15、健康診断結果
毎年受けている健康診断の結果が来た。
体重が1年で10kg増えてしまった。
食べてないのに太るのは、動かなくなったからだろうか。
腎機能・糖代謝・尿酸・眼底検査で精密検査の診断結果だった。
腎機能と眼底は初めてひっかかったが、
酒なんて全然飲まないのになんで腎機能の数値が高いんだろう。
毎日晩酌してても引っかからない人はひっかからないのに、悲しいもんだ。
近年、健康診断で引っかかった場合、ちゃんと二次検査にいかないと会社側に怒られる。
何年か前にいかないでいたら管理部からクレームが来た。
病院に行った所で運動しましょうとか野菜を食べましょうと言われるぐらいだ。
そもそも私は肉が苦手で野菜は好物だ。
もっと記録をつけて提出すれば的確なアドバイスがもらえるのだろうか。
会社側も義務でやっているだけで、病院にいったという実績さえあればなんでもいいというのが見え隠れしている。
妻は相変わらず寝室の入り口から見える足の裏しか見ていない。
息子たちは俺はどこに連れて行ってもらった自慢をお互いにしているが、
じゃあ次に高知に行く人~といっても目をそらす。
高知広いもんな。絶対徳島よりきついわ。
彼らは娘の話題を全くしない。
自分たちだけの時はするのかもしれないが、こちらから聞かない限り私の前ではしなくなった。
髪を切った。別段丸刈りにしたりそういうものではなく、定期的な普通の散髪だ。
そこで気づいた。娘はいつも髪を切るとすぐ気づいていたな。
息子たちは切ったといっても「そんな気がするー」ぐらいにしか言わなかったし、
妻は元からそういった観察眼がなく、言われても全然わからなかった。
こういった話はむしろ男女逆じゃないかとよく話題にしたものだ。
唯一気づく娘がいなくなったため、この一連の会話もなくなってしまった。
彼女を起点としていたこういった無形の物もどんどん失われていくのだな。
喪失感の比喩表現は様々ある。
「まるで心に穴が開いたようだー」「胸が張り裂けそうー」などが鉄板だろうか。
私自身は「おきあがりこぼしの中心に鉄骨が入ったようで揺れなくなった」といった体感だ。
喪失感というよりは、物理的に胃に穴があいたのではないかという、腹のどっしり感がある。
これが冒頭の10kgのせいではないことを祈ろう。