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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 北のモシリ
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86.祭祀

北海道側に渡って2回目の冬は、意外に快適に過ごすことができた。


徐々に暖かい日が増えてきている。まもなく春分だ。

珍しく、浜にクジラが打ち上げられた。

寝殿のテラスから見つけた。

昨年の秋に建てた高床式の寝殿は海岸段丘の海側の端のほうにある。あんまり端すぎても土砂崩れとかこわいので、少し手前にしてある。その分、直下の海が見えづらいので、海側にテラスのように見張り台を伸ばしてある。


クジラの捕獲は半年前と今回、俺はかなり幸運かもしれない。

神の役得?それとも、やっぱりここは異世界で何かスキルとか恩恵とかあるのかな?


周辺集落も含めてみんなで解体作業を行って、今度は集落が近いので肉の分け前ももらうことができた。まだ寒い時期だから塩漬けもうまくいくだろう。もちろん、鯨油もとることは忘れない。


春分の祭祀もはじめて執り行った。

昨年はカンナアリキ首長のところで宴会程度だったし、青森の時は巫女たちや長老たちがやっていた。俺が祭祀を執り行うのははじめてだった。

原初の神、そして数多の神々へ全てが回帰するよう祈念した。


昨年、ウスの集落でわけてもらったクジラの骨から骨刀を作り、神々への感謝と、消費したもの、食料や道具、全ての暮らしにかかわる物品が巡りめぐって、再び戻ってくることを祈る。

祭祀用の祭壇から骨刀を振り回しながらゴミ捨て場に向かう。ここで神様らしく念入りに骨刀を振り回す。

最後に、悪いもの、特にウェン・カムのようなものが来ないように、悪霊、悪神の類がその物品や食料に取り憑かれないように、骨の刀をゴミ捨て場に埋める。

人々は全てのもの、生物も植物も人も土も道具も転生して戻ってくると信じているので、ゴミ捨て場ではなくて埋葬場という感覚なのかもしれない。

発掘されれば貝塚ということになるのだろう。

その上に土を被せて4期の季節の祭祀、春分の祭祀で俺の役目は終了だ。


その後、呪術師から自然暦の発表がある。

充分とは言えないが、古老たちの協力もあって、ここでの季節の変化についてだいぶわかってきた。自然暦もそうやって作ったものなので、年を追うごとに精度が増すだろう。といっても、地球規模での寒冷化、温暖化には対処のしようがないが。


自然暦の発表の後は、直近の山菜採りなどの採集のスケージュールを皆と相談する。

基本的に貯蔵できる山菜は集落全体で採集、加工、保存をする。この季節から豊かなこの地域なら、家族や個人の採集も時々織り交ぜてできる。割合は集落3日、個人2日ぐらいの繰り返しで集落共用の貯蔵分は十分確保できるだろう。

もっと集落の日の割合を増やして、個人や家族の採集できる日を減らせば、その分工芸品など加工の技術が専門化しても良いような気もするが、自然はいつどんな牙をむいてくるかわからない。やはり食料については余裕があるくらいで集落運営をしておくべきだろう。


集落内に簡単な祭祀場、祭壇を設けたのもこの春分の祭祀がきっかけだ。

これがあると、交易団などが供物を捧げるのだという。

その供物は巫女たちや俺の管轄になる。

実際、昨年の交易の帰りに立ち寄った山を越えたところにある集落はウェン・カム退治や街道整備、温泉入浴のお礼で供物を納めたいと言ってきている。納めてもらうにも祭壇がないとやはり格好もつかない。かといっていきなりそのためだけに祭壇を作るのも気が引けたので、春分の祭祀に合わせて立派な祭壇を作ったのだ。


温泉は拡張工事をした。ただ河原にあるのであくまでも洪水に流されてもいいように、簡単な造りにしてある。あまり立派な脱衣所を作ると交易人が寝泊まりするならまだしも、集落民の中から住みはじめる人が出てきそうなので、夏場は屋根がかかって少し目隠しの壁がある程度にしている。

冬場はちゃんと壁を作って防寒に外壁にも草を葺いてせっかく温まった体が少しでも冷えないようにした。


多少はいいのだけど、やっぱり酒を飲みながら入浴してぶっ倒れる人も出てきたので、残念だが酒類持ち込み禁止にした。


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