84.連絡
北海道側に渡って1年ほどになる。今年は余裕をもって冬の準備をする。
青森側の様子も伝えられた。
青森側の集落で巫女をしているミナ・トマリを心配していたが、皆に支えられて元気だという。
呪術師のカント・ヨミ・クルも元気で暦の開発の前に、今までのは仮置きで作っていたが、通常仕様のストーンサークルを定石で作り始めたらしい。
ただ、暦をなんとしてもやりたいらしい。
とりあえず、内浦湾(噴火湾)の集落で見た、月の運行のストーンサークルの情報を伝えてもらうことにした。
その他の情報として重要なのものは、十和田湖の噴火は収束し、1年で集落の周りの木の多くは枯れたが、種類によっては枯れずに済んだものもあるらしい。ただ、花がほとんどつけなかったので今年の秋の収量はかなり少ないと予想していると。
山の状態も、大型動物はほとんど見当たらず、ウサギやそれを追ってキツネが少し出てくるくらいだという。
交易路には全く問題なく、津軽半島の交易拠点の集落も問題ないとのこと。
新しい商品が入荷したので、見本をオホシリ様に確認してもらって、北のモシリ(北海道)で交易に利用できるか検討して至急連絡が欲しいとのこ。
その見本商品は貝輪という貝殻を輪っか状に加工した装飾品だった。
イモガイではなかった。イモガイなら時代が2000年ぐらいは違うはず。
イモガイの装飾品は縄文時代後期よりも新しい時代になるが、沖縄など南方の深い海で採れる貝で、北九州で加工されたのちに、北海道までもたらされた交易の品だ。
もしイモガイだったらすぐに取り扱いを決めるが・・・。
とりあえず保留だな。
そのかわり、アワビの貝殻や、その南方の貝殻を使って漆工芸に張り付けて模様を作ってみて欲しいと伝える。螺鈿の挑戦だ。
アワビの貝殻はアスファルトの小分け販売にも適していそうなので、こちらで、小分けして次回の交易で自給自足系集落に行くときに活用しようと思う。
他に短期的には丸木舟の波よけ板の開発とエゴマ油の増産を両方の集落に指示し。長期的にはクルミ、クリの植樹と漆の木の保護と植樹を青森側の集落に指示した。いずれ戻るときのためには必須のことだ。
こちらからは、定番の黒曜石のほか、追加で手に入れたオットセイやアザラシの毛皮が海を渡った。
もうそろそろ海の便も閉じる季節だ。
俺からの贈り物で、ミナ・トマリにチライ(イトウ)の皮を送った。これで靴を作って使ってくれと言い添えて。




