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「うっ…うわああああ!」


かなり大きな声で叫んでしまい、部屋にいた全員が驚いたような表情でこっちを見る。

しかし、叫ぶなというほうが無理な話だろう。

当たり前だ、自分の顔がとれてしまったのだ。

目覚めて一日も経っていないのでまだ愛着は湧いていないが、それでも自分の顔を取られてしまうのは心に

くるものがある。


「えっ、ご、ごめん。」


そういって、少年は顔を再び付け直してくれる。

慌てて確認しようとするが、腕は椅子に縛り付けられていて動かない。

仕方ないので、首を大きく振って顔が外れないかを確認する。

外れる様子はなさそうだが、あんなに簡単に外されてしまうと不安になってしまう。

冷静になって顔を上げてみると、部屋にいる全員が驚いたような表情でこちらを見つめている。


「あっ…、えーと…ははは…」


とりあえず笑ってごまかそうとしてみるが、全員の表情は固まったままだ。

(そんな顔されたって俺が悪いわけじゃないだろ……)

そんなことを思いつつ、顔はひきつった笑顔をキープする。


そんなことをしていると、いつの間にか部屋から出て行っていたあの女性が帰ってきた。


「なんかおっきい声聞こえたけどなに?」

「いや…なんか顔のパーツ取ったらびっくりしちゃったみたいで…」

「今の声ってあの子がだしたの…?」


少年の説明を聞くと、女性もほかの男達と同じような顔をする。

どうやらこの人たちには顔が外れることよりも、私が大声を出すほうが驚きらしい。


「それで…なんで顔のパーツ外したの?」

女性が我に返った様子で少年に聞き返す。

「え?ああ…型番確認して値段しらべようかなと思って」

少年も思い出したように説明する。


「型番?それなら首元の青いところよ」

「ああ、そっちか」


そう聞くと、少年はまた私に近づいてくるが、さっきのことで少し警戒しているようで、今度はおそるおそる首元に手を伸ばしてくる。

私に許可をとるとかいう発想はないらしい。

しかし、こっちとしてもこれ以上警戒されたくないので、特に抵抗はしないでおく。

さっきは急に外されたのでびっくりしてしまったが、外れると分かっていれば、おとなしくしているのは別に難しくない。


カチッという音がして首の横が開く。

こちらは顔とは違い、パーツの片端が首に固定されているので、完全にとれることはなさそうだ。


「あったあった。えーと…SV-128G…?」

「えっ!?」


少年が型番を読み上げると同時に女性が素っ頓狂な声を上げた。

私に向いていた男達の視線が今度は女性の方へ移る。

どうやら他の男達も女性がなぜそんな声をだしたのかわかっていないようだ。


「ちょ、ちょっと見せて!」

女性が少年をおしのけるようにしながら、私の首元をのぞき込んでくる。

「何?そんなレアな機体なの?」

少年が茶化すように女性に聞くが、女性には全く聞こえていないようで私の全身を首元と同じようなカバーを外しながら調べている。

私は椅子に縛り付けられているので抵抗もできずになすがままである。


女性以外の全員が完全に置いて行かれて呆然としていると、身なりのキレイな男が部屋に入ってきた。

体格は部屋にいる大男よりも少し小さいぐらいで、身に着けているスーツも決して派手ではないがどこか迫力を感じる。

貫禄があるという表現がピッタリとあてはまるような人物で、この人が彼らの上司にあたる人間なのだろうとはっきりと分かった。


彼が入ってくると大男が近寄っていき何かを話し始めた。

距離があるので何を話しているかは分からないが、大男の素振りを見るかぎり現状説明をしているようだった。


しばらくすると、説明がおわったらしく大男はまた部屋をあさり始めた。

それを見ると、手の止まっていた二人も部屋あさりを再開した。

上司らしき男も他の三人ほど本格的にではないが、部屋を見て回り始める。

女性は相変わらず私の体をいじったり、スマホで何かをしらべたりしている。

私はできることもないので、散髪中のような感覚のまま女性に全身をしらべまくられるしかなかった。


         -----------------------


そうして十数分が経つと、女性が疲れたような表情で地面に寝転んでしまった。


「マジか……」


そこに上司らしき男がのぞき込むようにして声をかけた。


「なにか分かったか」

「あ、す、すいません!」


女性は跳ねるようにして飛び起きる。

その焦りようからして彼が来ていることに気づいていなかったらしい。


「えっと…この子の主要AIなんですが…SVシリーズが使われてるみたいです。」

「SVシリーズ?あの下界からの人格をそのまま流用するっていうあれか?」

「そうです。他のパーツは違う適当なものが使われているので完全なオリジナルではありませんが、見る限り充分に機能しています。」


上司らしき男が一瞬こちらを見て、またすぐに視線をもどす。


「金の使い道はこれか…何に使うつもりだったのかは分かるか?」

「インストールされてるプログラムを調べれば分かるかもしれませんが、私の腕では難しいですね…。でも、二人撃ち殺しているので少なくとも倫理緩和と戦闘プログラムははいってるかと」

「それだけでは分からんな…○○に調べさせるか」

「あいつは今どこに?」

「別件で動いてる。連絡しておいてくれ、こいつは倉庫のほうに連れて行こう」

「分かりました。」


そう言うと、女性は部屋から出ていき、上司らしき男がこちらに近づいてきた。

気が付くと、残りの男達もまわりに集まっている。


「さて…いくつか聞きたいことがあるんだが…いいか?」


もちろん頷く。

椅子に縛り付けられて、男四人に囲まれた状態で答えれない質問なんてあるわけない。


「自分が何者かは把握できてるか?」

「えっと…、人造人間的ななにかで、ここの住人に購入されたってことぐらいしか…」


さっきの会話を聞くかぎりこれだけではないのだろうが、詳しくは分からない。


「一般的にはアンドロイドと呼ばれているが、そんな感じの認識であってる。まぁ、お前の場合一般的なアンドロイドとはだいぶ違うが…」

「どう…違うんですか?」

「おい、質問してるのはこっちだぞ」


大男が私の質問をさえぎってくるが、


「いやいや、自分のことだ。知りたいのは当然だろう。」


上司らしき男が続けて説明してくれる。


「普通のアンドロイドはもっとロボットに近い感じだ。表面的な会話はできるが、感情がほとんどないから驚いたり泣いたりとかは絶対にしない。それに比べてお前はしっかりとした人格を持ってるし、自律的な行動もできてる。」


私が大声を出した時に驚かれたのはこれが理由らしい。

アンドロイドが大声で驚くというのが不思議だったのだろう。


「それで、お前がそんなふうになってる理由だが…お前が搭載している主要AIはSVシリーズといって、もともと下界で人間として普通に生きていた人格をそのままデータとして移植させられるモデルになっている。五十年前に百台だけ出荷された後は完全に生産が中止されているから、お前その百台のうちのひとつってことになるな」


自分では全く分からないが、どうやら私の体はかなり高価らしい。

しかし、今の説明では分からないことが一つある。


「あの…下界っていうのは……」

「ん?そうかそれが分かってないのか。下界っていうのはお前がもともと暮らしてた場所のことだよ」

「え、じゃあここって…」

「ここは…そうだな…。お前が暮らしてたところでいうところの……」


男が出会ってから初めての笑顔を見せる。


「天国にあたる場所だ」


名前が全然思いつかない

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