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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 北のモシリ
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80.市の集落

ピリカノ・ウイマム(長万部近辺)には昼過ぎに着いた。俺の服装は少し目立ったので、すぐに皆と同じような服に着替えた。


ピリカノの市には黒曜石だけでなく、様々な産物が集まってきてた。

メインの取り扱い商品は十勝産黒曜石、赤井川産黒曜石そして、南方からのヒスイになるが、それだけでなく、アットゥシの布やクジラの骨、漆工芸、葡萄籠、クルミ籠、アスファルトのほか、食べ物も軽い乾物もの中心に干し肉、鮭トバ、干しキノコ、スルメなど様々な物品が並べられて交換される。


アヂ・ノ・チプ(黒曜石の船)に黒曜石の交易団のアンヂ・アンパヤラ(黒曜石を運ぶ)とタタル(黒い)を紹介して、知り合って子犬を分けてもらったことや、クジラのこと、帰りのオオカミのことなどを簡単に話した。

俺たちはクジラの骨を運んでくれたお礼を言ったが、それ以上にオオカミの件で助けてくれたことにお礼としてアットゥシの薄いブルーで染められた布をくれた。

エゾタイセイで染めたのだろうか?それとも別の植物?アンヂ・アンパヤラとタタルは途中の集落で手に入れたらしく詳しくはわからないという。これは調べておかないと。


アヂ・ノ・チプのほうは、普段使い用の赤井川産黒曜石の仕入れは完了して、ナイフ用の十勝産の黒曜石の到着を待っていたところだったので、そのまま商談に入った。


チライの皮はまとまった量を手に入れるのははじめてなので、かなりよい交換をしたとのこと。無駄にはならずに済みそうだ。鯨の骨のほうも集落である程度加工して青森の交易団に持たせる産品としては最適らしい。ただ、取れたてなので、これから持っていくのが重くて大変だ。


ちょうど、物見の氏族カンナアリキ首長の集落の交易団も到着した。そのほかに西の大深緑の王の氏族の交易団も到着して、一気に賑やかになった。


俺たちは早い段階で商談もお互い良い条件が整ってすぐに物品が交換された。

向こうも遠くまで来たかいがあったと言ってくれた。

来年からは中継交易が復活しても、少なくとも半分の交易団はこちらまで来るようにして、物見の氏族との直接取引をしたいとも言ってくれた。


現世と違って、中継交易であっても、直接交易であっても交換比率は変わらない。結局、直接でも距離とその移動に掛かる時間が膨大だからだ。ただ、良質の物品を手に入れるためには、直接交易で信頼できる相手がいるとかなり有利だ。

もともと、十勝産黒曜石に求めるのは量より質だ。

量ならば赤井川産を中継交易で手に入れるので十分だが、質重視となると中継よりは直接のほうが良いものを交換してくれるだろう。


その夜はまた雨が降ってきた。

今回、手に入れたチライの皮は加工前に濡らすわけにいかないので、高床式倉庫に入れて、クジラの骨はまだ血肉が少しついているので外に晒しておく。黒曜石は皆が寝る竪穴式住居に保管するので、俺とアシリクルは高床式倉庫の床下に寝床を作って寝ることにした。


アシリクルはピリカを大事そうに抱きかかえている。

「ピリカは親よりも早く真っ先にオオカミが来たことを察知したな。すごい犬だな。それに、アシリクルの槍さばきも見事だった。」


「でも、オホシリ様に1人で戦わせてしまいました。」

少し落ち込んでいる。レブン・ノンノの時ほどではないが、俺に頼ってしまったことが申し訳なく思っているのだろうか。


「本当は私たちがお守りしなくてはならないのに・・・」

そうか、そうしたいと願い神嫁になりたいと巫女になったんだった。


「いや、普段いつも守ってくれているし、だから安心して出かけられる。カンチュマリもレブン・ノンノも俺たちが帰る場所を守ってくれている。アシリクルも、俺がはじめて訪れる集落でもなんの問題なく過ごせるよう周囲に気を付けて、道中もいつも警戒して歩いている。ただ、ウェン・カムや今回のオオカミのことは神の力でないとどうにもならないことだろう。日中で普通のオオカミの群れならアシリクル1人でも大丈夫だろう。そもそも普通のオオカミの群れなら、あのアシリクルの守りの一撃で逃げ出していたはずだから」

俺はそう言って励ましたが、アシリクルは、いつも俺が優しいからつい甘えてしまうといって胸に顔を埋めてきた。そのまま頭をなでながら、いたらいつの間にか寝てしまったようだ。


強い女性に甘えられるってのもすごくいいな。

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