90.頼まれごと
タタルはシカルンテに会いに行ったようだ。
念のためアシリクルを同行させて、様子を見る。
愛し合ってる当人たちは盲目さゆえに、なにをしでかすかわからないから。
3人で戻ってきた。
シカルンテは全てをタタルに話したようだ。
タタルはアンヂ・アンパラヤにコロポックルのシカルンテのことを話す。
俺も同席したが、おおむね俺が聞いた話と同じだった。
タタルはまるで自分がしでかしてしまったことのように話すシカルンテがとても優しい女性だと思っている。
それは間違いないことだが、彼女の話はそれだけではないように感じた。
アンヂ・アンパラヤ「お前たちの結婚は祝福してやりたいが、問題は古老たちの説得だ。嫌がらせがあるくらいならいいが、コロポックルを心底畏れている。年寄ゆえに集落のためと称して何をしでかすかわからない。その説得が必要だが、俺はこれから交易でピリカノ・ウイマムまで行かなければならない。お前はトカプチに戻ってすぐに次の交易の準備をして出かけなければけないし」
「オホシリ様、私の代わりに古老の説得をお願いできますか?私もできるだけ早く戻るようにしますし。」
タタル「オホシリ様がトカプチにいらっしゃるのですか?」
「オホシリ様はトカプチの歴史や文化を知りたくて訪ねて下さる。古老たちも私たちが伝えたオホシリ様の話を聞いて憧れている。きっとオホシリ様の説得は私よりも確実にちがいない。」
アンヂ・アンパラヤは土偶を割って片方を俺に手渡し、さらに大きな黒曜石のナイフを差し出してきた。
「これは、俺の名代であることの証だ。土偶は俺自身がオホシリ様と約束していることを、この黒曜石のナイフは長老、氏族長を示す証だ。誰も疑うことはないと思うが、これを示してどうか2人を助けてもらいたい。黒曜石のナイフは途中の集落でも役立つだろう。」
「わかりました。できる限りのことはしましょう。」
タタルとシカルンテは嬉しそうに何度も、俺やアンヂ・アンパヤラに感謝の言葉を述べている。
さて、トカプチまであの日高山脈をどうやって越えるのか?
この旅で最初にして最大の難所越え。
楽しみと不安の交錯する旅が始まった。




