人にはできる限り手を貸さない。貸したとしても、それが自分の利益になるようにする。
だって、そんなの当たり前のことだと思ったから。
だから、
「あの、べつにそんなに悲しまなくても……」
それを知ったことによる悲しさとかよりも、目の前で悲しそうにしている相手の心配の方が、強くなった。
ほとんどシロファニアの背中は丸くなっている。自分で言っていて、自分でつらくなってしまったらしい。
責任感が強くて、そのうえ優しいんだろうな、と沙季は思う。
そういう人は生きてて大変そうだし、なんならかわいそうだな、とすら思う。
もっと気楽に生きればいいのに。
こういうことしてだいじょうぶかな、と思いつつ、背中をさすってみたりしながら、
「あたしだってそんな感じですよ。いや、あたしと比べられてもって感じかもしれないですけど。お金に余裕があったころだって、恵まれない子どもに募金とかしたことないですし。話はちょっとちがうかもしれないけど、動物の肉とかだって平気で食べてたし。そんなものですよ」
しばらく、シロファニアはなにも答えなかった。
ひょっとして泣いてるのかな、と沙季は思ったけれど、口には出さなかった。自分より年下の人間から、泣いてます?なんて聞かれたら気分はよくないだろう、そう思って。
「私がきみを、子どもたちの実習の相手に選んだのは、」
されるがままだったシロファニアが、また口を開いた。
「きみが、気高いからだ」
「へ」
ケダカイ。
パッとその言葉が変換できなかった。自分と結びつくような言葉とは思えなかったから。一瞬、頭にカニの映像がよぎったくらいには、まったくもって。
「いや、どこがですか」
「『魂送り』を行う前に、私たちはある程度、その人間の情報を得ることができる。きみは三年前突然に父親を交通事故で亡くしてから、精神的に不安定だった母親と、幼い弟を抱えて、絶え間のない労働で家計を支えてきた」
「え、いや、お母さん、そこまで弱ってなかったですし。それに労働って言っても、ただのバイトだし……」
「学業と並行しながらのアルバイトで週五十時間は十分以上の作業量だよ。しかも公務員試験の勉強までしていた。きみにとってあのアルバイトは自分の分の生活費を稼ぐ以上の意味はなかったのかもしれないが、もしもきみがいなかった場合、あの家庭は崩壊していただろう。まちがいなく、きみのがんばる姿は、きみの母親の支えになっていた」
私見だが、とシロファニアは付け加える。
ほんとうかな、と沙季は思ったけれど、でも、母親が自分に見せない顔を持っていてもおかしくはない、とも思う。
一度、夜にトイレに起きたとき、寝室からすすり泣く声が聞こえたことがある。
どうしたらいいのか、そのときはなにもわからなかったけれど。
「……まあ、それで死んじゃったら世話ないですけどね」
「それでも、きみが遺した生命保険のおかげで、しばらくは家計が安定する」
「うん。それは素直によかったです。お父さんが死んだときにめちゃくちゃ実感したんですよね。若いからって甘く見てるとダメなんだなって。つらくても毎月保険料払っておいてよかった……、ってその分死ぬのが早まっちゃったのかもしれないけど」
本末転倒かな、あはは。
自分で言っていて、さすがに悲しくなってきた。
「あの、ちょっと気になったんですけど。あたしの遺書ってちゃんと見つかりました?」
「ああ。死んだと聞いて、弟がすぐに母親に見せたようだ」
ほっと胸をなでおろす。
「よかった。あいつ、やっぱりそういうとこしっかりしてるな」
「葬式もきみの意向に従って、やらない方向に進みそうだ」
「よしよし。節約節約」
最近になって、こういう小細工もたくさんしておいた。
だって、なにも遺さずに死んでしまうことで、家族がどんな気持ちになるんだか、よくわかっていたから。
「七瀬沙季さん、やはりきみは……」
シロファニアが顔を上げる。
じんわり赤くなった瞳で、沙季を見て、
「自分が死ぬことを、あらかじめ覚悟していたんだな」
かたり、と音がして、それからのシロファニアの動きは信じられないほど速かった。
鳥みたいに首がパッと動いて、昆虫みたいに目がぎょろっと動いて、その音の出所を見つけた瞬間に、
「――止まれっ! ぐっ、」
けれど、その声の直後、シロファニアの顔のすぐ近くで、小さく静電気のような光が弾ける。
その一連の流れが終わった後に、ようやく沙季は、そこに現れたのがだれかに気がついた。
「ルウ……?」




