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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 北のモシリ
91/182

91.峠越え

この時代、トカプチ(十勝)に抜ける交易路は2つ。

ひとつは現在の沙流川を遡り、日高峠、そして現世の高速道路の道東道に近いルートで狩勝峠を越える。

もうひとつは、海沿いに襟裳岬まで行き、そこから広尾経由で入る方法。

襟裳岬から先は海沿いは断崖絶壁で、昭和の初期に莫大な予算をつぎ込み、その額から黄金を敷き詰めて作った道路、黄金道路とまで言われるほどの難所だ。

なので、海沿いではなくて山側の道なのでそれなりに高低差があるという。

最初の狩勝峠を越えるルートが一般的だ。


ちなみに、交易路以外で越えることができるルートもあるという。

山間の集落の連絡路で、日勝峠や、中には幌尻岳を越えたりするルートもあるというが、かなり危険だという。

幌尻岳のルートは最初カムエクウチカウシと聞いたので、この時代からの山名なのかと思ったが、現世のカムイエクウチカウシではなくて、幌尻岳や戸蔦別岳のあたりのことのようだ。カムイエクウチカウシとはアイヌ語でヒグマの転げ落ちる所ともいわれるが、戸蔦別岳は彼らの言うには原初の神が創った山のひとつで、実際に神が降りてくると信じていたようだ。

たしかピラミッド型のきれいな山容だったと思う。


ただ、本州の集落民ほど原初の神の信仰はなさそうで、神も含めすべてが輪廻というか、回帰して世を巡る考え方。悪いことがあれば、次は良いことが必ず起きると信じている者が多かった。


鵡川のあたりを通過する。

この辺りはシシャモが有名なんだけどなー。

でも遡上の季節じゃない。

集落で前年加工したかっちかちの乾燥シシャモをもらって食べてみる。

なるほど、携行食向きだな。


大きな川、たぶん沙流川を川沿いに登っていく。

途中の集落で泊らせてもらうが、アンヂ・アンパラヤの黒曜石ナイフを見ると、どの集落でも丁重にもてなしてくれた。

お礼に小さな琥珀を首長にプレゼントして、供物として途中の集落でもらった食べ物を捧げる。すると、また別の食べ物をたくさんくれるその一部を食べて次の集落で供物として捧げるの繰り返しだ。


狩勝峠に到着した。現世では雄大な草原が広がっているが、草原ではなくて笹原や雑木林、そしてところどころが焼いた痕だろうか、ワラビや茅のようなものが茂っている感じだ。集落はないが、小さな小屋はいくつか見られる。

夏の狩猟・採集用の小屋らしい。


峠を越えるといよいよトカプチの大地だ。

延々と広がる緑の大地。

現世の頃とちがって直線に大地を切り裂く道路も見えない。僅かにところどころ薄緑になった場所が集落があって人の痕跡のある場所だ。

空気も、今まで経験したことがないくらい透明度が高い。遠くがまったく霞んでいない。現世の頃の北海道の空気もよかったが、それとは比べ物にならないくらいだ。


峠を降りると最初の集落があった。

そこで、休んでいると、古老が現れてコロポックルの伝承を語り始めた。

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