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縄文転生 北の縄文からはじまる歴史奇譚  作者: 雪蓮花
第1章 神々より前 Before Gods 火山の時代
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8.布地いろいろ

顔を洗って、というか水に濡らしたハンカチで拭く程度だった。上半身はレブンノンノに背中も拭いてもらったりで、かなりさっぱりした。

少年の姿に転生したのも髭の心配をする必要がなくてよかった。刃物などなさそうだし。


さて着るものというと、昨日から喪服。寝るときもしょうがなくそのままだった。

とりあえず白いワイシャツまで着ているところに、カンチュマリとミナトマリが部屋に入ってきた。葡萄で編まれた大きな葛籠のような入れ物と背中には背負子。背負子も葡萄で編まれたもので、どちらの中にも布がたくさん入っていた。


カンチュマリ「神様の召し物を用意したいのですが、どのようなものをおつくりすればよいかわかりません。私どもで用意できる布はこのようなものしかございませんが、なにとぞお許しください。」


葡萄で編まれた大きな籠は、それこそ現代なら東京あたりのご婦人がかなりの高額で買い求めそうなものだった。編み方も網代編みだけじゃない、花編みに似た意匠もこらされている。

正直、最初にやる技術チートは葡萄蔓の籠編みぐらいかと思っていたが、すでに完成されたものがあると知り少しがっかりした。

俺の地元の特産品でもあったし、youtubeで編み方を見たりしていたので多少はわかっているが完全に負けた感がする。まぁ葡萄蔓籠編みの元祖総本家な縄文人なわけだから当然かもしれないが。


さて、布のほうはというと、麻に似た繊維でざっくりと織られたものか、厚く編まれたものが大半だ。見た感じあんぎん織りだ。ただ、その中でもちょっと特別な感じがしたものがある。少し厚い感じがするがやや光沢感のある茶色っぽい柔らかな手触りの編み物だ。おそらくきちんと糸を撚って細い糸で、きちんとした織機で織れば上等な布ができそうだ。

おれはそれを手に取ってじっくり観察していた。


カンチュマリ「やはりその布をお選びになりますね。」


俺「これは、ゼンマイ?」


カンチュマリ「はい、ソルマ(ゼンマイ)の毛を集め、それを野山で集めた繭をほぐして、糸に撚ります。ただ、この糸は弱いのでアイコ(ミヤマイラクサ)の経糸で編み上げます。柔らかく水をはじくのが特徴ですが、夏向きの布ではありません。」


カンチュマリは俺の喪服のジャケットを見て、手触りのできるだけ近いソルマ(ゼンマイ)の織物を選ぶだろうと予想したのだろう。


俺「アイコ(ミヤマイラクサ)は食用にもなる植物だね?」


カンチュマリ「そうですが、それは若いときで、布を作る場合の収穫の季節が違います。」


俺「糸の撚り方、繭の扱い方を変えるともっと強い糸ができると思う。今とは違う布のつくり方も教えようと思うが今はとりあえず・・・。」


俺はシナの木の繊維で織られた布を選んだ。アイヌ民族の衣装でよく使われるオヒョウという木の繊維に近く、アットゥㇱと呼ばれているものだ。


カンチュマリ「紋様は何をいれましょうか?」

俺はいろいろ考えた。繊維なんてほとんどが腐食して今が3000年前だか6000年前だかはわからないが、よほど条件がそろわない限り残らないはず。特に絹や毛織物のような動物性の繊維は植物性より腐食が早いはず。

三内丸山遺跡も多少の繊維製品は発掘されているが、俺が技術チートで上等な布を作っても、薄く上等であればあるほど残らないはずだ。まして柄などのデザインは少し遊んでも大丈夫だろう。


俺「紋様は入れない無地の物をこのシナ織物で、こちらのアイコで織られたものは、皆と同じ紋様を袖の部分にだけ入れて、これから指示する形に作ってもらいたい。それと、この布とこの布をこの色に染めて・・・」


とりあえず、近々着るものが必要なので紋様は最低限にしておく。後々布地も含めて遊んでみようと思う。俺は布を手に取り、カンチュマリに作り方の説明をはじめた。

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